「地域特化型M&Aを語りつくせ! 本音トークセッションin西日本」【イベントアーカイブ】

※2020年11月7日に行われたイベントのアーカイブ記事です。

業界初?!
地域特化型M&A支援会社3社長が集結!!

西日本における各地域を代表する3社、

*名南 M&A 株式会社(名古屋 大阪)
*クレジオ・パートナーズ 株式会社( 中国・四国地域 )
*株式会社フォルテワン (九州 )

が揃い踏みし、非東京エリアの M&A業界について赤裸々に語り尽くします。

将来地元への U ターンをお考えの M&A 経験者の情報収集 に、
地域金融機関や会計事務所にお勤めの方のネクストキャリアのご参考 に、
”非東京エリアにて M&A アドバイザーとして働く” というキャリアの選択肢について、ご興味をもっていただけたら幸いです。

ダイジェスト動画(音声あり)

※後日公開

登壇企業 ご紹介

名南M&A株式会社

企業HP:https://www.meinan-ma.com/

2001年の事業開始以来、東海・近畿エリアを中心に数多くの中堅・中小企業のM&Aを行う。年間40社以上の成約実績があり、東海エリアでトップクラス。
50余年の歴史ある名南コンサルティングネットワークを形作る1社であり、M&A仲介業務を専門に行う。グループ会社には税理士・公認会計士・社会保険労務士・弁護士・中小企業診断士など様々な資格者が在籍する専門的な法人があり、関係法人と連携してソリューションを提供する。
全ての地方銀行・第二地方銀行および有力な信用金庫と提携関係を結ぶことによって、東海地方のM&A情報が集中する仕組みを構築している。

クレジオ・パートナーズ株式会社

企業HP:https://cregio.jp/

M&A・事業承継のアドバイザリーサービスを提供する専門コンサルティング会社。広島を中心に中国・四国地域に地盤を置き、地域の経営者・金融機関・士業等の様々なステークホルダーとネットワークを築く。
創業から2年間のコンサルティング実績は60件、クライアントからの新規相談は年間300件を超える。様々なM&Aを実現するため、譲受先候補として東京・大阪・広島・福岡等の上場・非上場のM&Aを事業戦略として活用するクライアントと幅広いネットワークを有しており、質の高いM&Aアドバイザリーを提案する。

株式会社フォルテワン

企業HP:https://forte-one.com/

平成27年、税理士法人アップパートナーズのグループ会社として設立された、福岡・佐賀・長崎を拠点として活動するM&A仲介・アドバイザリーファーム。
九州最大の税理士法人と社会保険労務士法人が母体となるグループ内企業であるため、地場の金融機関との提携や幅広いネットワーク力を駆使したマッチングを提案する。

イントロダクション、登壇者紹介

YHC

本日は、「地域特化型M&Aを語りつくせ!本音トークセッションin西日本」にご参加いただきましてありがとうございます。モデレーターを務めさせていただきます、ヤマトヒューマンキャピタルの湊と申します。
登壇者をご紹介いたします。岐阜から名南M&A株式会社の代表取締役篠田康人さん。広島からクレジオ・パートナーズ株式会社代表取締役の李志翔さん。福岡から株式会社フォルテワンの代表取締役古舘慎一郎さんです。
では最初に、皆様の自己紹介をよろしくお願いいたします。

篠田氏:名南M&A株式会社 代表取締役の篠田と申します。当社は地域密着のM&A仲介会社です。案件の99%は東海3県および静岡県の会社のM&Aで、主に事業承継の案件を手掛けています。社員は45名で、年間の成約件数は約60件。売上は2016年・17年頃の2〜3億円から、18年は4億円、19年は8億円、2020年には12億円と、この数年間で4倍〜5倍に増加しています。
この業界に足を踏み入れて20年になりますが、この間、M&Aを取り巻く環境は大きく変わりました。ヤマトヒューマンキャピタルさんのようにM&Aの専門人材を紹介する会社が出てきたこともその一例ですが、当社は2019年12月に名証セントレックスに株式を公開させていただきました。われわれのような地方に拠点を置くM&A仲介会社が上場できるところまで、M&Aが浸透してきたことには隔世の感がありますね。本日はよろしくお願いします。

:クレジオ・パートナーズ株式会社 代表取締役の李と申します。前職は東京の山田コンサルティンググループ株式会社で約15年間、M&Aや事業承継に携わっていたのですが、広島、岡山、高松と中四国地方で育ったこともあり、ゆくゆくは地元に戻って地域の企業のお役に立ちたいという想いを持っていました。そこで、2018年に当社を起業しました。広島に本社を構え、中四国の地域企業のM&A・事業承継にフォーカスしたコンサルティング活動を展開しています。当社の特徴は、M&A仲介のみならず、親族内承継、グループ再編のアドバイスを行なっている点にあります。この2年間のコンサルティング実績は約60件。そのうち半分はM&A関連、残りの半分は主に親族内承継を中心とする事業承継のコンサルティングです。このほか、上場企業の依頼を受けてFAやデューデリジェンス、バリュエーションのコンサルティングも手掛けています。よろしくお願いします。

古舘氏:株式会社フォルテワン 代表取締役の古舘慎一郎と申します。私は公認会計士を取得した後に、監査法人のトーマツに入社しました。M&Aに携わりたいと思い、IPOやM&Aを担当する部署に入ったのですが、入社直後にリーマンショックが発生したためM&Aにはほとんど関与できませんでした。そこで、監査法人を早々にリタイアし、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に出向。約2年間、戦略系のコンサルティングやデューデリジェンスなどを手掛けた後、2014年に縁あって、北部九州(福岡・佐賀・長崎)を拠点とする税理士法人「アップパートナーズ」に入社しました。翌2015年に「M&A部隊を立ち上げ、そちらに専念しろ」との命を受け、当社を起業。事業内容としてはM&A仲介がメインですが、財務デューデリジェンスやバリュエーションを手掛けることもあります。ちなみに、アップパートナーズグループの社員330名のうち、当社に在籍し、M&A専業で仕事をしているのは5名。直近では再生系のコンサルティングの依頼も増えてきており、前職での経験を活かしながら対応しています。よろしくお願いします。

各特化地域のM&A市況、トレンド

東海地方のM&Aマーケット

YHC

ここからは「ぶっちゃけパネルトーク」と題しまして、各特化地域のM&A市況やトレンド、非東京エリアのM&Aマーケットの魅力と可能性、そして課題といったテーマで、ご意見を賜りたいと思います。まずは篠田さんに、東海エリアのM&A市況やトレンドについてお話を伺えますでしょうか。

篠田氏:ご存知の通り、東海地方はトヨタ自動車のお膝元です。こうした事情もあって、全案件の3〜4割は製造業。トヨタの下請けの部品加工メーカーからM&Aや事業承継のご相談をいただくことも少なくありません。私どものエリアのM&Aの特徴として挙げられるのは、同じ東海地方のメーカーによる「地域内マッチング」がほとんどだということ。そして、「同業種買収」よりも「近接業種買収」が多いということです。例えば、金属加工メーカーがプラスチック加工メーカーを買収する、あるいは、同じ金属加工メーカーのなかでも、切削を得意とする会社がプレス加工を得意とする会社を買収するといった具合に、加工技術を獲得するために近接する業種の会社を買収するケースが少なくないのです。
その一方で、事業承継に関するご相談が、この数年来、伸び続けていることもあり、M&Aに対する抵抗感は確実に低くなっていると思います。

YHC

名南M&Aさんは、2019年4月に大阪事務所を立ち上げましたね。

篠田氏:大阪も東海地域と同様に、ものづくりが盛んなエリアです。パナソニックやシャープなど家電メーカーの下請け企業を含めて、東大阪や堺には数多くの製造業者が集積しています。大阪事務所を解説して1年半になりますが、大阪の売り案件を名古屋の会社が買収するケースも少しずつ出てきています。

YHC

以前、篠田さんから「大阪ではM&Aがもっと活発に行われてもいいはず」というお話を伺ったことがあります。大きなポテンシャルを秘めているにもかかわらず、M&Aがなかなか浸透しないのはなぜでしょうか。

篠田氏:地元のM&Aプレーヤーが少ない。これに尽きると思います。M&Aプレーヤーは東京に集中しており、彼らが地方に”草刈り”に行っている感じですからね。ただ、大阪のM&Aマーケットは名古屋の3倍くらいの規模感があります。誤解を恐れずにいえば、まだまだ掘れる。個人的には大阪事務所を分社化してもいいかなと思っているくらいです。

中四国地方のM&Aマーケット

YHC

ありがとうございます。お次は李さん、中四国のM&Aマーケットの現況、トレンドについて聞かせてください。

李氏:中国地方と四国地方を分けて考える必要があります。まず、中国地方について申し上げますと、事業承継問題が非常に深刻です。日本全体の後継者不在率は平均65%と言われますが、中国地方は70%。北海道に次いで高い数値です。しかも、中国地方5県のうち岡山県以外の4県、すなわち広島県及び山口県、島根県、鳥取県の各県は、後継者不在率が高い都道府県の上位2位〜7位に入っているんです。

篠田氏:広島が上位にランクインするというのは意外ですね。その要因についてはどのように考えていらっしゃいますか。

李氏:あくまで仮説ではありますが、教育熱心な地域だという点が指摘されています。広島で事業を営む経営者の中には、子どもたちを私立の中学・高校に入れて、猛勉強の末、東京の有名大学に行かせたいという人が少なくありません。東京の大学を出た後は、そのまま東京に本社を置く大企業に就職し、地元には戻ってこないということが起こりやすい。こうした理由によって後継者不在率が高くなっているのではないかと言われています。

篠田氏:この点、名古屋は地元志向がとても強い地域です。実際、地元の高校・大学を出て、トヨタや県庁に入るという人が少なくありません。これは中国地方との大きな違いかもしれませんね。四国については如何でしょうか。

李氏:中国地方とは逆に、四国は後継者不在率が非常に低い地域です。四国の後継者不在率は54%と、全国でも突出して低いレベルです。単純に地元から出ていかない人が多いからとか、あるいは、地域市場が小さく、競争もそれほど激しくないからとか、さまざまな要因が考えられてはいるものの、特定できておりません。私にとっては七不思議の一つなのですが、いつか解明したいと思っています。

篠田氏:確かに四国の会社を買収したいという話はあまり聞きませんもんね。

李氏:そうですね。全国的に事業を展開しているキラリと光るメーカーを買収したいというニーズはありますが、地場密着のサービス業を買いたいというニーズは少ないです。

篠田氏:四国だけで完結してしまうケースが多いということでしょうか。

李氏:四国の売り手をどの地域の会社が買収しているのか。統計を取ってみると、同県内の買い手がいちばん多く全体の40%〜45%を占めています。その次に多いのが首都圏の買い手で30%くらいですね。

YHC

中四国地方におけるM&Aの潜在的ニーズについてはどのように見ていらっしゃいますか。

李氏:中四国地方には約20万社の企業が存在するのですが、その約半分に当たる10万社は60歳以上の経営者が運営しています。後継者不在率が65%と仮定すると、60歳以上の経営者で後継者のいない会社は6万5000社くらいになるとみていいでしょう。一方、中四国地方でもM&Aは増えてきてはいるものの、公表ベースでは年間約100件。公表されていないケースがこの3倍存在すると想定しても約400件といったところです。潜在的なニーズは極めて大きいものの、地元のプレーヤーが全く足りていないことがネックになっていると思います。

古舘氏:地域におけるM&Aのメインプレーヤーは銀行と考えてよいのでしょうか。

李氏:ええ。地銀さんはM&A、事業承継問題の解決に相当力を入れています。他の地域も同様ではないでしょうか。

九州地方のM&Aマーケット

YHC

ありがとうございます。古舘さん、九州地方は如何ですか。

古舘氏:私がM&Aの業務に関わり始めたのは6年前ですが、当時はM&Aに対する抵抗感がまだまだありました。ただ、先ほど篠田さんもおっしゃっていたように、M&Aの手法が一般的なものとなったことで、こうした抵抗感は随分低くなったという実感を持っています。そもそも事業承継は社長の年齢の問題ですから、新型コロナウイルスの感染拡大による業況の変化によって大きく左右されることはありません。したがって、コロナ禍以降、案件そのものが減っているという感覚もないですね。ただ、案件の内容に関しては少しずつ変わってきています。以前は90%以上が事業承継に関する案件で、再生系はちらほらという感じでしたが、最近は銀行からの借り入れが返せないといった相談が増えてきています。

篠田氏:御社は北部九州を拠点としていますね。南部の仕事はやらないのですか。

古舘氏:熊本の案件であれば新幹線でパッと行けるので手掛けることもありますが、鹿児島や宮崎の案件は知り合いの税理士さんにご紹介するケースが多いです。メンバー5人の会社ですので、そこまで手を伸ばすわけにもいきませんからね。

篠田氏:基本は福岡、佐賀、長崎ということですね。

古舘氏:そうですね。あとは熊本、山口とか。篠田さんや李さんもおっしゃっていたように、九州地域でもM&Aを専業で手掛けるプレイヤーがまだまだ少ない。M&A仲介大手の上場3社と地銀を除くと、数えるほどしかいない状況です。私どもが直近で進めている建設業の案件を例にとると、売り手には東京のアドバイザーが、買い手には私たちがつくといった具合に、九州以外のアドバイザーが動かしている案件が多いんです。

篠田氏:なるほど。地元のことは地元でやるべきでしょうね。名古屋の監査法人や税理士法人、金融機関とも話しているのですが、地元のことは地元でやらないと地域が発展しない。東京に吸い上げられてはダメだと思います。お互いに頑張りましょう。

古舘氏:ええ。M&A仲介大手の最低手数料をクリアするような、それなりに規模のある案件は、東京のアドバイザーが手掛ければいいと思うのですが、地方ではそこまでいかない小規模な案件が圧倒的に多い。こうした案件に関する情報は地域にいなければ獲得できませんし、地場で動かなければ成約に結びつけられません。その意味でも、M&Aのプレーヤーが絶対的に足りていないというのが正直なところです。

篠田氏:同感です。年商10億円以下、あるいは年商5億円以下でも、無借金で成長を続けるいい会社が地方にはたくさんあります。古舘さんがおっしゃったように、こうした小規模な会社に関する情報は、東京のM&A仲介会社には届きません。中小企業再編が進むなかで、キラリと光る地元の中小企業の統合に向けた流れが本格化すれば、われわれのようなプレイヤーの存在価値も一段と高まっていくと思います。

非東京エリアのM&Aマーケットの魅力と可能性

YHC

最近、自分の生まれ育った地域に貢献したいという若手ビジネスパーソンから相談をいただくことが増えてきています。こうした方たちに向けて、非東京エリアのM&Aマーケットの魅力と可能性について深掘りしていただければと思います。古舘さんからよろしくお願いします。

古舘氏:先ほども少しお話に出ましたが、小規模な企業のマッチングは地場を拠点に動いていなくては実現できないと思っています。買い手を見つけるときには調査会社などのリストを使うわけですが、そこから漏れてしまう会社がたくさんあるんです。私たちはこうした会社を地道に見つけていくわけですが、大手が提案できない会社にアプローチできる。これは地方ならではの大きな魅力といっていいと思います。

また、東京の会社と比べると社長さんとの距離感が近く、直接やりとりをすることができます。良い仕事ができれば、2回目、3回目と長いお付き合いになることもあります。これも地域に拠点を構えるM&A仲介会社ならではの魅力といっていいでしょう。
M&Aマーケットと直接関係があるわけではないですが、バリバリ仕事をしながら、プライベートも充実させることができるのは、Uターンして本当によかったと思う点ですね。電車の中吊りで佐賀県のアピール広告を見かけたのですが、「東京の家賃の3分の1で、広々としたマイホームが買える」とありました。これも地方の魅力ですよね。

篠田氏:日本で行われるM&Aの半分くらいは、東京を含めた関東地方でマッチングが行われているわけですが、地方のM&Aも確実に増えてきています。こうした背景のもと、当社にはUターン、Iターンでの入社を志望される方がいらっしゃいますよ。実際、東京でM&Aの経験を積んだ人材をこの数カ月で何人か採用しましたが、U・Iターンが選択肢の一つとして定着しているんですね。ただ、懸念があるとすれば給料ですね。東京の会社ほどはもらえないという。

YHC

でも、東京からの出張にかかる移動時間を考えると、その地域に住んでというのもありですよね。

篠田氏:今日は50数名の方に視聴いただいておりますが、地方でのM&Aプレイヤーに興味があれば是非前向きにご検討いただきたいですね。

YHC

名南M&Aさんに転職された方は、どのような理由でU・Iターンを志したのでしょうか。

篠田氏2人の社員をご紹介したいと思います。一人は名古屋の証券会社出身の社員です。彼は6年前、M&Aをやりたいということで地元で転職活動をしていたのですが、当時はM&Aマーケットも今ほど浸透しておらず、名古屋では仕事を見つけられなかった。そこで一旦、東京の会社に転職し、M&Aの経験を積んだんです。そして、そろそろ地元に戻りたいとなったときに、当社の求人を見て入社してくれました。もう一人は、もともと東京でM&Aの仕事をしていた男性です。奥さんが岐阜出身で、実家の近くで子育てがしたいということで、彼は名古屋で転職活動を行い、当社に入社したんですね。こうしたケースは少しずつ増えてくると思いますね。

YHC

先ほど古舘さんもおっしゃっていたことですが、M&Aへの関与を入り口にして、さまざまなコンサル提案もできる点も地方の特色かもしれませんね。

李氏そうですね。事業承継はもちろん、経営者のあらゆる悩み、課題に対応しています。例えば、お店を出すための土地を探しているという方がいれば一緒に探しますし、いい人材がいないという会社にはいい人を紹介したり、人材紹介会社のアドバイスをしたりこともありますよ。

篠田氏「うちはM&Aしかやってない」と言っていたら、地元でやる意味はほとんどなくなってしまうと思います。

李氏グループの税理士法人や社労士法人を紹介することも少なくありません。それから、M&Aでよくあるリクエストの一つに、会社を譲渡した後は、他の地域に移住したいので不動産の売却もサポートしてほしいという依頼があり、不動産会社を紹介することもあります。自分達が何屋か分からないくらい、業務が多岐に渡りますね。

篠田氏つなぐことで新たなビジネスが生まれる可能性があるということですね。

李氏ちなみに来月はマーケティングのセミナーを開催します。地域の中小企業のなかには、ウェブマーケティングをどのように活用すればいいかわからないという企業も少なくありませんので、ウェブマーケティングに強い会社と、ブランディングに強い会社の方に講師に来て頂きます。

篠田氏「うちはM&Aしかやってない」と言っていたら、地元でやる意味はほとんどなくなってしまうと思います。事業承継とは全く関係ないところでも徹底的にサポートされるわけですね。

李氏まさにお客さまの本業の課題解決のお手伝いですよね。

篠田氏そう、そこなんですよね。それこそまさしく地方でやっている魅力だと思います。社長との距離が極めて近いから、本物のコンサルティングができるんです。当社のメンバーにもよく言っているんです。「M&Aコンサルタントである前に、コンサルタントであるべし」「悩みを聞いたら、きちんと受け止めて解決してあげないといけないよ」って。

古舘逆にいうと、ドライになれないという側面もありますね。世界が狭いので、どんな悩みにもきちんと応えていないと会社の評判につながってしまう。

篠田氏「古舘さん冷たいわぁ」なんて言われちゃったら困ってしまいますもんね。

古舘僕は大丈夫ですけどね。

一同:あっはっは

李氏お客さまの安心感にも大いに関わる部分ですが、われわれは地域に永住する前提で仕事をしているので、いい加減な仕事は絶対にできません。「あなたたちは広島から逃げないから、安心して相談できる」といった具合に、私たちの姿勢に共感して相談に来られるお客さまも少なからずいらっしゃいます。買い手企業も、私たち仲介人に対する信頼がなければ買えないと思うのですが、大前提として地域に根ざしているので逃げない。より正確に言えば逃げられない。だから、いい加減な案件は紹介してくるはずがないだろうという信頼感。これがベースにありますよね。

篠田氏そうそう。地元の不動産屋さんみたいな感じですよね。地域に根を張って、いろいろな人とコミュニケーションを取りながらマッチングしているのにすごく似ている。

古舘僕ら3社とも会計系のファームが母体ということもあり、顧問のような立場を利用してアドバイスをすることも多いですし、売った後、買った後も引き続き関与します。こうした取り組みが信頼感のベースになっている部分はありますよね。

篠田氏それはありますね。

李氏かなり珍しいケースではありますが、M&A後に監査役で入っている会社もありますからね。非上場企業同士が経営統合してホールディングスをつくったのですが、そこの監査役に入っています。

篠田氏相当信頼されていないとあり得ない話でしょうね。

非東京エリアのM&Aマーケットの課題

地域密着型のM&Aプレイヤーの不足

YHC

次は「非東京エリアのM&Aマーケットの課題」について聞かせてください。李さん、いかがですか。

李氏最大の課題は、地域密着型のM&Aプレイヤーが不足していること。もう少し具体的に言えば、地域に寄り添う気持ち、地元の経営者に寄り添う気持ちを持ったM&Aプレイヤーが不足していることです。よく直面する課題ではあるのですが、どんどん業績を伸ばし、地域に活気を与えている若手経営者が会社を売りたいといったときに、ものすごいジレンマを感じます。当社にとっては、ありがたい話ですから売却をサポートするわけですが、地元人としてはすごく寂しい気持ちになるんですね。そこで、当社は「一社会社を売るお手伝いをしたら、一社起業するお手伝いをしよう」というスローガンを掲げています。実際、当社には地元のピッチコンテストの審査委員を務めているメンバーも在籍しており、彼らを中心にベンチャー・スタートアップ支援に向けた様々な取り組みを行なっています。
このように、単に仲介手数料を得て売上を上げるだけでなく、地域に対する“想い”をもって事業承継に携わることのできるプレイヤーをいかに増やすか。さらには、私たちのようなM&A専業会社のみならず、地域の士業が当たり前のようにM&Aに関わることのできる環境をいかにつくるか。地域経済を維持し、成長させていくためには、このような“想い”をもったプレイヤーを増やす努力が欠かせないと思っています。

その一方で、先ほどから指摘されているように、買い手企業の育成も大切です。ポイントは年商1億〜2億円の会社を引き受けることのできる年商5億〜10億円の会社の育成です。こうした規模の会社に、企業買収やその後のマネジメントの経験やノウハウを積んでいただくための取り組みも、ますます重要になってくると思います。

篠田氏いやあ、本当に勉強になります。全くその通りだと思いますね。譲渡する意志のある中小企業を引き受ける会社が増えれば、M&Aマーケットはもっと盛り上がるでしょうからね。

古舘買い手の育成、あるいは創っていくという観点がすごく重要ですね。

古舘最近、ウェブマッチングサイトでは個人の買い手希望者が増えていますよね。彼らのなかでも強い思いをお持ちの方をしっかりとした起業家に育てていくことも大切だと思いますね。ボランティア感覚で手間のかかる仕事になるかもしれませんが、地元への想いということでつながる部分があれば、挑戦する価値はありますね。

篠田氏最近うちもベンチャー支援拠点をつくり、登録会員の支援を始めました。李さんのように確固たる思いがあったわけではないのですが、名南グループとしても、ベンチャーやスタートアップの支援が必要だと考えています。投資家の買収ニーズについては把握していますので、これとベンチャー、スタートアップをマッチングすればM&Aコンサルティングの仕事につながっていきますし、最終的には地域経済の活性化につながるはずです。まだまだ手探り状態ですし、手弁当になる部分もありますが、力を入れていかなければいけないと思っています。課題とは全然違うことは話していますけれどもね。

YHC

いや、そこは直結すると思います。最近は個人が数百万円で会社を買って起業するケースが増えているといわれています。また、世の中の流れとして、人口が首都圏から分散する傾向にあります。その意味でも、地域特化企業による買い手の育成の需要は確実に高まっていると思います。首都圏から地域に移った人々がチャンスをつかむことのできる環境ができるといいですね。

篠田氏買収ニーズを汲み上げるときに、年商10億とか15億とか20億というように売上規模、あるいは企業規模の大きいところにターゲットを絞ってPRしていますが、決してそうじゃないんだと思いました。”教育”というと語弊があるかもしれませんが、小さい会社でも買えるんだということをお話ししていかないといけないでしょうね。

古舘われわれがM&Aの仕事を始めた時は売上1億円以下の会社、もっといえば年商2000万円とか3000万円の会社は売れないだろうと思っていたのですが、引き受けてくれる会社はあるんですよね。うまく引き継いで伸ばしていこうという志の高い方が買収しますので、私どもとしても楽しいですね。
バトンズさんやトランビさんのおかげもあって小規模案件も増えてきてはいるのですが、失敗事例があることも忘れてはなりません。われわれアドバイザーとしては、買い手がしっかりとした判断ができるようにサポートしていかなくてはいけないと思っています。

篠田氏そうですね。やめた方がいい案件だと思ったときには迷わず止める。これもコンサルタントの重要な役割だと思います。

他地域マッチングの推進

YHC

他地域マッチングの推進も課題ではないでしょうか。

篠田氏当社も李さん、古舘さんの会社も、基本は地域内マッチングです。とはいえ、M&Aが拡大し浸透するなかで、他地域マッチングはますます重要になってくると思います。課題は他域の情報がほとんど入ってこないということです。ここは、全国的に事業を展開している大手のM&A仲介会社さんとどうしても比べられてしまう部分なんですよね。こうした弱点を克服するため、当社はクレジオ・パートナーズさん、フォルテワンさんをはじめ、他地域のM&A会社と情報交換を行い、マッチングの成約確度を高める取り組みをスタートさせています。連携によって地域をより一層盛り上げていければと思っています。

YHC

篠田さんが全国各地を行脚しているのには、そうした理由があったんですね。

篠田氏そうなんですよ。趣味でもあるんですけどね。

古舘グルメの旅じゃなかったんですか。

篠田氏そこは古舘さんも一緒じゃないですか。実際に足を運ばないと、情報も取れませんしね。

古舘最近は「片手でもいいよ」というプレイヤーが増えてきていますので、他地域とつながればつながるほど案件も増えるはずなんですよね。その意味でも連携をより一層強化いくことが大切だと思います。

篠田氏他地域の人々と情報交換することで、互いに参考になる部分もありますし、自分の地域に戻ったときにやるべきことが見えてきます。
最近はコロナ禍でなかなか難しい部分もあったのですが、この間も李さんと知り合いになったので広島に行き、その足で古舘さんのところにも足を運んだんですよ。

李氏わざわざありがとうございました。

篠田氏いえいえ。また行きますので、その節はよろしくお願いします。

古舘今度は私が名古屋に伺います。楽しみにしていますよ。

篠田氏そうそう、年に数回、M&Aを手掛けている会計事務所の方々に集まっていただいて情報交換しているんです。古舘さんには2年ほどご参加いただいていますがどうですか、役に立っていますか。

古舘皆さん、手掛けている仕事について包み隠さずお話になるので、とてもいい刺激をいただいていますよ。今日の李さんのお話もそうですが、地域のM&Aプレイヤーは“想い”を持って仕事に取り組んでいらっしゃる。こうした方々の意見を聞くことができるのは、とても楽しいです。

地域で仕事をする楽しさ、魅力とは

篠田氏地域のM&Aアドバイザーがクローズアップされることって滅多にないんですよね。

YHC

そうですね。このウェビナーが全国初かもしれません。この企画は、東京でM&A仲介をやられている同業の方、ファンドの方からの注目度が非常に高いんですよ。地方で働く楽しみがなかなかみえづらいということだと思います。Uターンを経験された李さんから見て、地方で働く魅力はどこにあると思われますか。

李氏働く側の楽しさという意味でいうと、地域に住んで、仕事をしている人には、「地元に貢献したい」「地元を少しでも元気にしたい」といった想い、あるいは、何かしらの“地元愛”があると思います。私たちのM&A仲介という仕事は、お客さまはもとより、地域社会のためにもなる、非常にやりがいのある仕事です。仕事そのものが地域貢献につながりますので“毎日が幸せ”みたいな感じですね。

篠田氏もともと広島に戻ることを視野に入れていたのですか。

李氏そうですね。前職は山田コンサルティンググループに12年間務めましたが、いつかはUターンしたいという想いがありました。

広島にUターンして素直に感じたのは、人脈が貯まっていく感覚をはじめて持てたということです。活動すればするほど、経営者に会えば会うほど人脈が貯まっていく感覚です。東京にいた頃は、北海道から沖縄まで全国津々浦々に出張していて、各地域で人脈を貯めていたつもりでしたが、こんな感覚を味わったことはありませんでした。

篠田氏人脈の密度が濃いんですよね。地方で活動していると人脈がすごく密で、AさんとBさん知ってる。そうしたらCさんの知り合いだったということがしょっちゅうあります。

古舘ビジネスとプライベートの垣根がほとんどないようなかたちで、人脈がつながっていきますよね。

篠田氏それが楽しいんですよね。

古舘ええ。

篠田氏まさに地方の魅力だと思います。

Q&A

コロナ禍による案件件数、相談性質の変化

YHC

ここからはQ&Aに移りたいと思います。まず、新型コロナウイルスの感染拡大以降、案件件数や相談の質について変化を感じていらっしゃることはありますか。

篠田氏よく聞かれる質問なのですが、ほとんど変わっていません。2020年4月・5月は減りましたが、緊急事態宣言の解除、第2波の収束を経て、案件はむしろ増加しました。先ほど古舘さんがおっしゃったように、事業承継は経営者の年齢の問題ですので、コロナ禍の影響によって案件が減ったという感覚はないですね。

李氏ほぼ同じですが、買いと売りに分けてお話ししたいと思います。まず”買い”について申し上げますと、買収を凍結したり、様子見に転じたりした買い手が2割程度いましたが、その他8割は、変わりありませんでした。買い手の皆さんは勝ち残り、事業の継続を賭けて、危機感を持ってM&A戦略を展開しているので、そこまで変わることはなかったという印象です。一方、”売り”に関しては2020年4・5・6月こそ資金繰りをつなぐので精一杯ということで相談が止まりましたが、根本的なニーズは変わっていないので、事業承継の案件はこれから増えていくと思います。また、コロナ禍で債務が膨らんだ会社のカット型、再生型のM&Aのニーズも増えていくと思います。

篠田氏これからですよね。再生の相談はほとんどありませんでしたが、最近になって少しずつ出てきたという感じです。2020年末から2021年初頭にかけて増えていくとみています。

李氏レコフさんの統計によると、M&A件数は2020年9月までの累計で前年比マイナス5%。内訳をみると事業承継は22%増えています。おそらく不採算事業からの撤退ですとか、カット型のM&Aだと思います。

古舘M&Aというよりはコンサル支援になりますが、再生案件についてはちょこちょこご相談いただいています。相談は多くいただいているものの、運転資金が膨らみ、負債が大きくなっている会社が多いので、買える会社がなかなかないのが難しいところです。業種としては観光業が多いですね。飲食業に関しては、M&Aというよりも、テナントの売却相談が増えています。大きく変わったことがあるとすれば、買い手ですね。一本足打法でやってきた会社が、経営の軸をもう一本つくりたいといったかたちで、買い手の動きが変わってきた印象です。

篠田氏先日、雑誌の取材を受けて話したんですけれども、検討するだけして決めてくれない“なんちゃってバイヤー”が減りましたよね。真面目に検討する買い手ばかりですので、すごくやりやすくなりましたよね。皆さん、決めるのが速いから。

ソーシングの手法の変化

YHC

ソーシングに関して変わったことはありますか。

古舘ウェブ経由の問い合わせが増えましたね。ウェブからの問い合わせが半分くらいを占めるようになり、面談の件数もほぼ倍増しました。先日は79歳の社長から問い合わせをいただきましたし、ウェブに対する抵抗感はほとんどないと思いますね。

篠田氏うちはウェブ経由の問い合わせはほとんどないですね。ただ、セミナーはオンラインで行うようになりました。コロナ禍でいちばん変わったことと言えば、これですね。

李氏ソーシングではありませんが、受託後の売り手との面談や、IM(インフォメーション・メモランダム)の説明を含めた買い手との面談は、オンライン会議ツールを活用して行うケースが増えました。この半年間で売り手への初回訪問をオンライン会議ツールで行なったことが2、3度ありました。これは先方のご希望でしたね。

篠田氏先方からそう言っていただけるのはいいですよね。行かなくてもいいわけだから。

李氏そうですね。ただ、売却プロセスに入るまでの商談は極めてタッチーじゃないですか。やはりオンライン会議ツールだけではやり切れない部分がありますよね。

篠田氏実際に契約するとなれば、直接会わなくてはいけないですよね。

李氏そうですね。

ファンドへの抵抗感は確実に減少している

YHC

ファンドへの売却に対するクライアントの抵抗感についてはいかがでしょうか。

篠田氏ファンドに対する抵抗感は確実に減ってきています。一昔前の“ハゲタカ”というイメージはもうないですね。大手ファンドへの買収は“身売り”と揶揄されたものですが、売却後もオーナーが一定期間残る体制を整えてあげれば、会社の評判がそこまで悪くなることはありません。また、名南グループもファンドを立ち上げましたが、地銀も続々とファンドを立ち上げています。メインバンクのファンドに譲渡するケースが増えていることも、抵抗感が減少した要因の一つといえるのかもしれません。

李氏あくまで肌感覚ではありますが、「売却相手がファンドでもいい」と考える売り手の割合は、以前は20分の1、今日では3分の1くらいまで増えていると思います。

YHC

仲介会社からしてみると、ファンドが買い手になることにはメリットがあるのでしょうか。

篠田氏一言でいえば楽ですよね。決断も行動も早いですから。

古舘将来的に再度売却されるのを嫌がられる方もいらっしゃるのも事実です。こうした場合には、プリンシパル・インベストメント(PI)を提案すると、ご承諾いただけることが多いですね。

非営利分野のM&A案件

YHC

「病院や学校、社会福祉法人など、非営利分野のM&A案件についてはいかがでしょうか」という質問をいただいています。

篠田氏病院やクリニック、介護施設の事業承継に関するご相談を数多くいただいておりまして、当社の全案件の約3割を占めています。病院やクリニックの場合、親族にドクターがいなければ、廃業するか、第三者に承継するほかありません。デンタルクリニックを集中的に買収しているファンドがありますが、これと同じ流れが他の診療科でも起きるのは間違いないと思います。当社ではクリニックの専門チームをつくって対応しています。

古舘当社ではクリニックのM&Aに関する案件を8件、同時並行で進めています。クリニックは高収益ながらバリュエーションが低いので、ファンドにとっても魅力的な投資対象になっているのだと思います。

売上規模のボリュームゾーン

YHC

次は「成約案件に関して、売り手企業の売上規模のボリュームゾーンについて聞かせてください」というご質問です。

李氏売上1億〜10億円の会社が約8割。残りの約2割が10億円以上という感じです。

篠田氏うちは5億までが一番多いですね。売上規模のわりには高いバリュエーションがついている会社が多いです。

古舘うちは2億〜5億です。

YHC

続いて「個人商店規模のM&Aの相談は増えてますか」というご質問をいただいています。

李氏かなり増えてきていますね。売上高2000万円くらいの会社の案件も基本合意まで進んでおり、成約の見込みが高いです。

篠田氏どのような会社が買うんですか。

李氏売上高10億くらいの会社が買おうとしています。

篠田氏年商2000万ですよね。

李氏正確には年商2000万弱ですね。譲渡価額は2500万くらい。

篠田氏すごいじゃないですか。

李氏買い手からすると投資をしっかり回収できて、元を取ることができる、なかなか面白い案件でした。

篠田氏なるほど。うちでは売上数千万の案件を手掛けたことはないですね。ただ、売上高1億規模の会社であれば、事業引継ぎ支援センターさんからしばしばご紹介いただいていますよ。

マッチングの手法、プラットフォームの活用

YHC

続いては「相手探しはどのようにされているんですか」という、マッチングについてのご質問です。

篠田氏東京商工リサーチや帝国データバンクのリストを使って、売り手と同じような業種にアプローチしたり、紹介してもらったりと、いろいろなやり方でやりますね。皆さん一緒じゃないですか。

古舘同じだと思います。あとはマッチングサイトを使うか使わないかくらいですかね。

李氏そうですね。最近はプラットフォームを利用している案件もあります。

篠田氏そうですね。もちろん業種によりますけれども。業種によっては、売り手の情報を登録した瞬間に問い合わせが入ってきますもんね。皆さん見てるんだなと思って。

YHC

続いて「地元の小規模事業者から、買い手としての買収相談はきていますか?」というご質問です。

李氏M&Aの買い手といいますと、従来は年商30億以上といったイメージでしたが、最近は年商5億〜10億の買い手も出てきていると思います。

篠田氏先ほど李さんがおっしゃったように、この部分は課題ですよね。

李氏ええ。買い手側の裾野を広げていかないといけない。

古舘それこそサラリーマンや個人の買い手が増えている気がしますね。

李氏確かに。ウェブ経由で個人の方から「売却案件を探しています」という問い合わせをいただくケースが増えています。

YHC

増えているんですね。

古舘ただし「事業者になりたいけど、まだよくわかっていないです」っていう方が多い印象です。

篠田氏うちもありました。「1000万円貯めました。いい会社ないですか」というような感じです。一応、トランビさんとバトンズさんを紹介しておきましたけれども。

李氏まさに一緒です。

YHC

「報酬を払えない売り手からの相談はどうされるんですか」というご質問をいただいています。

篠田氏報酬を払えない……バリューがつかないということでしょうか。相手が見つかるのであればやりますし、着手金をいただいて少し動くといったことはやりますね。地元のお客さまが困っていたら何とか対応したいと思うので、けんもほろろで断るということはありません。何かしらのことはやりますよ。

古舘そうですね。債務超過の会社でも株式はゼロ円譲渡にするとともに、役員借入金を一部返済してもらって報酬に当てるとかですね。実質的には買い手に負担してもらうことになると思いますが、少なくとも手元にお金がないから相談できないということはないですね。そこも含めて僕らが考えます。

YHC

なるほど。ありがとうございます。

地方での事業承継に関して準備しておくべきこと

YHC

「地方での事業承継に関わる上で準備しておくべきこと、やっておくべきことなど、アドバイスがあれば」というリクエストをいただいています。李さん、如何でしょうか。

李氏地域企業の視点からお話ししたいと思います。求められるのは「黒字化」と「権限委譲」の二つです。事業を継承するのが子どもにしても、社員にしても、あるいは第三者にしても、会社が黒字である方が好ましいです。また、権限委譲を段階的に進めながら人材育成を行なっていた方が、事業承継をより確実なものとすることができると思います。

篠田氏私はアドバイザーの視点からお話します。地方では本当に色々な相談を受けるので、M&Aに限らず、コンサルタントとしての総合的な知識や経験が求められます。また、案件を人伝てでいただくことも結構ありますので、人脈をつくっておくことが大切です。地方で仕事をすることを考えていらっしゃるのであれば、この2点を意識して準備されることをおすすめします。

YHC

ありがとうございます。

2025年までに120万社が事業承継できずに廃業する可能性

YHC

次の質問は「2025年までに120万社が事業を承継できずに廃業する可能性があるという記事を読んだ」ということなんですけれども、この点に関してはいかがでしょうか。

古舘5、6年前に比べると、M&Aのプレイヤーもアドバイザーも確実に増えてきています。また、補助金制度をはじめとして、国や県などのバックアップの仕組みも充実してきました。私たちが事業をさらに拡大することで、こうした問題の解決に寄与していきたいと思っています。

李氏売り手の啓発は進んできていると思うので、あとは買い手の育成ですね。これは私の持論なのですが、国の政策としてデューディリジェンス報酬やM&A報酬、アドバイザリー・フィーなど手数料を含めて、M&Aによる株式取得価額の損金算入を認めていただければと思っています。

篠田氏それはいいですね。なるほど。今年、事業承継補助金ができたときに中小企業庁から意見を求められたのですが、それは思いつきませんでした。買い手支援という意味では、とてもいい仕組みですよね。さすが李さん。

李氏オープンイノベーション税制のような政策を打ち出す前に、M&Aによる株式取得価額の損金算入を認めて頂く方が、政策としてのインパクトは大きいと思っています。

M&Aアドバイザーの採用基準と育成の基本方針

YHC

地方ではM&Aプレイヤーが不足しているというお話がありました。「M&Aアドバイザーはさまざまな経験や知識が求められるイメージがありますが、採用基準をどのように設定されているか、人材育成をどのように実施されているか、差し支えない範囲で教えてください」というご質問をいただいています。どのような採用基準を設けていらっしゃるのでしょうか。

篠田氏当社の仕事は、M&Aやコンサルティングに対する熱い想いがなければ務まりません。ですから、基本的な”想い”の部分についてはしっかりと確かめます。能力面に関しては、財務や会計、税務の知識が必須です。税務に関しては入社後に勉強すればなんとかなるかもしれませんが、少なくとも財務・会計の知識がないとやっていけません。この部分についてもしっかりとチェックするようにしていますが、会計事務所出身者、金融機関出身者の方であれば全く問題ないと思います。もう少し噛み砕いていえば、決算書を読む力ですね。

YHC

資格でいえば簿記2級程度という感じでしょうか。

篠田氏ええ、簿記2級です。

YHC

李さん、古舘さんは如何ですか。

李氏篠田さんと同じようなイメージですが、社員一人ひとりにエンジンになってもらわなくてはいけないということで、主体性を重視しています。大切にしているのは「地域に貢献したい」とか「社会の役に立ちたい」という”想い”を持っているかどうかということです。

古舘九州ですと、M&A仲介の経験者はなかなかいないので、専門知識は入社後に身につけてもらう前提で採用しています。入社してから簿記2級を受けてくださいという感じですね。

YHC

育成に関しては、最初は先輩がついて二人三脚でやっていく感じでしょうか。

篠田氏基本はOJTですね。もちろん丁寧に教えますけれども、自分で勉強する熱意、姿勢がなければ、知識もスキルもなかなか身に付かないと思います。

古舘その意味では“地頭力”もある程度は必要でしょうね。地域の小規模な案件では、買い手を探すのに相当な努力が必要です。”想い”という表現がいいのか、”執念”という表現がいいのかわかりませんが、こうした仕事に全力でコミットする姿勢は必要ですね。

篠田氏そうですよね。

古舘それから、当社も”ゴールドラッシュ系”はお断りしています。例えば、案件の規模によってインセンティブに差を付けるといったこともしておりません。「大きな案件も小さな案件も一緒」という考え方を基本に据えて教育を行なっています。

M&Aと中小企業診断士資格の親和性

YHC

「M&A仲介業界は公認会計士や税理士資格をお持ち方が活躍されている印象を持っています。一方、中小企業診断士は求人にも記載がない場合が多いと思うのですが、なぜでしょうか」という質問もいただいています。

李氏篠田さんは中小企業診断士ですよね。

篠田氏ええ。中小企業診断士の資格を持っている人はたくさんいますよ。ぜひ応募してください。

李氏当社としては、中小企業診断士はこの仕事に合っていると思います。ただ、中小企業診断士をお持ちの方は独立志向が強いためか、求人に応募してこられる方が少ないですね。

篠田氏税理士や公認会計士に比べると絶対数が少ないということもあるかもしれません。ただ、M&A仲介という仕事には社労士や司法書士よりも、中小企業診断士の方が親和性が高いと思います。ヤマトヒューマンキャピタルさん経由で応募してください。

YHC

ご応募お待ちしています。

最後の質問です。「先ほど個人から買いたいという問い合わせが増えてきているというお話がありましたが、バトンズさんやトランビさんに紹介するだけでなく、御社で対応することもあるのでしょうか」とのことなのですが。

李氏現時点ではしておりませんが、人によると思いますね。

篠田氏そうですね。李さんのおっしゃる通り、そこは人によると思います。

YHC

本日はここまでとさせていただきます。篠田さん、李さん、古舘さん、視聴者の皆様、本日はお付き合いいただきましてありがとうございました。

篠田氏ありがとうございました。

李氏ありがとうございました。

古舘ありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!