「当事者意識を持って行動すると、景色が変わる」日本経営承継支援の笹川社長へのインタビュー

中小企業向けに事業承継コンサルティングとM&A支援を手がける、日本経営承継支援の笹川敏幸社長に同社の事業戦略、起業に至るまでの経緯などについて語って頂いた。(敬称略)

笹川 敏幸|Toshiyuki Sasagawa

日本経営承継支援株式会社
代表取締役

大学卒業後、短資会社にて外貨資金の取引業務に従事。2000年日本M&Aセンターで中堅・中小企業のM&A仲介業務に従事。全国の商工会議所及び会計事務所で事業承継・M&A業務のアドバイザリー案件を多数経験。監査法人系コンサルティング会社にてM&Aアドバイザリー部設立に参画。東京都事業引継ぎ支援センターのサブマネージャーを経て、15年日本経営承継支援(現経営承継支援)設立、代表取締役就任。東京商工会議所 経営安定特別相談室専門スタッフ 東京都事業引継ぎ支援センター 登録専門家

日本経営承継支援株式会社 代表取締役 笹川敏幸様のご経歴

短資会社からM&A仲介の世界に入られたきっかけについて教えてください。

笹川氏:知り合いの紹介がきっかけです。そこで中小企業のM&Aがあるということを初めて知り、「そんな仕事があるんだ」と思いました。後継者問題があるというのも、事業承継という言葉も当時初めて聞きました。

それで興味を持つようになり、日本M&Aセンターには8年くらい勤めました。その後転職したのは、日本M&Aセンターさんは上場もし、そこに残るという選択肢もあったのですが、大きな会社のM&Aをやってみたいとか、人脈を広げたいというのもあり動きました。

自身で会社を立ち上げられた理由として、どういった体験があったのでしょうか。

笹川氏:理由としては、オーナーさんから事業譲渡したいというご相談を頂いて、マッチングする前にその会社を分析したりするのですが、売り上げ10億円以下のところが多くて。

結構ニッチなところで仕事をやっている会社さんが多く、その分粗利が高いというような会社がけっこうあることに驚きました。

また、事業で本気の社会貢献をしている社長にもお会いすることがあり、「事業をやるというのはすごいことなんだな」と感じ、自分でも事業をやりたいと思うようになりました。

人に喜んで貰える仕事を

今の仕事を続けていこうと考えられたのは、どういった理由からでしょうか。

笹川氏:最初に短資会社へ入社したのはバブルの頃で、当時は今と違って終身雇用でした。右肩上がりの時代だったので、「自分が転職する」などとは思ってもいませんでした。

同期で最初に会社を辞めると言ったのも、実家が何か商売をやっていて、3年くらい会社勤めをして実家に戻るつもりの人くらいでした。その他では同期で転職したという話はあまり聞いたことがありません。

ただ、事業承継のためのM&Aというものがあり、それをお手伝いする仕事があると知ったときに、「これはすごくやりがいがあるな」と思いました。

それまでは仕事で本当に人に喜んでもらえるということはなかったんです。今ではM&Aが終わった後も、お付き合いさせて頂く経営者さんもけっこうおられます。目の前で本当に感謝される仕事というものはそう多くない、と思います。

転職を考え始めている若い金融パーソンに向けて、アドバイスをお願いします。

笹川:今の若い人の方はいろいろ考えていると思いますが、僕が若い頃はよく上の人から、「異体験をしなさい」と言われました。要はいろいろな体験が営業に生きるんだと。

入社1、2年目くらいだとお客さんと話すときに、「はあ、そうなんですか」などと聞いていればよかったけれども、社会人になってある程度年数が経つと、自分から体験などを話せるようにならないといけない。

当時はゴルフを始めたとか、その程度の話しかありませんでしたが、最初はそれでもいいと思います。

メッセージを読み取る

当時のご自身を振り返られて、若いうちに「ああしておけばよかった」というようなことはありますか。

笹川:若い時を振り返ると、自分のやっていることにもっと当事者意識を持って深く考えるようにしていたら、少し変わっていたかもしれないなとは思います。

新聞を読んだら、一つの記事で三つストーリーを考えろとも言われました。

ただ読んでいるだけでなく、『この会社は伸びるんじゃないか』とか、自分なりにシナリオを作ってみろと言われていたんですけど。

当時は「上司に言われたからやっている」という感じで、他人任せみたいなところがありました。もっと当事者意識をもって相手に突っ込んでいたら、見えていた景色が変わっていたかも知れないとは今更ながら思います。

そうすると、「この商売は面白いからやってみよう」ということになってくると思います。やはり、どんのようなことでもいいから貪欲にやってみることですね。自分が体験したり見聞きしたりしたら、見えてくるものが変わってきます。

若いうちはそういう意識をもって活動したらいいのではないかと思います。例えば銀行や証券会社でホールセールをやっているのであれば、取引先の社長の一言一言から、いろいろなメッセージを読み取れるようになったり。その中から自分のやりたいことなどが見えてくるのではないかと思います。

自分の評価を客観的にみる

今の金融機関の若手にとって、一昔前ほどには転職のハードルは高くないと思われますが、どういった声を掛けられますか。

笹川:私たちの世代は終身雇用なので、ずっと同じ会社に何十年もいると辞められなかった。けれども、それが本当にやりたい仕事ではなかった場合、ストレスだと思うんです。

それでも辞めたら給料が下がるし、よそに行って一からというよりは、今の会社に留まるしかないと。ただ、若い人は僕らでいうM&Aの無料診断を受けるような感覚で、他社を受けて自分の評価を客観的にみるのもいいかも知れませんね。

そういう意味ではM&Aのマッチングと、転職活動は似ているところがあるのではないでしょうか。

―主体性をもって、何かに貪欲に取り組んでみると、見えてくるものがあるということですね。ありがとうございました。
(聞き手=堀江大介)

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