保険業界に将来性はある?市場の概況と今後の動向について解説

保険業界への転職を考えている人の中には、「保険業界に将来性はあるのか」「少子高齢化の影響やAIの発展でなくなるのではないか」と不安に思っている方もいるでしょう。

そこで、この記事では保険業界の動向や将来性について解説します。保険業界への理解を深め、キャリアについて考えてみてください。

まず保険業界の概要から知りたいという方は、先にこちらの記事を御覧ください。

この記事でわかること
  • 2024年時点の保険市場の概況
  • 生命保険会社における世帯加入率や保障ニーズ
  • 損害保険市場の動向および保障ニーズ
  • 保険業界の将来性
目次

日本における保険市場の概況

生命や健康、損害、賠償責任など、さまざまなリスクに対する保障を提供する保険は、公的保障の補完や被害者救済の役割を果たすなど、重要な役割を担っています。

日本では内閣総理大臣の免許を受けた者のみ保険業を行うことができないと定められており、2024年6月時点で保険業を営む生命保険会社は41社、損害保険会社は57社(在日支店を含む)です。

なお、保険会社の保険料ベースのシェアを見ると、生命保険会社は大手生命保険グループが53.3%と国内市場の過半数を、損害保険会社は大手損害保険グループが84.1%と国内市場の8割強を占めています。

出典:金融庁「2024年 保険モニタリングレポート」

保険業界の動向

ここでは、生命保険の世帯加入率と市場動向について解説します。

生命保険業界

生命保険の世帯加入率と市場動向は以下の通りです。

生命保険の世帯加入率は89.8%

公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.8%と、前年の88.7%から大きな変化は見られませんでした。しかし、1991年からの推移を見ると、徐々に減少傾向にあります。

出典:公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」

医療・介護保障のニーズが増加

日本では少子高齢化が進んでおり、2070年には総人口が9,000万人を割り、高齢化率は39%になると予測されています。1人の高齢者を支えるための生産年齢人口は2020年は2.1人、2045年は1.5人、2070年は1.3人になる予想です。一方、平均寿命は1990年は男性が75.9歳、女性が81.9歳だったのに対し、2022年には男性が81歳、女性が87歳と年々延びています。

こういった背景から、近年は長生きすることによる経済的な不安への意識が高まっている状況です。そのため、生命保険業界では死亡保障だけでなく、医療・介護保障といったニーズに応える商品を展開しています。また、健康増進型保険も近年のトレンドです。

出典:
厚生労働省「我が国の人口について」
厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」
公益財団法人 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」

損害保険業界

損害保険業界における市場規模と動向は以下の通りです。

市場は右肩上がり

一般社団法人 日本損害保険協会「日本の損害保険-ファクトブック2023」によると、損害保険会社の業績や売上規模を示す指標となる「正味収入保険料」は、2021年の8兆8,063億円に対し、2022年は9兆1,195億円と前年から3.6%増加しています。

ただし、近年は台風や地震といった自然災害が相次いだことで保険金の支払いも増えています。

出典:一般社団法人 日本損害保険協会「日本の損害保険-ファクトブック2023」

地震保険のニーズが増加

損害保険のなかでもニーズが増加しているのが地震保険です。

日本は1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震と大きな地震に見舞われてきました。また、近年は南海トラフ巨大地震への危機感が高まっていることもあり、火災保険契約に地震保険契約を付帯させる人が増加傾向にあります。2001年度の付帯率は33.5%でしたが、2022年には69.4%と倍以上に増えています。

出典:一般社団法人日本損害保険協会「2-1.地震保険普及状況の推移」

保険業界の将来性

近年、AIの発展・普及に伴い、「保険業界はなくなる」という声が聞かれるようになりました。実際に生命保険・損害保険問わず、保険業界でAIは幅広く使われています。主な活用事例は以下の通りです。

  • 保険金査定の迅速化・不正請求の検知
  • 保険の引受査定の自動化
  • 最適な保険プランの提案
  • 新商品の開発促進
  • コールセンター業務の効率化

このように、AIは多くの場面で活用されています。AIやITの活用で業務を効率化し、人員を削減すると宣言する企業も出ています。

とはいえ、すべての業務をAI・IT化できるわけではなく、人間にしか対応できない業務もあります。そのため、保険業界がなくなることは現時点ではないでしょう。

生命保険会社はグローバル化

グローバル化により、多くの生命保険会社で海外事業展開が活発化しています。海外進出をしている主な生命保険会社は以下の通りです。

  • 日本生命
  • 住友生命
  • 第一生命
  • 明治安田生命

日本の保険市場は、少子高齢化により縮小傾向にあります。前述したように、生命保険会社は医療・介護保障のニーズに応える保険商品を提供していますが、新規保険加入数の減少は避けられないでしょう。

一方で、新興国では人口増加や経済成長に伴い、保険市場が拡大する可能性があります。現地保険会社との業務提携やM&Aなどを通じて、利益拡大を目指す企業は今後も増加すると予想されます。

損害保険会社は新種保険を開発

損害保険会社では新種保険の開発が進んでいます。新種保険とは、古くからある海上保険・火災保険・運送保険以外の総称のことです。今では一般的になった自動車保険・賠償責任保険・傷害保険なども新種保険にあたります。

近年では「ペット保険」「動産総合保険」「サイバー保険」「ドローン保険」などが生まれています。今後も時代のニーズに対応した新種保険の開発が進んでいくでしょう。

保険業界の将来性を見据えて転職を目指す方は、以下の記事を参考にしてください。


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