プロ経営者のリアル ~トップダウン経営の引き継ぎ方~【イベントアーカイブ】

※こちらは2022年7月24日に視聴希望者限定で行われたイベントのアーカイブ記事です。

日本プロ経営者協会(JPCA)は、日本に数多くのプロ経営者を輩出するエコシステムを構築し、わが国を牽引するリーダーの輩出と事業承継問題の解決を目指し設立されました。

まだ日本にはプロ経営者が浸透しておらず、プロ経営者の働き方、プロ経営者になるためにどういったステップを進めばよいのか、求職ポジションにどれだけ出会えるのかという具体的な情報提供をしています。

また、具体的なプロ経営者案件として、事業承継の社長から直接オーダーいただいたものやファンドの投資先の社長としてプロ経営者のポジションをご紹介させていただいております。

当イベントでは、監査法人勤務を経てPEファンドへ転職し、その後プロ経営者となられた大山様にお越しいただき、トップダウン経営の引継ぎ方についてお伺いしました。

目次

第1部 プロ経営者のお仕事

大山氏:大きく第1部と第2部に分かれています。
第1部はプロ経営者のお仕事ということで、私が経験したCSS技術開発という多摩ローカルの測量会社の経験を中心に話をさせていただきます。

第2部ではプロ経営者のキャリアということで、私自身の失敗というか感じたことなどをお話します。ファンドさんとのお付き合いがプロ経営者のキャリアとしてこれから恐らく増えてくると思いますので、そういったこともちょっとお話させていただきたいと思っております。

自己紹介

大山氏:私は現在46歳、辰年の5月生まれで名前が龍吾といいます。自分が大体どんな感じでやってきたかっていうと、東大の経済学部に入ったんですけれども、そこからグダグダ期って書いてありますね。よく遊びよく学ばない学生みたいな感じで、親が会計事務所で働いていたということもあり、公認会計士の試験を何となく始めたんですけども、まあ留年もするわ、全然受かんないわっていう感じでちょっとグダグダしていました。

その後、監査法人トーマツに入って会計士としてのキャリアを始めるんですけれども、そこでやった事業再生のお仕事をきっかけに、いわゆる今でいうPEファンドですね。フェニックスキャピタル、今はエンデバーユナイテッドっていう名前になってますけれども、そこに入って約8年ぐらい、いわゆる投資業務をしてました。

その後2015年から、39歳の時だったんですけども、ここにいる小野さんのご紹介で、実はCSS技術開発の社長をやるという仕事を始めました。なのでファンドから一回退職をしてピン芸人としてやっているような感じになります。そこのイグジットが終わって事業会社さんからの引き継ぎは終わったので、この6月からはアイアールという会社の代表取締役をやらせていただいてます。アイアールは今日はちょろっとしか説明できないんですけども今社員が850人。CSSの時には60人から180人ぐらいだったので、少しステップアップって言うとあれですけども、そんな感じになっています。

案件概要

大山氏:案件概要を話す前に私自身の考え方だったり、バックグラウンドみたいな、ちょっと定性的なお話にを説明させていただきたいと思ってます。

僕がファンドに行ったきっかけは企業再生の仕事が始まりでした。それらは結構、正直やらないと死ぬみたいな状況なんで、綺麗事ばっかりじゃないっていうのも多々あります。なので「とにかくやる」っていうのをやらなきゃいけないんですけども、正直うまく行くことばっかりじゃないんですよね。それで、そういうことをやっている中に素朴な疑問として、「その先にどんなことが待ってるんだろうか」とか、やっぱり数字に縛られて詰められる、もしくは詰める仕事になっちゃうんで、「本当に楽しいのかな」とか「やりがいがあるのかな」っていう疑問がありました。

社員の方とかもやっぱりそういう疑問を持って辞めていく方もすごく多いですし、お客様に貢献して喜んでもらうだけじゃダメなのかなとか。そもそもそれができないのは何でなんだっけ、っていうことを考えてきた時に「武器がない」んです。これもう潰れそうな会社なんで、武器がないの当たり前なんですけども。潰れそうな会社じゃなくても、大企業で何かやりがいを感じたいな、みたいな人って少なからずいると思うんですが、そういうのも権限ですよね。自由と責任のセットで権限っていうのがあるべきなんですけども、それが意外となかったり。そういったことを僕はその自分の中でもテーマとして持っていました。

働く人の意識はやっぱり変わってきてますよねっていう調査は、他のどんなサーベイをやっても出てくると思うんですけど、やっぱりこの5、6年の間でも「仕事よりプライベート」という人がどんどん増えてきています。これは確かにそういう世の中の流れっていうのはあるんですけど、一方でいい仕事をした時の充実感とか、何とも言えない喜びっていうのは皆さんもお感じになったことがあるんじゃないかと思うんですけど、そこに辿り着くまでに我慢しきれない、不条理が多すぎてまた挫折してしまうとか、要は仕事から得られる喜びをはなから諦めちゃってるみたいなところも、もしかしたらあるんじゃないかなという風に思っています。

トヨタの豊田社長も労使協議会か何かで使って有名だったんですが、ボスとリーダーという概念があって、今の時代はどっちでしょうっていう話ですね。このボスは、何か物事を成し遂げる時に上から真のものを指示する。リーダーっていうのは一緒に先頭に立って引っ張っていく。実際にはこれどっちの方が常に正しいってことはなくて、その局面局面に応じてボスのやり方、リーダーのやり方っていうのは使い分けるのが正解だとは思うんですけども、やっぱり右側の善意に頼ったり、ある意味仕事をゲームみたいに楽しんだりっていうのは結構いいよなっていうのはずっと感じているところではありました。

今みたいな話をちょっと裏テーマでまとめると、例えば「性善説と性悪説」。これはよく内部統制なんかは「性悪説に基づいて組み立てられてる」なんてよく言われます。あと「短期と長期」「若手の可能性に掛けてみたい」とかですね。「自発的な組織を作ってみたい」とか、それってトップダウンとボトムアップ、どちらかというとボトムアップに近い概念ですね。例えばPL、中期事業計画を達成しないといけない。だから単年度利益を達成しないといけないって言うんじゃなくて、この会社の価値を上げるという大きなテーマの中にその結果として業績があるんだよね、みたいな見方をしてみたいなとかですね。その結果、権限を与えられて、その責任を果たす。そういった仕事っていうのが一番僕は楽しいんじゃないかなと思っているので、そういったところを何とかやれたらいいなという思いを裏テーマとして持っていました。

外部環境(市場の動向)

そういうことを踏まえながら、実際に経営者業を始める時にちょっと気をつけた4つの視点というのがあって、1つ目が「市場の動向」要は外部環境ですね。これは、測量業界っていうCSSには当てはめたらっていうことなんですけど。あとは「会社の状況、強みと問題点」、会社がどういうステージにいるかっていうのも同じような話かなと思ってます。

あとは「株主の意向」。企業価値を上げるっていうのは、どんな株主さんであっても一言で言うと「企業価値を上げましょう」っていうことに行き着くんだと思うんですけど、その企業価値っていう定義そのものの意味はステージによって様々だと思いますし、上げ方も恐らく違ってるんだと思ってます。そういうのも結構気をつけるようにしていました。

最後は「自分なりの問題意識」。先ほどお話したことですけど、この辺はですね。常に決め切っちゃうと柔軟性がなくなっちゃうんですけど、常に整合性を取りながら進めていきました。これが消化できないと、どこかしらの板挟みになって自分が苦しくなるだけなんで。そこは主に株主さんとの間でちゃんと握り合いながらっていうのはすごく意識してやっています。

では私がどんな案件をやりましたかっていう案件概要ですけれども、ちょっと定性的な話ですけど、どんな案件かっていうと、創業30年の多摩ローカルの測量会社の事業承継でした。私は在任期間6年半だったんですけども、株主は創業者さんから1社目のファンド、そこから2社目のファンドに行って、最後は上場企業に引き取ってもらうというかね、身請けしてもらうのがゴールです。

売上とか社員数は大体約3倍になって、拠点が実質2拠点から7拠点。北海道から九州まで一応全国展開をすることができました。事業は、伝統的な測量です。三脚を道路脇で立ててのぞきながらみたいな、そういうイメージが強いと思うんですけども、それが今根っこの建設業界の技術革新の流れに乗って3Dに特化したビジネスをスライドしていったり、それをやるための測量機の販売とか、そういった風にまた多角化をやってきています。

会社概要ですけども、商号は株式会社CSS技術開発ですね。良かったらGoogleで検索していただければと思います。東京都多摩市で売上16億円、でも、社員は180人いるんですよね。180人の社員で16億円の売り上げっていうことは、一人当たりの売上高が1,000万です。とすると従業員のお給料っていうのもやっぱり平均すると、500万円から600万円ぐらいで、測量業界っていうのはそういう業界だっていうことですね。この中に、コンサル出身の方とか、もしかしたら会計士さんとか弁護士さんとかそういうプロフェッショナルファームにいた方もいいらっしゃると思うんですけど、測量も、測量士という労働集約的な、人が回ってなんぼのビジネスです。売り上げでいうとちょっとちっちゃいんですけども、プロとして働く人たちの集まりなので、それを180人っていうふうに考えていただけると、なかなかなんじゃないかなという風に個人的には思っております。

これが実際のオフィスの様子ですね。測量業っていうとね。基本的に泥だらけみたいなイメージあると思うんですけど、非常にこう多摩のローカルIT企業みたいな面持ちで。これは僕初めてこの会社に伺った時からこういう感じだったんですけど、非常にびっくりしました。これをしっかり引き継いで大きくするというのがミッションですね。

外部環境市場の動向なんですけれども、測量業界というのは非常に渋い業界です。左の折れ線グラフは測量業の会社の方、免許を持っている会社の数なんですけども、平成15年ぐらいをピークに年々下がっていて、ピークで1万5000社ぐらいあったのが、今は1万2000社ぐらいまで減っています。恐らく、今後も減り続けると思います。これは何でかというと高齢化ですね、単純に。なので歯医者さんとか税理士事務所さんとかとちょっと似た感じかなと思ってます。事業規模がまさにその歯医者さんとか税理士事務所さんとすごい似てて、1万2000社のうち51%は5人以下、本当に町の歯医者さんですね。さらに残る48%は50人以下っていうことで、50人以上の組織がこの業界ではトップ1%に入るというものすごい業界なんですね。なのですごく特徴的というか。逆に言うとこの働いてる人たちの満足度というか、プライドもちゃんと守ってあげないと絶対大きくなれないっていう感じです。5人以下の会社ってこんなイメージですよね。正直測量の業界も一緒で、昔ながらのやり方で、昔ながらの武器を持ちながらやってるっていうそんな感じですよね。だから30歳でも50歳でもやること一緒みたいな、そんなイメージです。

それが50人ぐらいの中堅どころになると、腕に覚えのある武器マニアの集まりだけど、決して組織ではないんですね。なので強くて勢いはあるかもしれないんですが、たまに味方に後ろから撃たれるみたいな。中規模の弁護士法人とかね、監査法人がそういう人たちの集まりですっていうのとちょっと似てる感じだと思うんですね。合従連衡が繰り返されちゃうみたいなそんな感じですね。

CSSはどういうところを目指したかっていうと、最新の武器が前線にあって、その小隊長を筆頭に騎馬戦みたいな、機動力のある部隊をちゃんと平坦も考えながらやる。その裏には大将がいて、ほら貝で指揮命令系統を作って、一線で働くプロ、侍がリスペクトする達人もしっかりいて、軍師と諜報部隊が引き連れて会社の方針とか戦略もちゃんと練るみたいな感じのことをイメージしてました。

次にこの測量会社なんですけど、お客様が建設業なのでこれは建設業界のトレンドですね。

皆さんよくご存知だと思うんですけども、高度成長期が一段落した後はもう談合で何をやってんだかわからないみたいな扱いをされて、グラフの左からずっと下がり続けてきたんですよね。なので3K仕事で、ダーティーで、若者人気全然ないみたいな感じでした。

それがちょっと一変したのが2011年の東日本大震災です。右上に市場って書いてありますけども、震災後の見直しでとかですね。維持補修の増加で仕事は今後も堅調だろうと言われています。でも一方で就業者数は、半分は50代で、建設業で働いている人は300万人いるって言われてるんですけど、10年経ったら200万人になっちゃうよみたいなそんな統計も出ています。深刻な人手不足っていうことです。でもこれ建設業は本当に国の基幹産業なので、政府の方針としては予算をつけるだけではなくて働き方改革をやったりとか、あとは国を挙げてICT政策をとっています。つまり、人は増やせないんですね。私40代で同級生400万人ですけども、今就活してる20代前半の人達は大体同級生が200万人と言われてます。去年の新生児の数80万人なんですよね。だから建設業がどんなに自分たちの自助努力で人気を2倍3倍にしたところで、絶対に人は増えないんですよね。

なので人が増えないんだったら、テクノロジーを使って施工をやっていこうっていうそういう方針になっています。じゃあその建設業のICTって何ですかって言うとですね。「i-Construction」これたまに日経新聞とか日経ビジネスに載ってますけれども、いわゆるこうそういう概念でやっていて、これどういうことかというと、いろんなファクターはあるんですけど、我々の領域でいうと建設機械の自動運転です。自動車の自動運転は本当に10年後とか20年後とか言われたりしてますけど、建設機械、工事現場っていうのは範囲が決まってるんですよね。限られた範囲の位置情報を正確にまずは読み取る、実際の土を掘るっていう簡単なやつでいうと実際に掘りたい山・地形があって、掘った後のきれいなデータ、設計データがあって、その2つのデーターを重ね合わせると、元々あったところをどういうふうに切り崩すとこれになります、っていう差分が出るんですよね。そのデータと位置情報のデータを組み合わせると建機が勝手に動くっていう、そういうのが実はもう5年以上前から始まっています。その時にキーになるテクノロジーというのが、3Dの測量データと3Dの設計データなんですね。

で、そこにCSSは前フリしていこうということでやりました。で業界トップのコマツ、世界で2番目に大きい建設機械メーカーですけども、ここと関係を作ることができて一時期ですね、関東でやった自動運転の現場では44%CSSのデータが使われてるっていう時期もありました。今はもう本当に導入期から浸透していく時期なので、プレーヤーも増えてシェア自体は下がってるんですけども、おかげさまで順調にやっています。そういう意味では猫の手も借りたいっていう人不足と、もう猫も杓子もICTっていうことです。

次で小まとめで外部環境の見立てから言うと、職人が自由気ままにやるっていう世界からICTみたいな最新技術、最新の設備が必要になった組織化とか資本集約型っていうその流れも恐らく明確なんですね。その先端技術へのコミットっていうのが成否を分けるだろうと、あとは若い人が働きやすい組織にしないと生き残れないって書きましたけども、若い人が生き生き働けるっていうことが実はものすごい価値を持つだろうなっていうことを考えました。これをやり切ると、めちゃくちゃいけるんじゃないかなっていう見立てを作っています。

内部環境(会社の状況)

次は内部環境ということで会社の状況ですね。これはちょっと会社の状況というか事業承継案件ということで、これはここに集まる皆さん恐らくおわかりいただけてると思いますけれども、日本中の大問題になってますと。やっぱり個性の強い創業社長からの事業承継ってすごくリスクがあってですね。このCSSの創業者さんも65歳で、ご病気になってM&A事業承継を検討したっていうことなんですが、残念ながら事業会社はどこも手を挙げずに、廃業の危機も見えてきたっていうところで、小野さんが投じたファンドさんが買収をしたんですね。その時の条件が「後継ぎを連れてきてくれ」っていうことで、私に声がかかったっていうそういう次第でした。

そうすると、テーマはもちろん創業者がいなくても大丈夫な経営体制にするっていうことが何より大きなテーマで、そこからさっきも言いましたけどもファンド2社を経由して最終的には今プライム市場って言うんですかね、上場企業にイグジットすることができました。

引き継ぎ当初のCSSっていうのは、さっきのオフィスの写真でも見るように結構いい感じで、業績も絶好調でユニークな開発をしてるいい会社だったんですけど、中に入ってみると、やっぱりめちゃくちゃトップダウンで、業績がいいっていうことは、効率化をめちゃくちゃやってるんですよね。お前はこれだけやっとけばいいから、お前はこれはやるなとか、その目標になる指標もすごいシンプルにして、ある意味全体最適を考えさせないみたいな仕組みを作ってる会社さんが結構多いということをすごく思いましたね。あとはまあ、過度なトップダウン、要は熱いオヤジなんですよね。なので感情的なマネジメントっていうのはすごくありましたし、あとは腕に覚えのある人にいい給料を渡してどんどんやらせてたんで、教育なんかありません。新人さんが入ってきたら自分の仕事の効率が悪くなるんで、そういう人は嫌われるみたいな。だから若くてやる気はあるけど、何にも知らないみたいな子があんまりうまく残れないみたいな環境だったということです。

コンプライアンス意識でこれちょっとまずいなっていうのは正直思いました。嫌な予感で、「この絶好調な業績なんていつまで続くの?」とか、「絶好調を支えてた開発をやってる創業者がいなくなって誰がやるの?」みたいな話が1個ありました。過度なトップダウンというのはやっぱりモラルとかモチベーションも下げちゃいますし行き過ぎた効率化ってのは自分のことだけやっときゃいいよっていう無責任につながります。感情的なマネジメント、誰でも怒られたくないですから責任回避しますし、提案もしません。教育体制がないってことは、結果的に特定少数に業務が依存していくんですよね。やっぱり昭和のコンプライアンス意識っていうのは当然ながら、経営上は大きなリスクになります。

実際、どういうことが起きてしまったかって言うとですね。ヒステリックな日常が待ってました。

その次2つ目ですけど、月次決算が実は6か月遅れててですね。デューデリした時に中間時点の決算からあと全然締まってなかったです。経理が辞めちゃって、びっくりしましたね、僕。その結果未回収どころか未請求です。半分以上は債権が2,000万円以上あって、当時だとひと月分まではいかないんですけど、ひと月の半分くらいの債権が未回収になってました。

実は本社の受注ってのも結構停滞していたり、支店長も早々に退職しちゃったり、仲間を連れて独立しちゃったりとか、それ訴訟騒ぎになりましたけども。そんなことも起きましたし、その教育不足っていったらいいのかな、測量ミスによって2回やりましたね。1回目が2,000万、2回目は1億の損害賠償がありました。

あとは無線免許の登録漏れと、これも全部治癒してるんで笑い話として聞いていただきたいんですけど、そんなことがありました。私は元々会計士出身だったので、結果的にその月次決算をちゃんとやりましょうとか、誰もやりたがらない未回収の債権の取り立てみたいなことをやって、創業者さんからもそうですし、会社の内勤の方からの信頼を得ることができたのかな。今思うとね、そういうことを感じたりしています。やっぱりちょっと思ったのはもうアイデンティティを作らないといかんなと。創業者さんがいる時は、聞いてたら良かったんですよね。もう白だろうが、黒だろうが言われたことをちゃんとやるっていうことがお給料に直結しますから、あんまり考えないんですけど、僕が同じことやってもしょうがないですし、それを踏襲するのは良くないので、アイデンティティを作らないといけないっていうことです。

要はですね。よくある話なんですけど、いわゆる経営理念、企業理念っていうのを策定しました。これは最終的にはCSS spiritっていうことで、この3つの文章にしました。よく何かビジョン・ミッション何とかと言って色々作るんですけど、小難しいことをやってもあんまり伝わらないのでこの3つは守ろうぜと、アンケートを取って、こういうプロジェクトをやりたいんですけど、やりたい人いますかって言って手を挙げてくれた人と、あとはこちらから選んだキーマンを一人二人入れてやってもらいました。途中もちろんアドバイスはするんですけど、みんなの代表が作ったものだから、みんなの意見が反映されてるんですね。

それで僕もこれに従わないといけないし、新卒で入ってきた人もこれに従わないといけない。当然長年やってる人もこれに従わなきゃいけないってそういった感じにしました。なのでこれは人事評価制度の時のいわゆる数字の評価と行動の評価っていう2つあると思うんですけど、行動評価の時にはこの3つに即した自分なりの行動目標というのを作ってもらって、新人だったら別に魅力ある会社なんか作れないですから「挨拶ちゃんとやります」とかで全然いいんですけど、職階に応じたレベル上のものを作ってもらって、それをフィードバックするっていう風にやっていきました。

6年半でやってきたこと

具体的に6年半でやってきたことっていうことはちょっと端折りがちにはなっちゃうんですが、やっぱり色んなことをやりましたっていうことで、その経営理念という上位概念からどういう戦略、事業のポジショニングをやりますか、それによってまたさらにブレークダウンしてどんな営業をしていくんですかっていう話をして。

組織だったり教育だったり、インフラとか人事のことを考えていくということで、経理はさっき言ったように作り直しをして、みんなでそれに従う。戦略はNo.1でOnly1のポジショニングって書いてあるんですけど、これはこのスライドを作ってる時に思いついたんで、実際には会社では言ってないんですけどね。No.1はさっき言った通りICT化、最近だと建設DXっていう言葉が流行ってますけれども、そこの第一人者になろうぜっていうことで、これは実際になれてると思ってます。ユーザーとしてですね。

Only1っていうのは、やっぱり若い人が中心で自発的にやっていくっていうのは、業界問わずみんなが求めている組織だと思っていたので、これは結構意識して作っていきました。

営業に関してはセグメントです。いわゆる町の測量屋から建設DXの盟主とまでは言いませんけども、「そんなこともできるの?こんな若いのに」っていうのを結構意識しますね。地域も全国展開、主要都市には出たので、その後は「関東だったらこことこことここ」とか、そういう感じで今はやってるはずです。

組織は管理職を定義して権限を与えると同時に責任を持たせるということですね。あとは教育をやったり、ITをやったりっていうそんな感じでやってきました。

売り上げの推移は、数字を出してもしょうがないと思うので、ざっくりこんな感じになってたんですけど、さっき言ったICTの分野っていうのは最終年度だと43%まで伸びましたね。

あとは多店舗展開っていう意味でいうと最終的にはほとんど本社しかなかったんですけど、最後は支店の方が多い。実は本社じゃなくて支店が伸びてってたっていう、そんな感じで伸ばしていきました。

ちょっとまた目先が変わってですね、この辺多分プロ経営者目指される方っていうのは、よりハマってくださるんじゃないかと思うんですけど、やっぱり株主によって少しずつミッションが違うんですよね。僕は今思えば、創業者さんの思いをちゃんと翻訳するっていうのを結構意識していました。「やり方は違うけど、やりたいことは同じなんですよ」っていうそういう言い方ですね。そういう意味で創業者さんから信頼をしていただくっていうことと同時に、社員の方にも安心していただくっていう感じでした。

創業者さんはやっぱりトップダウンでやってきたし、よく言われたのが「大山さんは何でもできると思うけど、社員は何にもできないから」みたいなことを平気で言うんですね。みんなの前で。それ「そうですね」とも言えないし「違いますよ」も言えないなという時にそのよく言ってたのが「いやいや、オーナーさんはそう言いますけど、オーナーさんが育ててた皆さんなんですよね。個人で聞くと結構みんないいもん持ってるし、意外とできる気がするんですよね」みたいな感じで答えてて。その延長で「オーナーさんはそういう風に言うけど、社員主導でやってオーナーさんをびっくりさせるっていうのが僕の裏メニューです」みたいなことをちょっと笑いながら言うようにしてました。対立しちゃうと気まずくなるので、笑って言うっていうのを結構心がけていました。

社員の人に対して、例えばオーナーさんがもうめちゃくちゃキレてる時とかは「オーナーさんはああやってキレちゃうんだけど本当はこういうことが言いたかったんだよ」とか、そういう感じで言うようにしてましたね。まさに翻訳するというか。「あの言葉ってこういう意図があるんだよ」「こういうとこで実は彼も悩んでたんだよ」とか。やっぱり社員の人っていうのは会社とか社長さんの意思っていうのはものすごく見てますし、敏感。悪く言うと過敏に受け取り過ぎちゃうところがあるんで、そんなことないんだよっていうのを言うようにしてました。

次のファンド2社目の時には創業のオーナーさんも完全にイグジットしたので、本当にもうボトムアップで組織運営しないといけなかったんで、自分達の会社を自分たちで良くしていきましょうっていうのをめちゃくちゃ言ってました。意見を出してくださいってのをめちゃくちゃ言うようにしていますし、そういう仕組みも作りましたし、中には若手の抜擢中も多々ありましたし、さっき言った経営理念を策定した上で「みんなが経営理念の奴隷なんですよ。一番の奴隷が社長なんです」っていうような体で人事制度にも組み込んで、理念を体現してくれる人が上に行くっていうのをめちゃくちゃ意識して。逆に言うとそれをできない昔ながらの職人さんいうのは、残念ながら退場にしていただくというか、退場しちゃったっていうこともやっぱりありました。

最後、事業会社さんとの時には、やっぱりシナジーの創出がすごく大事なんですよね。あとはCSSでせっかくやってきたのに飲み込まれちゃう、俺達のやりたいことができなくなっちゃうっていう風に思われちゃう。僕も構えるところが正直ありましたけども「実はそんなことなくて、グループ入りしたことでこういうことができるんで、こういうことができるんだ。こういう安心があるんだよ」っていうのを結構言ってました。

一方で、やっぱり自治の確保っていうのはすごく大事で、次の経営者の育成、やっぱり大手の事業会社になったら、そこの部長さんが社長をやるっていうケースすごく多いですから、そこをプロパーから出してあげるっていうのは、僕の最後のミッションかなと思ってやってきました。

エピソードいろいろっていうことで新卒採用、若返りをしたかったので、新卒採用はめちゃくちゃフルコミットしました。いわゆる合同説明会とかも基本的に僕が行ってましたし、何なら1次面接も最初の頃は自分でやってました。

あとは教育の仕組みで、これも今までは10年選手とか20年選手、限られた人しかできないって思われてた業務も本当に教育をガチでやったらもう新卒3年生もできるようになっちゃったっていうのが実際起きちゃったんですよね。そうすると職人でも管理職に脱皮しないといけないですし、やっぱりその給料を倍違う人と同じことやって偉そうにしてるわけにはいかないなというのはもう一目瞭然っていう感じでした。

あとはさっきも言ったように評価の仕組みを整えて、自由と規律の両立ってところ。ばれなきゃいいじゃんって色々コソコソやるっていうのを、やっぱりキラキラした新卒とか若い人入ってくると恥ずかしくなってきましたよね。そういうのは上からガミガミ言うよりはそういった感じで、企業理念に共感してくれた人がキラキラして入ってきて一生懸命やってるうちに上の人は変わっていくみたいな、ちょっとサンドイッチみたいな感じで会社が勝っていったかなという気がしました。

結構面白かったのは「嫌われ者の覚醒」ってやつで。職人ってやっぱり俺が一番と思ってるんで、何でも俺一番みたいなことでアピールしてくる人とか結構いてですね、めちゃくちゃ嫌われ者が一人いたんですけど、その人は実際人を使って束ねなきゃいけない支店長になってからめちゃくちゃ覚醒してくれた。そういう嬉しいエピソードもありましたし、最終的にその嫌われ者が実は次期社長になってくれたんですね。これは本当に感慨深いというか面白かったです。

結果、まあこれでちょこちょこ話してますけど、売り上げ7億だったものは今期の見込みだと20億ぐらいになりました。従業員65人が180人になって20代が16%、10人しかいなかったんですけど、最終的には20代が45%いるっていう会社になりました。拠点は2拠点から7拠点、事業も測量から多角化して。イメージが「ちょっと変わったはぐれ者」みたいなイメージだったんですけど、建設DXの第一人者みたいなそういった位置づけにできたかなと思っています。

2022年4月に卒業させていただいて、コロナもあってあんまり支店回りとかしなかったんですけど、退任発表してから一通り回って最後の飲み会をやってきました。今は、この会社って結構職人かたぎとかシャイそうな技術職の人が多いんですけど、今度はアイアールという建設会社向けの人材派遣ビジネスの社長を6月からやっています。CSSとまた違った若さが爆発してるっていう会社です。

ちょうど1か月半くらい経つんですけど、本当にこういい感じでやれそうだなと。CSSで学んだことを活かしてやれそうだなと思っています。

~第二部~プロ経営者のキャリア

第2部プロ経営者のキャリアってことで、私なりに経営者の仕事って何だろう、特に雇われ経営者ですね、いち従業員から社長になって変わったことでは、リーダーシップです。正解がわからない中で方向を出すっていう仕事で、ボヤいたら後ろから刺されるっていうのはちょっと大げさですけども、やっぱりポジティブでいるっていうのは凄く大事だなっていうのを感じています。

あと意志決定。これもちょっと似てるんですけど、「根拠が足りなくても意思決定しないといけない」っていうことの連続なんですよね。なのでコンサルさんとか僕がいた監査法人とかっていうのは逆にロジックを詰めてそれを支えるデータだったり仮説というのをしっかり作ってドンって出すんですけど、実際にはそうじゃないっていうところからがスタートっていう感じで、風を読むっていうよりは時にはね、社内外の人達に向かって風を吹かせるみたいな。吹かすでもいいんですけど、そういうのをちょっと感じるようになりました。

ある意味100%結果責任の世界なので「こうでこうでだからこうなんです」って言ってもしょうがないっていうか、「よく分からないけどできました。でも、結果責任を果たせちゃう」っていう、だから種類が全然違う責任だなっていうのは、やっぱり自分がいたプロフェッショナルファームの時と比べるとだいぶ違うなという気はしました。逆に言うとですね。100%結果責任なんで、自分なりにやることやってできなくても「じゃあどうぞ切ってください、じゃあお前がやってみればいいじゃん」みたいなねちょっと本音も交えつつですね。そういう腹が座ったっていうのは、結構楽しくできる一つかなっていう気もします。

初プロ経営者が落ちそうな穴

初プロ経営者の落ちそうな穴っていうことで考えたのは、繰り返しっぽいんですけど、創業者さんとの距離感。これはある意味代理人でもあるっていうことの立ち位置はすごく大事かなと。一方でそれだけでは駄目で新しい時代とのつなぎ役。この2役っていうのをちゃんと使い分けるっていうのは大事だなと思いました。

後は社員との距離感。やっぱり評論家に見えがちなんで。お前が来てやってみろ(OKY)って。これはちょっと尊敬するおじさんが言ってたんですけど、OKYの世界だなっていうのをめちゃくちゃ意識しています。

最後はリスクとの距離感。さっきの繰り返しですけども、リスクを取って結果責任を取るのが仕事なので、もう結論を出すことを恐れないっていうのをちょっと思いました。

ファンドとの付き合い方

ファンドとの付き合い方っていうことで、PLを守るっていう話になりがちなんですけども、やっぱ会社の価値を高めて、高い価値でイグジットするっていうのが最後の目標のはずなんですよね。

で、その目的を果たすためのメルクマールとしてPLがあるんだよね。事業の方向性があるよね。っていう風に意識するようにしたんで、大きな幹と枝葉の話を混同しない、させないようにしないといけないなっていうのを思ってます。

あとは二枚舌は凄く苦しくなるので、会社にもファンドにも同じ言葉で話すっていうのは凄い意識しました。よくあるのは、ファンドじゃなくてもそうなんですけど、何か上の人とかから言われて「あいつらにやらしておきます」みたいな言い方する人とか結構いると思うんですけど、「やらせます」って言われた人たちがどこで聞いているか分かんないですよね。LINEでも1on1でも基本的に流れ出ると思って話をしてました。

あとはちょっとまた違った観点ですけど、多分ですよ。ファンドさんとの間では、条件よりも相性、仕事のスタイルがすごい大事だと思います。僕はですね、比較的任せてくれるファンドさんに、僕は任せてほしいタイプなんですけど、任せてくれるファンドさんとやったので、すごくやりやすかった。例えばいわゆる大手で、本当に誰でも知ってる会社を何1000億で買うみたいなディールになると、任せるだなんてできないんですよね、ファンドさんの方も。そうするとやっぱり役割に徹する覚悟も必要で、その辺がすごく大事だと思います。だから目先の条件よりも、仕事のスタイルの方が選び方としては大事なんじゃないかなっていうのが思いました。

あとはトリセツ大事って書いてあるんですけど、やっぱり自分の得意なところと苦手なところっていうのを明確にして理解してもらうと苦手なところはサポートしてもらえますし、得意なところはやってみろって言っていただけるような気がします。

後は、これも新卒3年生の話みたいなんですけど「悪いことは早めに」という感じで。やっぱり社長になると入ってくる悪いことの悪さが半端じゃねえみたいなところがあってですね。これもとてもじゃないけど、抱えきれないみたいな。そういう話が色々待ってるので、報告というか相談ですよね。「事実はこうです。評価はこうです。最悪こうなるかもしれません。でもうまくいったらこうできるかもしれません。だからこうしようと思います。これで自分としてはこう考えたんだけど、ファンドさんの利害と一致しない可能性があるので、ファンドさん的にどうですか」っていうのは、そんなような感じで相談をしてます。

二回目以降のプロ経営者キャリアの魅力

2回目以降のキャリアの魅力っていうことで、やっぱり信頼関係。僕ね、今のアイアールさんは実はCSSの時のファンドさんと同じファンドなんですね。なので、またよろしくお願いしますという感じでやってるので、信頼関係はありますし、やっぱり1社目の経験がめちゃくちゃ役立っているので、1社目で3年ぐらいかけてやってきたことをもしかしたら今のアイアールだったら1年ぐらいでできるかもしれないなと思いながら、今やっています。

あとはちょっと個人的にきっと一番気になるところだと思うんですけども、やっぱり一度実績作れば条件も当然後からついてきますし、わらしべ長者への道っていうのが広がっていくんではないかなと思ってます。今後もこの職業ってのはニーズが途絶えることのない領域だと思ってますし、早い時期にやればやるだけ失敗のチャンスも成功のチャンスも待ってますので。つまり経験できるんですね。やっぱりチャレンジしがいがあるなと思ってます。僕はそのCSSでもアイアールでもそうなんですけど「僕みたいな仕事を全然やりなよ、できるよできるよ」っていうことも言うようにしてます。っていうのはその会社のトップは一人しかできないですよね。でも、プロ経営者っていうキャリアを、同じ社長業、プロ経営者っていって他の世界に広い世界に目を向ければ、チャンスは本当に腐るほどあるんで。そういうことを言うようにしています。

最後に

最後にっていうことで、ご清聴ありがとうございました。ちょっと長くなっちゃったんですけど、ほんと個人的には大変学びの多い6年半だったんですけど、そうは言ってもたった1社の経験なので。今日聞いてくださってる方の中には、経験をお持ちの方もいらっしゃると聞いてますので、是非いろいろお話させていただければなと思っております。どうもありがとうございました。

Q&A

堀江

大山さん。どうもありがとうございます。
では、皆さんここからQ&Aの方に移っていきます。
事前にいただいた質問がありますので、私の方から質問させていただきます。

ちなみに大山さんのトリセツは良いところ、悪いところとか、実際はどんなところなんですか?

大山氏:僕はですね。テンション高いとどこまでも行くんですけど、ダメだとグダグダになっちゃうっていうのと。あと金に超ルーズなんでもう全然できませんっていう感じです。

堀江

金にルーズな会計士(笑)

大山氏:調子乗せて後でしっかりしないといけないところはやっといてくださいみたいな。そんなイメージ。

堀江

管理系の人が一人いた方がいいですかね。近くに。

大山氏:そう、それもありますよね。やっぱりそのCSSの最後の方は、上場企業で管理部門のトップでっていう方がたまたま入ってきたんで、やっぱそれでぎゅっとこう急速に引き締まってったっていうのもありました。

堀江

ありがとうございます。ではQ&Aの方に入っていきます。

Q.オーナー社長とプロ経営者の比較や違いについて

堀江

「オーナー社長とプロ経営者の比較で得られるものは視点とか、色んなものが違うと思うんですけど、どんな違いがありますか?」

大山氏:僕すごくあると思ってて、オーナー会社だと社長さんがオーナーさんなんで、オーナーさんがいいって言ったらいいになっちゃうんですよね。結構そういう会社さんも実際は多いと思うんですけど、それだとやっぱり自発的な組織なんか作れるわけねえじゃんみたいにちょっと思ってました。

僕は経営者、社長なんだけど、やっぱり「オーナーさんから託されている預かりものなんですよ」っていう言い方をすごい意識していて。だから会社の価値を高めるのが仕事であって、僕が例えばCSSに20年いることは目的じゃないですし、僕の言うことを聞かせるのも目的じゃなくて、その会社の価値を高めるっていうことに対して大山じゃダメだと思えばどんどん変わるし、自分でダメだと思ったら自分から降りるのも仕事の一つだっていう。そういうのは自分でも思いましたし、社員の方にもそういうのは言いやすかったんですよね。だから「どうせ好き嫌い人事だろう」とか、「どうせ自分のためにやってんだろう」みたいなことを言われた時には、それをすっと言えたんでそこは良かったなと思いますね。

あとはもうダメならダメで「もう切られるかもしれないからおしまい!」みたいな。何かそれもポジティブに捉えられたというかですね。ちょっとうまく伝えられたか分かんないけど、それはちょっと思いました。

堀江

従業員の方が、大山さんは前のオーナー社長のようなタイプじゃなくて、自分たちと一緒にリーダーシップをとってやってくれる方だ、って周りの方が認識しだすまでどのくらい時間かかりましたか?

大山氏:わかんないけど、アイアールさんなんかは僕、勘違いだったら恥ずかしいんですけど割とそこは何か受け入れてくださってるんじゃないかなという気がしたんで。最初にヒアリングというか、面談とかしたりするじゃないですか。そういうところで何かあるのかもしれないですよね。でも今みたいな話を最初にするんですよね。「多分、皆さんが今まで見てた社長の像と全然違います」みたいな。「皆さん以上に会社の奴隷ですからね。エヘヘ」みたいなことは言ってます。

堀江

だから最初はちょっと斜に構えながら、「外から変なやつ来たぞ」って見てるのがだんだん変わっていくイメージですかね。

大山氏:うん、そうですよね。どうなんだろな。小野さんとかどうでした?見ててなんか思いました?そういうのって。当事者過ぎてよく分かんないんですけど。これって俺って受け入れてもらったんだろ的な。

小野氏:そうですね。1社目の方は非常に民主化、非常に変な言葉で言うと、ちょっとトップダウンっていうかいい話でいうとそうだったんですけど、全てこの人が決めますみたいな。だから独裁者から民主化が始まったみたいな形だったので、これからは言うこと言ったり、意見とか言ってみてもいいのかなっていう雰囲気を感じたので。明るい優秀なトップダウンの独裁者から民主化運動が始まって、自分たちもやらなきゃいけないし、やれるんだっていうか、中に入っていった感じがしますね。

2社目の場合は全然違いますね。社長もどちらかというと、もうやりたいようにやればいいじゃんみたいな感じで。重要なことは僕が責任を取るというか、5年後は決めるけども、細かいことは全く言わずにやってみればみたいな感じで。ただ結果が出なければサッサとどんどんABテストして、どんどん改善していくみたいな社長だったと思うんです。今回の場合は、皆さんできる人たちがいらっしゃるけど、導いてくれる人がいないところに大山さんが来たので、安心して行けるようになりそうだな、受け入れられたんじゃないかな、と僕は外から見て思ってますけどね。

大山氏:2社目はやっぱり管理の仕組みというか、業務の仕組みっていうのが、やっぱりこう穴っぽいまんまだったんですよね。勢いはすごいんだけどちょっと脇固めるのは遅れてるみたいな。ただ、そこは僕らでやりますよって言って、そこをバーッってやってるっていうのがあります。例えば、給与計算実は手計算でやってます、みたいなのがあったりするんですけど、だからそんなのはこういうことやって、こういう風にやって自動化しちゃえばいいんだよ、みたいなことを結構面談しながら話してあげて、じゃあやってみようみたいな。やっぱり足りないものを埋めてくれる人なんだっていう風に思ってもらえることで、信頼を得られたのかもしんないですね。

Q.既存メンバーとのコミュニケーションの取り方について

堀江

ありがとうございます。2つ目の質問にだいたい答えちゃったかもしれませんが、コミュニケーションの取り方、付け加えることありますか?

大山氏:あのね。立ってるだけで上から目線に絶対見えるはずなんで、やっぱ現場の人に対するリスペクトっていうのを口に出していくってのはすごく大事だと思います。立ってるだけで上から目線に見えるんで、どこまでできてるかわかんないですけど、笑顔を絶やさないようにするとか、そういうのもやってるのかな。

小野氏:一つだけ大山さんの事例で僕が覚えてることで言うと、僕がファンドの人間として社員旅行にもなぜか混ざった時に会ったんですけどね。普通社長って社員旅行に行っても、見てる方だと思うんですけど、大山さんの場合、一緒にパンスト相撲をやったっていう人がいて。そういう形で社員から見ると社長と株主の人がパンスト相撲やってるって感じになるので、この人たち下に下がってきてくれてるなっていうのはあったんじゃないですかね。あれが意図されたものかは分からないですけど(笑)結果としてはそういう風に従業員だったら見えるようになってたんじゃないかなと思ったりはしました。

大山氏:まああれに関して言うと僕はやりたかっただけなんですけど(笑)結果的にね。そういう風に見ていただいたっていうのはあるかもしれないですね。

未経験の業界の時のネットワークやノウハウの作り方について

堀江

次ですが、「やったことない業界の時にどうやって人的ネットワークを作るのか?」というご質問ですが、いかがでしょうか?
プロ経営者でやったことない業界の時にノウハウとか人脈とかない中で、必要なネットワークとかノウハウとかってどうやって作っていましたか?

大山氏:まずはね、聞きに行くっていう感じですかね。例えばCSSで言うと建設業界とかなんですけど、日経コンストラクションとかね日経ビジネスとかたまに大物出たりするじゃないですか、現役バリバリの社長さんなら結構しんどかったりするんですけど、ちょっと一線退いた顧問の人が「土木教室連載」みたいにしてると、そういう人にコンタクト取って「業界のことを聞かせてください」みたいなのは結構やりましたね。そんな感じで、とにかく聞きに行くっていうのは結構やりました。

あとは「人的ネットワーク」って必要あるのかな、そこはよく分かんないんですけど、どうなんですか。あったほうがいいのかな。でも必要な時は自分で探しに行くっていうか、別に恥ずかしがる必要もないですし、ちょっと下に見られてクッソーっていう時もいっぱいありましたけど、別にね、10人に会いに行って2、3人でも協力してくれたら、それだけで十分ですからね。正直。っていうそんな感じでやってきましたね。

Q.権限移譲後の対応

大山氏:権限委譲はやっぱりちょっと本当に正攻法ですけど、まずは組織を作って、その組織の役割とか定義っていうのをちゃんとやって。あなたのミッションはこれですよ、こういう責任があって、こういうことをしてほしいんですよっていうのを話してやっていくっていうのに尽きるんですけど、プロパーの人って専門学校を出て20年現場やってましたみたいな人が、いきなり5年前から支店長をやってみましたっていう、そういう感じで流れていったりするんですけど、やっぱりその中でどの人が向いているかなっていうのはずっと見てましたね。そんな感じの答え方になっちゃって申し訳ないんですけど。

あとはねやっぱり、いつかやってくれっていうのは結構言ってました。自分がこの会社に39歳で入ってきて、じゃあこの後25年社長をやったりすると、同年代のそういう現場生え抜きの力を持ってる人たちって一生上がりがないじゃないですか。そんなつまんないですよね。絶対に。だから僕はもう5年なのか10年なのかよくわかんないけど、次の社長やってもらいたいんだよねっていうのはずっと言ってました。いろんな言い方でね。でも、やっぱりそれでも自分がやるっていう想像力を本当に思う人ってのはすごい少ないんですよね。

やっぱり現場の方が好きだなっていう人がいれば、いやまさかまさか自分がってその殻を破らない人ってやっぱりいるので、そうすると自ずとやりたいっていう人も限られてきますし、あとはやりたい人とできる人ってのはちょっと違うので、そこをそんな感じでちょっとやってた感じかな。

チャレンジしてもらってダメだったらまた戻ってとか。基本的に会社って階段上っていく感じだと思うんですよ。そうすると、もう何か失敗したら、そこで止まるっていう椅子取りゲームみたいになっちゃうんで、リスクとか取りに行かないんですけど、やっぱり僕も年もあれですし、若手にどんどん任せたいっていう話をしてたのでやって再チャレンジみたいなことは上がったり下がったりがあるんだよっていう。そういう組織のつくり方は結構意識してましたね。そうするとね、50代以降の人っていうのはあぶれがちになるって言われがちなんですけど、そこはね。やっぱりその若手を育てるとか、やっぱりこう体力的にもやる気的にも40代、50代ぐらいとかがトップをやる方が良くない?っていうのは結構言いましたね。例えば、50代後半ぐらいからは逆にサポートしたり知見を若手に引き継いであげるっていう方が本人もやりやすいというかですね。そういうのは結構意識してます。実際30代とか40代って子育て。50の後半とか60代になると介護とかが始まるんで、本当にその自分の時間をこう仕事にフルコミットできる期間って実はそんなに長くないんじゃないかっていう気がしていて。そういう風な話もちょっと混ぜながらやってました。

堀江

今まで経営レイヤーに行けると思ってない人たちばっかりの中で、大山さんがその話をして、何パーセントぐらいの人が「じゃあ、もっと俺出世して幹部になるぞ」とか「社長目指そう」ってなりますかね?

大山氏:分かんないけど。でも結果的には10人に1人いれば十分という感じ。

堀江

10人いたらいいですね。100人以上の会社だったら。

大山氏:そのぐらいでいいかなと思ってます。それで40代で1人、30代1人、20代に1人。で、そういう人が引きずられて2、3人ずつの固まりになってくるんで、その中で会社が大きくなってくるんですね。そういう人がいないと部長もできないみたいなね。こんな感じになるんで、そういうイメージで見てました。

Q.なぜプロ経営者になったんですか?

堀江

次はですね。
何でプロ経営者になろうと思ったんですか?」

大山氏:なんか楽しそうだからっていうか。楽しそうと儲かりそうの2つですかね。あと失敗しても何とかなるかもっていうのは飛び出せた一歩があるかもしれないですね。何かしら食っていけるかもしれないなって。

堀江

エンデバーさんで投資も投資先の経営者も両方やられてたんですよね。

山氏:そうですね。

堀江

投資家よりも経営の方が面白かったということですか?

大山氏:そうそう、そう思った。多分そこで人によって自分がこれが好きっていうのは全然あると思うので、それを突き詰めようと思いましたっていう感じですね。

Q.投資先企業との親和性について

堀江

投資先企業との親和性はどのように判断されましたか?」

大山氏:僕はまだ2社目ですけれども、若い人にチャンスを与えるっていうのがないと、幾らボトムアップって言ったって難しいと思ってるんですよ。だからそれがこう受け入れてもらえそうかどうかっていうのは。結構すごい意識しましたね。だから、そのいわゆる伝統的な完成された日本型大企業というか、中小企業でもいいんですけど、その価値観が本当にどっぷりだと結構キツイなと思ってます。部長には部長って言わなきゃダメだろうみたいな。本気でそう思ってる50代がわんさかいるみたいな感じだと相当大変だろうなって思ってますね。そもそも論としたら、逆にトップダウンぐらいの方がやりやすいかなと思ってます。

堀江

組織だってないから逆に育てやすいということですね。

大山氏:そうですね。やっぱり剥がして作るっていうのは。

Q.経営方針を踏襲すべきか、変えるべきかの判断

堀江

「着任後、経営方針を踏襲すべきでしょうか、変えるべきでしょうか?」
ケースバイケースかもしれませんが。

大山氏:これもね。やっぱり玉虫色を意識するというか。さっきまでちょっと言ったんですけど「やり方は違うけどやりたいことは一緒です」みたいな言い方はすごい意識するようにしてましたね。そうしないと連続性がなくなっちゃうっていうかね。だから「以前の方針と僕の方針が違うところもあるけど、それは上位概念じゃないです。やり方が違うだけです。会社としてやらなきゃいけないことっていうのは、今も昔も変わりません」みたいな。できれば、そういう風に言いたいって言うかね。

堀江

ありがとうございます。
サーバント型経営って何でしたっけ?

大山氏:多分トップダウンじゃない感じってことですかね。

小野氏:僕らにとって現場の人、要は「お前ら駄目だから俺のいうことを聞け」っていうのが逆の概念で「お前らもできるから一緒に頑張る」まさに大山さんが言ってたようなことがサーバント型。「俺も頑張るからお前らのために俺が身を粉にして働くからみんなで頑張ろうよ」みたいなそんな感じがサーバント型っていうことですかね。

大山氏:これについて言うとメリットデメリットというか、結局両方使い分けなきゃいけないっていう風に思っていて。トップダウンとか組織の指揮命令系統の全否定も絶対うまくいかないと思いますし、サーバント型の前工程も絶対うまくいかないよなっていうのは思ってて。後はね。その結局自立してる人じゃないとうまくいかないんですよね。自立している人っていうと、いい人がいないとできないっていう風になりがちなんです。そうじゃなくて、やっぱり価値観を1個ダンと作って、それを体現できる人っていう前提を作るっていうかですね。思ったようにやっていいよ、ってだけだと会社の利益よりも自分の利益を優先する人だらけになる。100パーそうなんですよ。絶対にこれは別に人として駄目なんじゃなくて、そういうものなんですね。人間はね。だから集団はこの価値を体現するための集団ですよと。まずはその船に乗るんだったら、それをまず理解してください。その船に乗った人だったら、自由にやりましょうというその区切りをつけるっていう感じですかね。それを破る時はトップダウンで殺しにいきますよ、みたいな。そういう感じがいいのかなとは思ってます。

堀江

なるほど、大山さんが前職で掲げられた理念を向かう限りにおいては。

大山;自由なやり方とかがそれに結びつくものであれば自由でどうぞ、なんだけど結び付かない自由はいらないんですっていうのはすごい意識してましたね。

Q.トップに立ってからの影響力、ポジションパワー、使い方のポイントについて

堀江

「トップに立ってからの影響力、ポジションパワー、使い方のポイントを教えてください」

大山氏:確かにそうですね。何て言うのかな、刀があって鞘を抜いたらもうおろさないといけなくなっちゃうじゃないですか。抜きそうだっていうところでハッって気付いてもらうっていうのが、多分ポジションパワーとしては使い方としては良くて、そういう感じで使うんだろうな。振り下ろしたこぶしはどっかにおろさないといけなくなっちゃうんで、こうなったらこぶしを上げないといけなくなっちゃうのでこうなる前に守ってくださいね、みたいな。そういう言い方でやった方がいいかなっていうのは思ってますけどね。

後はね、いいからやれよみたいなのって、まさにポジションパワーなんですよ。上の指示だからやれっていうのが。それも絶対やんないようにしました。どんな人に説明する時でも例えば「パートさんの時給が何で上がらないんですか」とかもちゃんと説明できるようにしましたね。中間管理者の人が説明できなくても、納得いかなくても僕は説明できるので、いつでもそれ納得いかなかったら言ってくださいっていうのは言ってました。そうしないと、その結果的に「支店長が言うからやりました」っていうのって事実そういう場面あるかもしれないけど、その人に対しては言い訳にもなりうるし、意見は絶対出なくなるので言われたからやったってのはダメよっていう。そういう意味ではそのへんなポジションパワーの使い方はしちゃダメよっていうのは、ミドルの人達には言うようにはしてます。

Q.前職と現職のマネジメント成長戦略の違いについて

堀江

「前職と現職のマネジメント成長戦略の違いはありますか?」

大山氏:CSSはやっぱりシャイな技術者集団という感じですね。アイアールは派遣会社なので、800人900人いる派遣技術者の人とそれを一生懸命支える内勤の70人くらいの組織っていう感じでも、何か違う会社が2つあるみたいな感じになっちゃうんですよね。今までは内勤の人たちだけ見て営業を頑張ろうでどんどん大きくなってたんですけど、やっぱりそれだと技術者がおいてけぼりになっちゃうんで、技術者さんたちも含めて70人の会社じゃなくて900人の会社なんだよっていうのを今から定義をしていきたいなって思ってます。

小野氏:アイアールさんってトップダウンっちゃトップダウンですかね。

大山氏:ある意味そうかもしんないですよね。

小野氏:最終的なものはガンと決めてガンガンいく、みたいな。

大山氏:そうですね。すごく任せ方とか、その逆に任せる代わりに、ここはちゃんと握るっていうのはすごいメリハリがしてあるんだなっていうのは入ってみてすぐ分かりましたね。

大山さんの今後のキャリアを教えて欲しい

堀江

「大山さんの今後のキャリアを教えてください」
今度は決まってますか?

大山氏:僕はですね、とりあえずは一生懸命やるんですけど。うまくいったらまた次考えます、うまくいかなかったらしばらく1年ぐらいね。ちょっと家でニートやろうかなって。だんだんだんだんこの知り合いとか昔世話になった人とか何か友達と一緒に仕事するみたいなのが増えてきていて、何か普通に今何か遊びと仕事の境界線がなくなってきてるみたいな感覚がすごい面白いですね。そういう感じでこれからもやっていけたらいいなっていう気がします。

生涯現役、プレイヤー思考の従業員のマインドの変え方

堀江

事前にいただいていた質問は終わりでして、追加でいただいた質問が2、3個ありますんで、そちらを。
「職人系の方に対して給与は大して上がらないので今の技術を磨きたいというプレイヤー志向の方のマインドをどう変えましたか?」
という質問です。

大山氏:そういう人はあんまり気にしないんですよね。その人を変える必要はなくて。職人さんだけど技術者だけど、やっぱり自分の技術を磨いてもしくはビジネスマンとしてステップアップして給料も増やしたい。自分の力の範囲を自分のスキルアップというかあれもしたいっていう人を拾っていって、それはもう会社もやっぱり大きくなって価値を高めたいっていうのと、そういう人は共鳴勝手にしてくれるので、そういう人たちを探してチャンスを与えてっていう風にしてきました。最初は給料大して上がんないしって方も、そういうのを見てると、俺もやってみようかなっていう人は自然とそっちへ来てくれますし、そうじゃない人はそのままでいいですし。でもそうじゃない人を切り捨てるのは全然違うので、そういう人たちにはそういう人たちなりの職人としてのリスペクトをしてあげられるようなポジションを作るというか、ルートを用意するっていう2段構えでやっていきましたね。

堀江

技術者コースとかマネジメントコースというのを明確に作ってたわけではないんですか?

大山氏:作りました。結構でアパレルとかでもそうで、本当に死ぬまでお客さんに向けていち販売員でいたいっていう人もいれば、支店長になってエリアマネージャーになってみたいな人もやっぱりいるんですよね。だから業界とは全部こういうレイヤーってあるので、そういう感情を結構意識してやりましたね。

OKYにならないためのコツ

堀江

「OKY(補足:お前が来てやってみろ)にならないことが重要ですが、一方で現業はできるわけではないので、どうやってご自身の力を見せて実現されましたか?」
という質問です。

大山氏:そうですね。まず、OKYをやって「できません」って言って降参するところから始まるんですよね。現場行ってやっぱりダメだ!すげえ!みたいな。それは別にどういうことだってリスペクトするっていうか、なんかやっぱりリスペクトっていうのがもう根幹にあって。現場をやる人にしかできないこともあれば、現場を支えるもしくは現場をマネジメントするマネジメント層じゃないとできないことっていうのも当然あるわけで、それをちゃんと整理するっていうことをやれば、自ずと上、下じゃなくて住み分けというか役割分担なんだなっていうのが自ずと分かってくるっていうかですね。だからそういう中で会社としてやれることってこういうことだよね、みたいな。だから現場の人頑張ってみたいな。そういう感じのことですかね。何かそのように思いましたね。あんまり変えようとするとかっていう風に見る必要もないというかね。自分ができないから従ってくれないっていう風に思う必要ないというかですね。そこで力んじゃうとまさに上から目線になっちゃうと思うんですよね。その道何10年の人に勝ちに行っちゃうとその時点でそっぽ向かれちゃう。それはちょっと思います。

Q.各施策のROIの考え方とステークホルダーとの合意形成のポイント

堀江

「各施策のROIの考え方とステークホルダーとの合意形成のポイントはどこですか?」何か感じることありますか。

大山氏:ROI、投資効率みたいなイメージですかね。

堀江

いろんな行った施策の投資リターンをどう考えるか。

大山氏:ファンドさんによるんだと思うんですけど、そういう指標とかももちろん、その個別に見ればそういう指標がいい方がいいに決まってるんですけど。会社の経営っていうのはいろんな指標があって、全部正の相関じゃないじゃないですか。これをやると、こっちが下がるとかそういう矛盾。KPI一個取ったって矛盾だらけになるに決まってるんですよね。だからその一極、例えば営業に作ったKPI、投資サイドで考えたROI、なんだかんだなんだかんだやってるのがあってももう全部矛盾の結果にしかならないっていうことをどう判断しますかっていうのは僕経営者の仕事だと思ってるので、ROI一個で議論するってことはないですね。

例えばROIがいいのが出れば出たでやりましょうって事なんですけど。でもここでいい数字が出るってことは、もしかしたら他は逆相関が働くかもしれないということまで目を向けると「いいからやります」じゃなくて「いいけど、こっちは一瞬下がりますよ」っていうそういう話になりますし、逆もまたしかりで「ああ、この当時のROIはこうなんだけど、でもここは将来こうなります」とかっていうのをセットで話すっていう話なんだと思うので、それがPLじゃなくて価値上げるって話しましょうって言った話のちょっと伝えたかったことで、何かもうとにかくそういう話かなと思ってます。

Q.20代でプロ経営者になることは物理的に可能?

堀江

最後に質問これで終わりますね。
「20代がプロ経営者としてできるかどうか感覚を教えてください」
これは大山さんと小野さん二人に聞きたいですね。

大山氏:僕は全然可能だとは思いますけれども、業種とかはその会社のステージによるという話かなと思います。僕は30代後半のデビューだったのであれですけど。

堀江

20代の大山さんがこの2社の会社の経営を任されてたらできたと思いますか?

大山氏:全然思わないです。

堀江

ありがとうございます。小野さんどうですか?

小野氏:そうですね。オーナー経営者さんにとってやっぱり20代だとまだ経験がそんななくて、ただ本当に20代で上場していましたよみたいな人には多分いっぱい人来るんですけど、20代っていうのはなかなかプロ経営者という立場だったり、色んなプロフェッショナルファームで経営に近いところまで経験できるケースはなかなかないかなと。

大体40ぐらいで社長やってこいみたいになると思うので、なかなかそういう場がない。それに近い経験が運良く例えば自分の会社をやったり、親の会社を引き継いでぐわっと伸ばしました、みたいなそういう経験が多分25歳から30歳までにある人だったら別だと思うんですね。ただ、なかなか20代にそういうチャンスは落ちてこないので、結果として会社を継ぐにはある程度他のところでそれに近いような経験がないと任しづらいので、20代では「結構優秀って言われてましたよ」って言ってもそういう経験があるとちょっと安心感が違う。そういう方が候補でいらっしゃる場合には、やはり他の部分が同じような感じであればアラフォー以上の方の方が安心だなっていうので、そちらが選ばれてしまうのかなっていう気はしますね。可能かって言われたら可能なんでしょうけど、難易度はそれなりにあるのかなと思ってます。

堀江

サーチファンドでサーチャー活動している人で、多分一番若い方が32、33歳くらいの人がいますね。

小野氏:20代はいないですね。サーチファンドもやはりサーチファンドのいろんな見方、多分優秀なスペックを持つ学歴だったり、例えば東大卒でどっかのまあまあのMBA出ましたって人がやると思うんで。そのオーナーから見ると、この人経営者やったことあるのかって言うと多分あんまりないと思いますし、ファンドとかで入ってる人ってのは、もしかしたらファンドでハンズオンして、副社長まではなかなか20代30代だとまだそこまで任せてくれないと思うので、1次担当としてファンドの投資先に入るくらいだと思います。なかなか形式上リーダーになっても経験ってのはあまりないので、結果として難しいってことなのかなと思いますね。

能力があっても、それを証明できる場がまだ20代だと経験できている可能性が少ないと。大山さんは他のファンドのところでもどこかのファンドで副社長とか経験ありましたし、他でも何件か経験あったんで何年かファンドにいることによって「何社やりました」とか、「1社で副社長をやりました」っていう立場だと得られると思うんですけど、仮にファンドに入ったとしても20代ぐらいで、副社長とか大投資先の社長やりましたっていう経験はなかなかできないと思うので、普通は難しいんでしょうね。能力があるじゃなくて、そういう証明がしづらいので難しいのかなっていう気がしてますね。

Q.後継者探しに着手した時期について

小野氏:大山さん。すみません。後継者を見つけるためにやっぱり辞める2、3年前ぐらいから準備したんですか?自分が引き継ぐ前提で考えられてると思うんですけども、その準備ってどのぐらいからやられたんですか?

大山氏:2年ぐらい前から考えてて。実際に何て言うかな。外堀埋めたのは2年前からで、実際にギューっていったのは1年前ぐらいって感じですかね。

小野氏:ギューっていうのは候補を絞ってあなたがやる?っていう話をし始めたと。その時に候補は一人に絞った感じだったんですかね。

大山氏:一人でしたね。やってほしいなっていう人がもう一人いたんですけどね。その人は独立の道を選んだので。そんな感じでしたね。

堀江

その人が社長になることで、何か組織的な軋轢とかあんまり起こらなかったですか?

大山氏:いや、さざ波が立ちましたよ。ただ、そこはもう説明はしきったつもりですし。でもそんな別に素子が壊れるような選択にはならないというかね。でも、それはもう誰になってもさざ波はあったと思います。

小野氏:例えば大山さんみたいな人が、次のまた社長になる場合と、プロパーだった人の中で社長になるパターンでどっちが落ち着くと思いますか?人次第なんでしょうけど、どちらがいいですかね。下から上がるか、上からくるのと。

大山氏:僕の一回の経験だと、僕が来た意味っていうのがやっぱりオーナー依存じゃなくて会社が自立できるってことで、次にプロパーから出すっていう、ある意味そこセットみたいなね。時間軸はあれですけども。だからそういう意味では良かったなっていう気はします。

小野氏:自分が退くことで、最後はこの中から誰かになれるんだよっていう。

大山氏:あとは結局、僕が社長じゃなくて、この人が社長になった方が会社が発展しますよっていうロジックがちゃんと腹落ちして説明したり、みんなに納得してもらえるのであれば、究極誰でもいいと思うんですよ。例えばCSSだったら僕は180人までやりましたけど、後から2000人にするっていう目標を立てた時に2000人にするプロ経営者みたいな人がいたら、その人にお願いした方がいいよねってなれば、そういう人がいいですねってことになるでしょうしっていう。そこから逆算していく方が、もしかしたら説明つきやすいのかもしれないですね。そんな気がしました。

小野氏:ありがとうございます。

大山氏:本当、小野さん、堀江さんありがとうございました。

堀江

ありがとうございます。またお願いします。

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