※本記事は2025年3月5日のキャリナー動画「PEファンド・M&A仲介トッププレイヤー集結。どのように協力し、投資を実行するのか?全貌公開」を記事化した内容となります。
2025年、日本の中小企業経営者の約3分の2が70歳以上となり、黒字経営でありながら後継者不在で廃業の危機に瀕する企業が急増しています。この社会課題の最前線で対峙するのが「PEファンド」と「M&A仲介」です。
本記事では、ヤマトヒューマンキャピタルの堀江氏MCのもと、マラトンキャピタルパートナーズ代表の小野俊法氏、日本M&Aセンター執行役員の中村健太氏、同社PEファンド担当の長谷氏をお迎えし、両業界の基本役割から事業承継市場の未来予測までを徹底解説します。
〈番組紹介〉
PEファンド&M&A仲介トッププレイヤー集結!M&A仲介・ファンド視点でキャリアの魅力を深堀り!
〈出演者〉
・小野 俊法(マラトンキャピタルパートナーズ 代表)
・中村 健太(日本M&Aセンター執行役員)
・長谷 智久(日本M&AセンターPEファンド担当)
・奥井 奈々(アナウンサー)
・堀江 大介(ヤマトヒューマンキャピタル)

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隣接する2つの業界――PEファンドとM&A仲介の基本役割とは
なぜ今「PEファンド×M&A仲介」を同時に深掘りするのか
奥井奈々(MC):堀江さん、今回のテーマは『PEファンドとM&A仲介 キャリアを深掘り』ですが、なぜこの2つの業界を同時に深掘りするのでしょうか?
堀江大介 :一見すると違う業界に見えますが、実は非常に隣接した近い業界なんです。実際、この2つの業界は一緒にビジネスをしているため、その関係性を理解すると業界の構造がかなり深く分かります。また、転職市場でも同じような方が志望する憧れの業界でもあるので、両者の違いや関わりを知ることで、キャリアの意思決定に大いに役立つと考えて企画しました。
PEファンドとM&A仲介、それぞれのビジネスモデル
奥井奈々:まずはPEファンドについて、小野さんからどのようなお仕事か教えていただけますか?
小野俊法(マラトンキャピタル):ファンドですので、投資家様からお預かりした資産を運用する立場が第一です。我々が対象とする中小企業において、事業承継を行いたい、あるいはポテンシャルがあるのにまだ伸び切っていない会社様と資本提携をさせていただきます。資金やノウハウを提供し、経営者の方と一緒に汗をかいて会社を伸ばし、事業承継や成長をお手伝いするのが我々の仕事です。仲介会社様から会社をご紹介いただき、出資・資本提携をさせていただくというお付き合いもあります。
奥井奈々:なるほど。M&A仲介側の中村さんはいかがでしょうか?
中村健太(日本M&Aセンター):M&A仲介は、まさに『仲人』のような仕事です。後継者がいらっしゃらない経営者様からご相談を受け、その会社を引き継ぐ買い手企業様をお探しして、間を取り持ちます。近年は事業承継だけでなく、大手資本のもとで成長を目指すケースや、小野様のようなPEファンド様に会社を売却する例も非常に増えています。
データで見る衝撃の実態――「2025年問題」と事業承継のリアル

黒字企業の廃業がもたらす「2.5兆円の経済損失」
奥井奈々:日本の事業承継問題について、中村さんからデータをもとに解説していただけますか?
中村健太:現在、日本には約381万社の中小企業がありますが、2025年にはそのうち245万社(約3分の2)の経営者が70歳以上になると言われています。さらにその中で、70歳以上で後継者がいない企業が127万社存在します。驚くべきは、その約半数にあたる60万社が『しっかりと黒字を出して付加価値を生み出している企業』だという点です。当社の推計では、仮に当社が2023年度にご支援した512社がM&Aを行わずに廃業していた場合、将来的に2兆5000億円を超える経済損失が生じていたと試算されています。
堀江大介:60万社も黒字なのに後継者がいないというのは衝撃的ですね。親族や社員の方が継ぐといった選択肢はないのでしょうか?
中村健太:ご親族で継がれるケースはこの数十年で大きく減っています。また、社員の方への承継も株式の引き継ぎなど資金面のハードルが高く、優秀な社員さんほど独立してしまうケースもあります。結果として、親族にも社内にもお継ぎになれる方がいらっしゃらないという状況が多く生じているのです。
「会社売却=夜逃げ」の時代は終わった――意識の変化
堀江大介:小野さん、現場の感覚としてはいかがですか?
小野俊法:14年前に業界に入った頃と比べてもご相談が急増しており、処理しきれないほどのお話をいただいています。昔の日本には『会社を売る=自分だけ逃げた』という偏見もありましたが、最近は欧米のように『会社を売却して成功した』『PEファンドと一緒に成長させる』という前向きなカルチャーが浸透してきました。50代の経営者が『もう一段会社を伸ばすためにファンドと組む』という事例も増えています。
堀江大介:社会課題である事業承継問題について、PEファンドの観点から解説をお願いします。
小野俊法:M&A全体の件数が上昇傾向にある中で、PEファンドが占めるシェアも伸びています。昨今は、経営者と伴走して汗水を流し、真面目に会社を成長させるPEファンドが増えてきました。「ファンドと組んで会社が伸びた」「一緒にやって良かった」という成功事例が増えた結果、経営者の間でも意識の変化が起きています。かつてのように事業承継を単なる手放しと捉えるのではなく、「優秀な人材と共に会社を成長させる魅力的な選択肢」として、PEファンドと組むこと自体が自社の成功の証と捉えられるカルチャーが広がってきています。経験の少ない人に引き継ぐよりも、実績のあるプロに経営支援を任せる事例が増えているのが現状です。
「まだやれる」50代経営者が選ぶ、再成長のための資本提携
堀江大介: 単に高齢で後継者に引き継ぐだけでなく、まだ50代などで「もう一回会社を伸ばしたい」という経営者がファンドに売却して伴走してもらうケースも増えているのでしょうか?
小野俊法: そうした成長目的の提携は非常に増えています。実際、私どもと資本提携を行った企業様は、全体として売上・利益ともに伸ばしていく状況が作れています。
堀江大介: 中小企業では優秀な若い人材の採用が難しいという課題がある中で、ファンドが一緒に入って経営してくれる点に大きな魅力があるのですね。また、会社側からコンサル費用などは取られるのでしょうか?
小野俊法: コンサル料を取ることはありません。オーナー経営者からすれば、「無料でコンサルティングを行ってくれる強力なパートナーができた」という状態になります。このメリットに魅力を感じ、「PEファンドと共にやりたい」と考えるオーナー様が増加しています。
今後の中小企業M&A市場――5年で横ばいか、2045年まで高止まりか
市場の未来予測をめぐる白熱の議論
奥井奈々:今後の市場環境の変化について、皆さんにフリップでお答えいただきました。小野さんはグラフを描かれていますね?
小野俊法:向こう5年間は事業承継案件がどんどん増えて市場は拡大すると見ています。ただ、無限に増えるわけではなく、5年後以降は会社を成長させたいM&Aと混ざり合いながら安定期に入る(横ばいになる)と考えています。
中村健太:私は『圧倒的に拡大する』と見ています。事業承継問題のピークは2035年と言われており、そこから2045年まで高止まりが続きます。人口統計に基づくデータですので、今後20年以上は高水準の市場が維持される見通しです。
長谷智久:私は『ミッドキャップ(年商10億〜20億円以上の案件)』が増加すると見ています。比較的規模の大きい中規模案件が増えることで、PEファンドが関与するディールもますます盛り上がっていくはずです。
プロが語る「成功するための最大のポイント」
「脳に汁が出るまで考え抜く」――ファンドマネージャーに必要な資質
小野俊法:脳に汗、と言いたかったところをより生々しく表現しました(笑)。その会社の長期的な成長を考えて、何がいいのか、どうやったら成長するのかを考え抜いてやり切ってほしいんです。コンサル会社出身の方などはフレームワークを使いがちですが、フレームワークは考えるツールに過ぎません。そのツールを使って何をするか、何が一番正しいのかを、人を見て脳に汁が出るくらい考え抜く能力が必要です。
「振り子をふり切る」と「鮮度の高い情報収集」――M&A仲介の極意
中村健太:当社のフィロソフィーでもある『振り切り切る』です。単にやり切るということではなく、目の前の成約(短期視点)と、その後の会社の成長・発展(長期視点)という相反する二つの軸を、より高い次元で両立させるメタな視点を持って仕事に取り組むことを意味しています。
長谷智久:私は『情報収集』です。M&Aは水面下で秘密裏に行われるため、クロージングまで公になりません。いかに鮮度が高く良い情報を早くキャッチできるかが勝負です。固定概念にとらわれず自由な発想でアプローチすることが成功に繋がります。
企業買収・M&Aで絶対に外してはならないポイント
相手への「リスペクト」と「自分が買うつもりで」臨む当事者意識
奥井奈々:企業を買収する際に特に大切にすべきポイントについてはいかがでしょうか?
中村健太:私は『リスペクト』です。会社を売却されるオーナー様は人生をかけて経営してこられました。会社を譲渡するのはご自身そのものを託すようなものです。相手企業やオーナー様への深い理解とリスペクトがなければ、M&A後の成長には繋がりません。
長谷智久:『自分が買うつもりで』取り組むことです。自分がその会社を引き継ぐ当事者意識がなければ、単に情報を横流しするだけになってしまいます。自分が買うつもりで先回りし、リスクを潰しながら進めることが買い手企業からの信頼に繋がります。
小野俊法:ファンドとしては『全体最適』です。短期的な儲けだけを考えてバッサバッサとコストカットや人件費削減を行えば、一見儲かりそうですが、そんな手法を続ければファンド自体が潰れてしまいます。投資家様、オーナー様、社員の皆様全員が納得する全体最適を追求することが不可欠です。
年収・インセンティブ・キャリーの実態とキャリアパス

M&A仲介とPEファンドの報酬体系
堀江大介:報酬体系について解説します。M&A仲介は、固定給が高め(500万〜1000万円)で総合評価されるタイプと、固定給が低め(月給35万円程度)で成約手数料の約20%がインセンティブが入るタイプの2種類に分かれます。PEファンドは職階ごとに年収が決まっており、運用リターンが大きく上がった際に数年に一度、運用益の一部が還元されることが特徴です。
奥井奈々:視聴者から『10年働いて一度もキャリーが出なかった人はどれくらいいますか?』という質問が来ています。
小野俊法:役職(VPなど)のまま昇進しなかったり、ファンドの運用成果が出なかった場合、10年働いても億単位のキャリーをもらえない人は半数くらいいるのが現実ですね。どのファンドを選ぶかも非常に重要です。
未経験からの挑戦と本当に求められるスキル
奥井奈々:どのような人が採用されるのでしょうか?
中村健太:当社の場合、経験者はほぼゼロで99%が未経験スタートです。前職の業界は関係なく、オーナー経営者と対等に向き合える『当事者意識を持ったコミュニケーション能力』が最も大切です。財務や専門知識は入社後に十分キャッチアップできます。
小野俊法:MBAや会計知識などのハードスキルだけでは差がつきません。本に書いてあること(A=B)をそのまま適用するのではなく、『この経営者においては何が必要か』をクリティカルに思考し、脳に汗をかいて考え抜ける人が活躍できます。
M&A仲介のキャリアパス
堀江大介: M&A仲介業界に憧れる方も多いと思いますが、入社した後にどのようなキャリアパス(ポストキャリア)が存在するのかを把握しておくことも重要です。主なパターンとしては以下が挙げられます。
- より大型の案件を目指すステップアップ さらに大きな案件規模に挑戦したいという動機から、FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)や投資銀行(一部、野村證券など)へ転職するパターンです。
- 経営・マネジメント領域への展開 M&Aを通じてファイナンスやアドバイザリーの知識を深めた後、「経営や事業そのものに携わりたい」と考え、経営コンサルティングファームへ移ってマネジメントスキルを磨くパターンです。
- 事業会社のM&A担当(買い手側)への転身 仲介で培った経験を生かし、事業会社のインハウスM&A担当として、自ら買収を仕掛ける側に回るパターンです。実際にこの道を選ぶ方は非常に多く見られます。
- 独立・起業 経営者と日々対話する中でビジネス視点を養い、自ら起業して独立するパターンです。
- PEファンドへの転職 事例としてはまだ限定的ではあるものの、仲介からファンドへステップアップするケースも一部出てきています。
M&A仲介業界は、未経験からでも挑戦できる**「入口(間口)の広さ」がありながら、一度経験を積んだ後は事業会社・コンサル・起業・ファンドなど「出口(キャリアの選択肢)が非常に広い」**という点が、キャリア形成において極めて魅力的だと言えます。
トッププレイヤーが語る「仕事のやりがい」と業界の魅力
奥井奈々:最後に、皆さんが考える業界最大の魅力をフリップで一言ずついただきました。中村さんは『異次元の成長』、長谷さんは『感謝と成長』、小野さんは『経営者目線』とお答えいただきました。
中村健太:単にM&Aができるようになるだけでなく、どこに行っても通用するビジネスパーソンとして異次元の成長ができます。
長谷智久:地味で泥くさい仕事ですが、経営者様から一生感謝される喜びは格別です。
小野俊法:全体や長期的な視野に立ち、経営者目線が身につくことが最大の魅力です。ありがとうございます。PEファンドは目先の利益ではなく、ロングタームで社会に良い影響を与えた結果として報酬がついてくる『農耕民族』のような仕事です。社会に大きなインパクトを与えたい方は、ぜひ挑戦していただきたいですね。

登録無料で企業や業界の内情を語る動画を視聴できる「キャリナー」
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