※本記事は2025年7月29日のキャリナー動画「【年収を上げたい人必見】日本一わかりやすい業界解説番組”キャリナー大学”第1回「M&A業界」」を記事化した内容となります。
「30歳で年収1億円」「プロ野球選手並みに稼げる」と言われるM&A業界。しかし、具体的にどのような仕事をし、なぜそれほど高い報酬が得られるのかを知る人は多くありません。
本記事では、ヤマトヒューマンキャピタルCEOの堀江氏と現役大学生の瀧澤氏の対話を通して、M&A業界の全貌、企業の買収動機、大成功・大失敗の事例までをわかりやすく解説します。
〈番組紹介〉
毎回、各業界に詳しい専門のヘッドハンターが講義
日本一わかりやすい業界解説番組「キャリナー大学」
第1回は「M&A業界」。
「M&A」ってよく聞くけど実際どんなことが行われてる?
オリジナルイラストを使って、1から10まで徹底解剖!
「30歳で1億」高額報酬のカラクリやM&Aをする理由、M&A業界にはどんな会社があるのかなど
業界のことを隅々まで解説します!
〈出演者〉
・瀧澤 真依(ミス慶應2025 ファイナリスト)
・堀江 大介(ヤマトヒューマンキャピタルCEO)

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そもそもM&Aとは何か? 企業が買収を行う3つの動機
合併と買収の違いと、買い手企業がM&Aを行う3つの目的
堀江 大介(ヤマトヒューマンキャピタル):そもそもM&Aとは何かというと、合併と買収のことです。合併は2つの会社が1つになること。例えば三菱UFJ銀行が何個か一緒になって今の状態になったんですね。買収は特定の会社が会社を買うことで、GoogleがYouTubeを買収して傘下に入れたのが分かりやすい例ですね。新聞などでもM&Aのニュースをよく見かけると思います。
瀧澤 真依(慶應義塾大学1年 / ミス慶應2025 ファイナリスト):なぜそもそも企業はM&Aをするのでしょうか?
堀江 大介: 買い手側の目線で言うと理由は3つあります。1つ目は『新しい市場に出たい』というニーズです。経営者や上場会社は事業を成長させ続けないといけないのですが、日本では人口が増えていないので市場は大きくなっていません。パン屋さんがパンだけじゃ厳しいからイタリアンレストランをやってそこにパンを下ろそうか、といった形で、さまざまな会社を買収して新しい市場へ進出し、全体を大きくするという経営戦略をとります。 2つ目は『同業で一緒になって業界内シェアを獲得する』こと。銀行が一緒になるなどしてシェアを獲得し、価格交渉力を高めたり仕入れコストを下げたりして競争力を高めます。 3つ目は『新しい技術を手に入れる』こと。例えばAI分野では、採用が難しいエンジニアを会社ごと買い取る動きが起きています。
瀧澤 真依: 新しい技術を手に入れる事例で、具体的なものはありますか?
堀江 大介: 最も世界で大きい事例がChatGPTのOpenAIです。マイクロソフトが51%を取得したほか、ソフトバンクの孫さんも株10%獲得のために4.8兆円を出資しました。自社の時価総額が10兆円規模であるにもかかわらず、そこで働いている人や技術を得るためにそれほどの巨額を投じるわけです。
なぜ今M&Aが急増しているのか?「事業承継」という切実な課題

堀江 大介: もう1つ、最近M&Aの件数が急増している大きな理由が『事業承継』です。最近経営者の平均年齢が60歳を超えており、10〜20年で引退時期を迎えます。しかし後継者がいません。会社という価値があるので、その会社を買って継がないといけないのですが、それができる個人はあまりいません。家族に継いでもらうのが難しいので、どこかの会社に買ってもらって事業を承継する事業承継型M&Aが非常に増えています。
瀧澤 真依: 経営戦略として会社を成長させるためと、後継者がいないから売るしかない。この2つでM&Aがすごく増えているんですね。
M&A業界を形作る主なプレイヤーと買収プロセス
アドバイザー(FA・M&A仲介)と買い手(ファンド・事業会社)の役割
瀧澤 真依: 企業同士の買収や売り買いをつなげる役割をするのがM&A業界という認識で合っていますか?
堀江 大介: とても良い視点ですね。M&A業界って広いんですよね。M&Aをアドバイスする人たちと、自分たちが買う側の人たちがいます。 アドバイスする側には、2種類のプレイヤーがいます。1つは『FA(ファイナンシャルアドバイザー)』です。弁護士のように買い手と売り手それぞれにアドバイザーがつき、利害調整などを含めてアドバイスをします。クライアントからのオーダーが多いですね。 もう1つは『M&A仲介』です。不動産仲介のように間に入ってマッチングし、M&Aというディールを0から生み出すプロフェッショナルです。日本の会社をリストアップして手紙を送り、売ってくれるように仕向けて営業しています。FAもM&A仲介も、M&Aの買い手・売り手を探す手伝いをしている点では同じです。
一方、買う側には『ファンド』と呼ばれるプレイヤーがいます。ファンドは誰かのお金を投資して増やす仕事で、例えば100億円で買った会社を伸ばして200億円で売却し、100億円稼ぐといったビジネスモデルです。これも広義のM&A業界と言えます。 また、『GENDA(ジェンダ)』という会社は、アジアで一番大きいゲームセンターの会社ですが、自分たちで0から作った事業は1つもありません。世界中のゲームセンターやカラオケを買い続けて大きくなった会社で、これもM&A業界に含めてよいと思います。
ターゲット選定からデューデリジェンス、PMIまでの買収プロセス
瀧澤 真依: M&Aって具体的にはどういうことをするんですか?
堀江 大介: 企業を買収する側のプロセスで説明しますね。まず、自分たちが将来どうなりたいかという経営戦略があり、そこに足りないピースを埋めるための『ターゲット選定』を行います。次に、その会社にアプローチして『会社売ってください』と価格や契約条件の交渉をします。ある程度交渉が進んだタイミングで、相手の会社の内容に嘘がないか調査する『デューデリジェンス(DD)』を行います。これを突破したら契約締結となり、最後に企業理念や人事制度を統合する『PMI(経営統合)』を行って、一連のプロセスが終わります。
明暗を分けたM&A事例:インディードの大成功と東芝の失敗

買収額1000億円から売上1兆円へ! リクルートによるインディード買収劇
瀧澤 真依: 最近堀江さんがすごいなと思ったM&Aの例や、一番衝撃を受けたものはありますか?
堀江 大介: 一番強烈に衝撃を受けたのはリクルートによるインディードの買収ですね。当時、売上80億円程度で利益もほとんど出ていなかったインディードを、リクルートは1000億円で買収しました。リクルート社内からは反対の声も上がりましたが、「これは絶対に世の中を変えるすごいサービスになるぞ」と言って買収したら、今や売上1兆円近くと、爆発的に成長しました。リクルートの時価総額(一時期20兆円規模)のうち約8割はインディードの価値と言われており、リクルートは世界で最も巨大な人材テック企業に爆裂に成長しました。
瀧澤 真依:インディードはどうやって見つけたんですか?
堀江 大介: リクルートは国内ナンバーワンの会社ですが、世界を取るかどうかの議論があり、世界を取ると決めたそうです。そこから世界中の人材・テクノロジー企業を洗い出し、求人のGoogleみたいなインディードを見つけました。全ての仕事探しがインディードになるぐらいの興奮を覚えたらしく、大勝負に出た結果、世界一に近づく大成功事例となりました。
とんでもなく成長するか、負けるか。M&Aのハイリスク・ハイリターンな側面
堀江 大介: 大勝負な分、大きなリスクもあります。一番分かりやすいのは東芝です。東芝はアメリカの原子力関連会社を巨大な価格で買収しましたが、その後の3.11の影響で世界的に原発事業へネガティブな流れになり、買った会社の価値がほぼゼロになって経営がガタガタになってしまいました。M&Aはとんでもなく成長するかもしれないし、とんでもなく負けるかもしれない。下振れ幅も調整しながらやるのがM&Aが上手い会社ですね。
M&A業界の具体的一覧と「平均年収日本一」の謎
投資銀行、FAS、M&A仲介…業界を代表する企業グループ
瀧澤 真依: M&Aについて分かったんですけど、具体的にはどういった会社があるんですか?
堀江 大介: 昔からM&Aをやっているのは、日興や野村證券、大和証券といった日系証券会社の投資銀行部門です。また、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった外資系投資銀行も人気で、一定以上の学歴の人の中で一番年収が高い業界です。 次にBig 4のFAS(デロイト、PwC、KPMG、EY)。これらは世界トップの監査法人グループで、M&Aアドバイザーをやっている人たちも結構います。 そして、売上数億円〜10億円規模の案件を手掛けるのがM&A仲介です。日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所などの上場企業が名を連ねており、上場会社の年収ランキングで常に上位にいます。特にM&Aキャピタルパートナーズは日本の平均年収ランキングで1位です。
案件サイズが小さくてもなぜ年収日本一なのか?
瀧澤 真依: それでお聞きしたいのですが、この表の中だったらM&A仲介は扱う案件サイズが小さめだと思うのですが、それで年収が高いというのはどういう仕組みなんですか?
小規模案件でも平均年収日本一になれるカラクリ
大手投資銀行とM&A仲介における「チーム体制」と「手数料還元率」の違い
堀江 大介: 上の証券会社などに比べてM&Aキャピタルパートナーズなどの年収が高い理由は、手数料の取り方と還元の仕方が違うからです。野村證券などは1000億円規模の取引を10〜20人のチームでサポートします。買収価格が大きくなるほど手数料率は下がりますし、大人数で分けるため個人への還元率は低くなります。 一方、M&A仲介は1人の営業マンがオーナー社長と直接向き合い、「お前の言う通り売ろう」と信頼を得て売上30億円ほどの会社をマッチングさせます。売り手・買い手の両方から手数料をもらうため、1人の担当者に落ちてくる還元額が非常に大きくなり、結果として年収が高くなるのです。ただし、左上の投資銀行の人たちは基本給自体が元々非常に高く、役職が上がっていくとすごい年収になります。
職位・業態ごとにみるM&A業界の年収モデル
投資銀行・FASの職位別年収と、20代で1億円を狙えるM&A仲介の歩合制
堀江 大介: 投資銀行やFASのアドバイザリー職は、役職(職位)が上がるにつれて年収が上昇し、マネージングディレクターやパートナーランクになるとプロ野球選手並みの水準に達します。一方、M&A仲介は固定給自体は400万〜500万円程度と高くありませんが、自身が稼いだ金額の10%〜20%をインセンティブとして返します。プロ野球選手のように活躍する人もいれば引退する人もいますが、年齢を重ねずに20代で年収1億円ということが一番起こりうる業界です。
企業価値を上げて売却益を分ける「PEファンド」の報酬構造
堀江 大介: また『PEファンド』は、会社を買収して企業価値を高めて売却する人たちです。固定給があり、『イグジットボーナス』として、買った会社の企業価値を上げて売却し利益が出た際に、それを数年に1回みんなで分けるという仕組みになっています。投資が成功すれば爆発的な金額になるし、ダメならゼロ。組織に所属する人の中だと一番年収が高い業界です。
これからのM&A業界の展望と「マス化」するキャリア
誰でもできる仕事への進化と、大企業におけるM&Aチームの必須化
瀧澤 真依: 今後のM&A業界はどのような方向に進んでいくのでしょうか?
堀江 大介: M&Aってまだニッチで特定の人だけがやっている仕事ですが、これをもっとマス化すると思います。みんな勉強するときのスキルの1つぐらい当たり前になる可能性を感じます。ある程度の規模の会社は経営戦略の中にM&Aが入ってきており、大企業にはM&Aチームや専門家がいるのが当たり前になるかもしれません。 昔はM&Aがあまり起きず、稼げるけれど誰でもなれる仕事ではありませんでした。しかし、経営者の後継者不足などでM&Aのニーズがどんどん増え、売るしかない中小企業が増えています。プレイヤーがいっぱい増える中で、特定の優秀な人しかできない仕事だと採用できないので、企業努力によってM&Aが誰でもできる仕事になっていき、この10年ぐらいで一気に変わったという感じです。

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