YHCキャリア相談室 PEファンド編 2021年更新版「PEファンド業界へのキャリアを手に入れる」【イベントアーカイブ】

※こちらは2020年6月21日に行われたイベント内容を2021年4月現在にアップデートしたアーカイブ記事です。

日本で最も投資実行件数の多いファンドマネージャーである元ACA、現マラトンキャピタルパートナー及び日本プロ経営者協会の代表理事を務めるの小野俊法氏を迎えて、ファンド勤務・創業及び業務・経営秘話、そして35件以上のバイアウト型企業投資実行の実情に迫ります。

これまで実質的には役17年で3社のファンドを経験(1社は海外で立ち上げしEXIT)された経験をもとに、PEファンド業界におけるファンド選びについて、そもそもどんな人がファンドマネージャーに向いているか、業界への切符を手に入れる方法など、他では聞けない内容に踏み込んでおります。

こちらのウェビナーは2020年6月21日に開催された申込者限定配信ウェビナーですが、この度内容をリニューアルし、一般公開いたします!

PEファンドへのキャリアを目指される方は、ぜひご一読ください。

目次

マラトンキャピタルパートナーズ株式会社 ご紹介

チームメンバーの合計の現場の投資経験数が60社以上という、国内スモールキャップ(営業利益で4億以下、売上50億以下程度の中小企業)業界では郡を抜いてNo1の投資経験数、投資経歴年数を持つ業界エキスパートのメンバーが設立した、他ファンドには無い強みを持つ中小企業との資本提携・M&Aに特化した独立系投資会社。

『マラトン』はマラソンが語源であり、マラトンの戦いで少数の軍が考え抜かれた奇策で大群のペルシャ軍に大勝利を収めたギリシャ軍の様に、徹底的に分析し、考え抜かれた戦略を愚直に実行に移すことで小さな力で非常に大きな結果を得る事ができる事を体験、その構造を理解するところから社名に取り入れています。また、一見根性勝負に思われるものの、実際には分析と戦略(モチベーション維持も含む)によって、たとえ凡人でも数万人の中でトップになれるマラソン競技と同様に、企業経営においても企業や企業を取り巻く業界を分析し、適切な戦略を徹底的に実行し、繰り返すことで中小企業を国内トップの繁栄に導きます。

登壇者

小野俊法氏
マラトンキャピタルパートナーズ(株) 代表取締役 共同パートナー

一兆円以上を運用するファンド運用会社にて約400億円程度の運用を担い独立、海外にてファンドマネジメント等を行う会社を設立(後に売却)。その後M&Aアドバイザリー業務経験を経て現職の出自となるバイアウトファンドであるACAに入社。過去の自身の投資も含め、中小企業のバイアウト投資を過去40件近く実行した経験を有し、現場経験を持つ個人におけるバイアウト投資としては日本でトップの経験数を誇る。投資の現場経験やM&Aアドバイザー経営者との関わりの中で、プロ経営者を輩出する仕組みの必要性を感じ、一般社団法人日本プロ経営者協会を設立、代表理事を務める。

登壇者紹介、業界随一の実績について

YHC堀江

本日は「PEファンド業界へのキャリアを手に入れる」ということで、マラトンキャピタルパートナーズ代表取締役・小野俊法さんにお越しいただきました。なかなか表に出てくることのないファンド業界の実情に迫っていきたいと思います。

小野さん、よろしくお願いいたします。

小野氏:よろしくお願いします。

YHC堀江

まず、今までの経歴とご実績をお聞かせください。

小野氏:もともと投資に興味があり、新卒で「ダヴィンチアドバイザーズ」という、当時飛ぶ鳥を落とす勢いで拡大していた不動産ファンドに入社し、数年間、都心のオフィスビルのアセットマネジメント業務に携わりました。「ダヴィンチアドバイザーズ」を選んだのは、巨大な投資ができる一方、比較的小規模なチームで、大きな裁量を持って仕事ができる点に魅力を感じたからです。その後、海外で起業しようと一念発起して、ファンドレイズが得意な人と一緒に、バングラデシュで不動産ファンドを設立すると同時に、スモールキャップの事業投資をスタートさせました。その際に創業した2社は後日シンガポールの超大企業に売却しています。

2008年に帰国し、今度はPEファンドのキャリアを目指そうと、会計BIG4系のFASを経て、ACA株式会社に入社。ACAから独立した日本グロース・キャピタル株式会社で約11年、日本の中小企業への事業投資に携わってきました。この間の投資件数は、個人資金でおこなったものも含めて、約40件に上ります。公式統計はないのであくまで自称ではありますが、個人としては国内ナンバーワンの投資件数と高いリターンの実績を持つ、スモールキャップ業界No1のファンドマネージャーだと自負しています。もし、もっと経験数と高いリターンを得た事がある方がいらっしゃれば、ぜひ対談させていただきたいです。

YHC堀江

主戦場はスモールキャップということでよろしいですか。

小野氏:そうですね。スモールキャップ、あるいは、私自身はマイクロキャップと呼んでいますが、買収価格で2億円に満たないような会社のM&Aを手掛けることもあります。

YHC堀江

これまでの実績について聞かせてください。IRRはどの程度でしょうか。

小野氏:過去ファンドでやった案件に関しては守秘義務の関係で詳しい事は言えませんが、世界でもIRRベースではトップクラスとしか言えません。
個人に関しては、グロスでみたらIRR100%とかを普通に超えています。一応投資の。負けは一件もありません。

YHC堀江

すごいですね。業界平均でいうと20%程度ですか?

小野氏:グロスの平均に関する統計はありませんが、ネットの中央値は日本の大きいファンドも入れて5-15%くらい、平均で10-1%程度ではないでしょうか。

コロナ禍以降のファンド業界の実情

YHC堀江

コロナ禍以降のファンド業界の実情に、皆さん、大きな関心をお持ちだと思います。小野さんご自身はどのように見ていらっしゃいますか。

小野氏:ファンドによってかなり違うと思いますね。私が以前所属していたファンドを例にとると、コロナ禍以前に投資してまだ売却していなかった案件が約15件程度ありましたが、そのうちマイナスの影響が出ているのは4、5件。一方で、ポジティブな影響が出ている案件が1、2件あります。残りの10社弱はそれほど大きな影響を受けているわけではないという状況でした。
ただ、現在のような状態が1年以上続いたら、より多くの案件にマイナスの影響が出てくると思います。一方で外食やBtoCでも旅行や店舗系が好きなファンドさんは大打撃を受けていると聞いています。

YHC堀江

各ファンドのポートフォリオによって差が大きそうですね。

小野氏:そうですね。小売や飲食、フィットネスなど、人と人が対面で関わる事業を展開している会社に関わっているファンドはかなり厳しいと思います。私が所属していたファンドの場合、BtoBや工事会社など、ある意味で“地味”な案件を手掛けることが多いので、コロナ禍の影響をそれほど受けていなかったです。

YHC堀江

ファンドの新規投資意欲という点に関しては、どのような印象をお持ちでしょうか。

小野氏:コロナ禍以前とほとんど変わらず新規投資を行なっているファンド、しばらく新規投資をストップすることを決めたファンド、コロナ禍をチャンスとして捉え、新規投資を積極的に進めているファンドが、それぞれ1:2:1程度という印象です。大打撃を受けているファンドはその対応に追われて投資はしづらくなっているのではないでしょうか。

YHC堀江

ファンド業界全体としては、どうにもならないという状況ではないということですね。

小野氏:ええ。コロナ禍以前に投資した会社がプラスよりもマイナスの影響を受けるケースが多いので、全体としては苦しいファンドの方が多いでしょうが、コロナ禍が前提条件の現状での新規投資に関しては必ずしも弱気になる必要はないと思っています。

YHC堀江

LPさんの動きに関しては、何か変化を感じますか。

小野氏:これに関しては私も今ファンドレイズを進めていますが、それほど悪い状況ではない様に感じます。政府関係の金融機関やメガバンクさん等もコロナ対策のお金が新規で出てきている為、予算を消化するのに積極的な動きを感じています。その一方で、地銀さん等で既存ファンドさんへの出資で痛手を被った金融機関はやや慎重になっている先もある様に思います。

コロナ禍以降、ファンドの採用意欲はどのように変化したか

YHC堀江

コロナショック以前は中堅・中小企業の事業売却案件の増加、LP投資家の投資意欲拡大により、PEファンドの絶対数が急増し、それに合わせて採用枠も拡大しました。そのため、ここ数年はファンド業界への転職難易度はやや下がっておりました。しかし、2020年3、4月はコロナショックにより各ファンドとも採用を一旦停止され、我々も先が読めないなと感じておりました。しかし、2020年5月以降は、金融システムに対する大きなダメージがないことを好感し、採用を再開するファンドが出てきました。コロナ前と比べると採用ハードルはやや上がったものの、コロナ以降ファンドレイズをされたPEファンドさんも複数あり、メンバーを追加したいというご要望もいただいていますので、リーマンショックと比べると状況は悪くないと思っています。小野さんは採用面で何か感じることはありますか。

小野氏:おおむね堀江さんの仰る通りだと思います。私が所属していたファンドはファンドの拡大期にありますので継続的に採用を拡大していましたし、私の会社も立ち上がったばかりですが、ファンドレイズに明るい兆しも見えてきたので秋頃からは採用をしたいと思っています。私どもの場合、コロナ禍をチャンスとして捉えているところもあるので、今後、採用の機会も増えてくると思います。

Q&A

コロナ禍以降のPMI、投資先のバリューアップについて

YHC堀江

ここからはQ&Aタイムに入ります。まず、PMIに関して、コロナ禍の影響を受けて特に苦労されているポイントはありますか。

小野氏:前職のファンドではコロナ禍によってダメージを被った投資先も少なからず存在するということに加え、2020年3月、4月頃は、投資先に直接足を運ぶことができませんでした。私たちの主な投資先である中小企業の中には、オンライン会議ツールを使おうというマインドが乏しい会社が多かった為、対面での打ち合わせが当たり前という空気がありました。この点は、PMIを進める上で苦労しましたね。
ただ、2020年の夏くらいからはむしろ東京から地方に来てくれるなという状況になりましてズーム等での会議が一般化しております。会えないので少し誤解が増えた時期もありましたが、それもある程度克服できる状況になったかと思います。

YHC堀江

なるほど。VCの皆さんはZOOMで投資先とガンガン面談してますが、中小企業向けのファンドさんはそうでもない時期があったのですね。

小野氏:ええ。トップ面談をオンラインで行ったこともありますが、新しいツールを柔軟に受け入れてくれる企業ばかりではありません。また、VCの一部の資金調達と異なり、最初のトップ面談は結婚前のお見合いみたいなものですので、社長にとっての重要度がVCさんの面談とは比較になりません。そういった意味では、オンラインで判断し難い部分も多いにあります。
私どもの場合は事業承継系の案件が全案件の8割を占めており、特に最初のMTGだけはネットを使いたがらない投資先も少なくありません。「直接会えないのならば、リスケしましょう。」ということで、投資できなくなったケースもありました。

YHC堀江

業界知見が浅い分野の案件に投資する場合、投資先のバリューアップはどのようにして行うのでしょうか。

小野氏:業界に詳しい人材がファンド内にいなくても、フリーランスのプロ経営者やコンサルタントを活用すれば事足りますので、全く問題ありません。そもそも、良い条件の案件を買うことができれば、バリューアップにそこまで力を入れなくとも利益を出すことができますしね。

YHC堀江

上手に買うこととバリューアップのバランスについて、ファンドごとに力の入れ方は異なるのでしょうか。

小野氏:かなり違います。M&AセンターさんのM&AとゴールドマンサックスのM&Aを比較するに値するほど異なります。例えば、ミッドキャップは、いかにしてバリューを上げるところに注力します。無論、投資フェーズでも必死に取り組んでいるのかもしれませんが、買収価格が安いか高いかということよりも、バリューを上げられそうな案件かどうかに注目するんですね。なぜかというと、ミッドキャップは競合が非常に多い一方で、案件数はそれほどない。したがって、投資後にフォーカスしなければ、全然投資できなくなってしまうのです。ある程度の価格で買って、ほかのファンドよりもいかにうまくバリューを上げられるかというところに力を注ぐわけですね。

一方、スモールキャップの場合、一件あたりのリターンの絶対額が少ないこともあり、このマーケットを進んで手掛けようというプレーヤーはそこまで多くはありません。プレーヤーが少ないので上手に投資ができるファンドであれば割安の案件に投資するチャンスもあるので、投資後のことをそこまで考えなくとも勝負できるんです。言い換えれば、やり方次第で非常に魅力ある業界だということです。ミッドキャップと同じような仕事の仕方をするならば一人で1、2件しか手掛けられませんが、メリハリをつけて、効率性を追求することで、一人で4-5件とより多くの案件を回すこともできます。

ファンド業界で求められるスキルとは

YHC堀江

ファンド業界で活躍するために求められるハードスキル、ソフトスキルについて聞かせてください。
ファンドの一般的な採用用件として、オーナーとの折衝能力や投資検討の際の財務モデル、投資した後のハンズオンのコンサルティングのスキル等が考えられますが、現場の視点から何か感じることはありますか。

小野氏:この業界で活躍するためには、気の利いたスライドをつくるコンサル的なスキル、間違った投資をしないためのファイナンスの知識も欠かせません。しかし、スモールキャップに関していえば、入社1年目から直接オーナーと交渉することも少なくないので、オーナーを怒らせずにやり切る力など、“ソフトスキル”が重要です。

YHC堀江

ソフトスキルの中でも、どのような部分で差がつくのでしょうか。

小野氏:例えば、仲介さんやFAさんとうまく付き合う能力、オーナーさんを怒らす事なく言うべきことは言えるというスキルですね。私どもの場合、私が起業してプロ経営者協会からの直接の案件ルートが出るまでは、オーナーさんに直接手紙を出して口説きに行くということは多くなく、M&A仲介さんやFAさんに紹介いただくケースが圧倒的に多かったので、“紹介したくなるファンド”になるということがとても大切です。
単純な話、「あいつは気に食わない」と思われてしまったら、提案をもらえなくなってしまいます。だからと言って媚を売る様な態度で案件をもらおうとする人は、あいつはファンドとして使えない、頼りにならない人間でだから良い案件を紹介したくない、と思われてしまうと、仲介さんにとって困った案件を押し付ける相手のように扱われてしまいます。
これは企業のオーナー社長さんとの関係にも言えることで、どちらかが上でどちらかが下、の様な主従関係になってしまうとファンドとしては上手くいきません。一番良い関係はお互いにお互いを頼りになるパートナーとして位置付ける関係で、その時は本当に投資が上手くいく状況になっています。

ファンド業界の報酬の仕組み

YHC堀江

ファンド業界の年収、すなわち給与制度やイグジットボーナスの考え方についてご質問をいただいています。
一般的には、①「固定給+賞与+イグジットボーナス」、②「固定給+イグジットボーナス」、③「固定給+賞与」の3種類に分けられると思うのですが、如何でしょうか。

小野氏:合っていると思います。イメージとしては、大規模なファンドであればあるほど、固定給が高くなります、ただ日系であれば大き目のファンドでもそれほど多くの固定給(キャリーを除く賞与含む)をもらっている人はほとんど存在しないという印象です。一方で、ミッドキャップ等では激戦で高いリターンが出ないのでキャリーも限定的な印象です。
知人の中でも外資系の方のベースは比較的高いと思います。従って、安定高給サラリーマンを目指したいのであれば、外資系をはじめとして有名なファンドに入るのがおすすめです。一方、自分の腕一本で稼げるようになりたいという志向をお持ちの方には、スモールキャップファンドの中でキャリーの割合が高いファンドが向いていると思います。手前味噌ですが、当社は日本における全ファンドの中でもメンバーの方々のキャリーの割合は断トツです。投資リターン(IRRやROI)は世界のPEファンドでもトップ1-2%に入る水準だと思いますので、恐らくミッドキャップの企業よりは総合的に高い報酬になると思います。

YHC堀江

大規模なファンドに比べると、スモールキャップは固定給が下がる一方で、早く案件に携わることができて、イグジットボーナスをきちんと払ってくれるファンドが多い印象です。

小野氏:そうですね。外資系をはじめとする大規模なファンドの場合、創業者や代表、パートナーなど上層部にキャリーボーナスが入って、その下の職位のメンバーは限定的だったり、ほとんどなしというケースが少なくないと思います。一方、小規模なファンドでは、重要な意思決定は上層部がするものの、簡単な投資判断は現場で手を動かしているメンバー自ら行うことが多いです。にもかかわらず、キャリーボーナスが入ってこないとなると、インセンティブの釣り合いが取れませんから、VP以下のメンバーにもキャリーボーナスが支払われるケースが多いということですね。

YHC堀江

PEファンドの収益モデルを簡単に言うと、投資家から預かった資金を増やし、増えた資金の20%ほどを収益として頂戴する。そして、その20%の一定割合をGPに残し、さらにその残りを役職員で分けるというのが一般的です。その分け方がファンドによって異なると。

小野氏:そこはファンドによってさまざまですね。一般論としては、VP⇒MD⇒パートナーと職位が上がるにしたがって、キャリーも倍々に増えていくイメージではないでしょうか。一方、ベースの固定給は職位が上がるたびに15〜30%増えるイメージです。

ファンドが求める人材像

YHC堀江

採用に関して聞かせてください。PEファンドの面接官は志望者のどこをみているのでしょうか。

小野氏:スモールキャップ(弊社や前職等)とミッドキャップの小さめのファンドに関してお伝えします。どちらかというと、学歴やスキルは最低限必要として、その人に生き生きと、幸せに働いてもらえるかどうか、投資オーナーや仲介さん、FAさんとの相性を重視しています。
「アメリカのベイエリアに行ってガンガンやりたい」「起業して一発当てるぞ!」という方はあまりフィットしないので、いかに優れたハードスキルを持ち合わせていても採らないと思います。むしろ「中小規模の会社だし、山奥に出張しなければいけないことがあっても、オーナー企業のオーナーと直接やりとりできて、泥臭さをむしろ楽しみながらやります」という雰囲気の方を積極的に採用しますね。

YHC堀江

スモールキャップ、ミッドキャップのファンドの多くは、そうした人間力に近い部分を大事にしますよね。

小野氏:ええ。ハードスキルに物足りないところがあったとしても、泥臭い仕事でも楽しみながら取り組むことができる人を採用するケースはありますよ。事業投資の過程では、オーナーさんから面倒臭いことを言われたり、ゴマを擦らなくてはいけなかったりすることもありますが、そういうところでイライラするような人、自分の考えに拘泥して面倒な事態を起こしてしまいそうな人は、この仕事には向いてないと思います。

YHC堀江

続いて、外資系投資銀行にお勤めの方からの質問です。財務モデリングができてファイナンスの知見があれば未経験でもジョインできるのでしょうか。

小野氏:外資系の投資銀行にお勤めであれば、ファイナンスのスキルは高いレベルにあると思います。そうしたスキルを必要としているファンドであれば、可能性は十分あります。実際、私がFASからファンドへの転職活動をしていたときも、当社よりも大規模な投資をしている外資系ファンドの会社から内定をもらえましたしね。

YHC堀江

M&Aのエグゼキューション経験があれば、一旦書類選考は通してくれるファンドが多いですね。

小野氏:タイミングさえ合えば、書類は通ると思います。ただ、同じようなスキルを持っている人がたくさん応募しますので、特に小さいファンドになればなるほどキャラクターや人間力、やる気の勝負になるかもしれませんね。

YHC堀江

続いては、BIG4系の総合系ファームの方からの「ファンド業界に興味はあるが関連したキャリアを積むことができていない。どのように道筋をつければいいか悩んでいる。」というご相談なのですが、これについては私から回答させていただこうと思います。

ファンド業界の採用ターゲットは、①M&Aのエグゼキューション能力の高い方系、②ビジネスDD能力の高い方がメインです。ファンド業界に入るためには、これらいずれかからキャリアを寄せていく必要があります。例えば、戦略コンサルをされている方であれば、そのまま受けることのできる会社がたくさんありますが、業務コンサルやITコンサルの方は、まずはFASに転職し、M&Aのエグゼキューションを学んでからファンドへの転職を図る。あるいは、戦略コンサルに転職した上で、ファンドを目指す。もしくは、Big4のFASのM&A戦略をやっているチームに入って、M&A戦略の経験を重ねつつ、エグゼキューションのプロセスにも触れた後でファンドへの転職を目指した方がよろしいかと思います。

FASやコンサルからの転職者の強み

YHC堀江

FASからファンドに転職する人で、活躍する人とできない人の差はどこにあるのでしょうか。

小野氏:FASにいらっしゃれば最低限のハードスキルを兼ね備えていると思います。できればビジネスDDの部隊、M&Aエクセキューションの部隊の両方経験できれば一番良いです。
大前提として、ファンドの規模を分けて考えた方がいいですね。大規模なファンドの場合、5〜10年間で会社全体として投資するのは4、5件程度の場合が多いので、活躍できるか否かは、運によるところも大きいと思います。一方、スモールキャップでは10年間で30件近い案件を手掛けます。したがって自然に案件はこなせますので、後は案件をやり切る能力、10件に2~3件は修羅場が出てきますのでそれをいかにクリアするか、逆に10件に2~3件は大きなチャンスに巡り会いますのでそのチャンスを逃す事なく3~4倍のROIを出しせるか、という様に実力がモノを言うんですね。

重要なのは、人間力などの“ソフトスキル”とアイディアを実行に移す行動力がすごく重要です。同じ会社でも高く売るスキルというのは明確にあります。その他、部下や後輩から尊敬され、信頼される力です。部下や後輩に積極的に仕事を任せながらも、いざというときには自分で責任を取る、または自分で全部やらなくても良い案件ではホームランを部下に打たせる事ができる人であれば、ファンド業界でも中長期的に活躍できるのではないでしょうか。

YHC堀江

コンサル出身者がPEファンドで働いているケースがあると思いますが、コンサル経験者に求めるスキルや経験はどんなものですか。

小野氏:コンサルの経験のある人と、ない人で最も大きな差がつくのは、資料作成の部分でしょうね。投資のフェーズで、ジュニアレベルの人が気の利いた、わかりやすいパワーポイントを速く作ることができれば、大きなバリューになると思います。
逆に戦略の部分では、よく考える人であればコンサルの経験が無くても、きちんと勉強してさえいれば同レベルのことは難なくできている印象です。グロービスのMBA本をちゃんと自分事として読んでおいて、後は現場で身につける程度だと思います。

ファンドレイズに必要なもの

YHC堀江

ファンドを立ち上げたいという方からご質問をいただいています。ファンドを立ち上げるために求められるのは何でしょうか。

小野氏:どこかの金融機関や事業会社、ファンドやコンサルがメインの出資者になるような、大きな組織を背景にファンド立ち上げる場合は別ですが。仮に個人でファンドを立ち上げたいと思うのであれば、必要なのは、優れたトラックレコードを持っている人と、お金を集められる人、その両方が必要です。過去にその強みが無い、または片方だけできちんとしたファンドレイズに成功した完全独立系のファンドはほぼ存在しないのではないでしょうか。ファンドを個人の力で立ち上げたいのであれば、少なくともどちらか一方の能力を、業界で5本の指に入ると思われる位の高いレベルで持ち合わせていなくてはなりません。それが前提で、もう一つの強みを持つ人と組んで全てを捨てる覚悟でファンドレイズをすれば、それでも険しい道のりではありますが成功確率はそれなりにあると思います。
トラックレコードに関していえば、「組織とは関係なく個人で案件をバシバシ持ってくることが出来る」「かなり大変な案件でもリターンをあげることができる」「過去20~30件投資のトラックレコードがあり、その案件ごとのIRRの平均は30~50%を優に超えている」といった力。お金を集める能力に関してはいえば、「総資産100億〜200億円のお金持ち十数人とのネットワークや金融機関のファンド出資担当20名以上との関係を築きあげている」または「証券リテール出身で金融資産5億以上の方々で自分の事を認識している方が100名以上は居てアポに応えてくれる」といった力が必要です。

YHC堀江

1号ファンドで機関投資家から資金を集めようとするのであれば、相当なトラックレコードがないと厳しいですよね。

小野氏:今ファンドを作ろうとしている会社や個人が多いので、トラックレコードのハードルは上がっていると思います。また、トラックレコードは大前提ですが、それがチームあっての成果なのか、個人の成果なのかということについても、かなり厳しくチェックされると思います。自分がそのチームに入った後にリターンがよくなったとかの実績があると良いのではないでしょうか。もともと良いリターンのチームで同じ様なリターンをあげたという話であれば単にチームの一員としてやっていただけじゃないですか?と僕なら聞きたくなってしまいます。

個人的には何とかファンドを立ち上げるルートとしては、1号ファンドでは自らつくりあげたネットワークやファンドレイズのパートナーの協力も得て最低減20〜30億円の資金を集め、案件をいくつか手掛けてトラックレコードつくる。2号ファンドは1号のトラックレコードがレバレッジに使えるので規模を大きくし、金融機関も過去のネットワークにおいて自分の成功を知っている人から2~3社入れてもらい、40〜60億円の資金を集め、きちんとしたトラックレコードをつくる。そうすると3号ファンドくらいから普通の保守的な金融機関にも入ってもらえるようになり、100億円規模のファンドの組成も可能になるはずです。このように小さな成功を積み重ねていくことが大切なんですね。なんにせよ、最後は退路を断てない人には投資家はついてきませんから、覚悟を決めて勝負できるかどうかでしょうね。

YHC堀江

本日はこのあたりで締めさせていただきたいと思います。小野さん、視聴者の皆さま、ありがとうございました。

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