合同会社DMM.comキャリアウェビナーCOO室 投資&経営ポジション【イベントアーカイブ】

※2020年9月24日に行われたイベントのアーカイブ記事です。

合同会社DMM.comの経営を一手に担う特命部署であるCOO室での経営人材・ファイナンス人材募集を背景に、同社COO室でご活躍中の長南氏と古波鮫氏にご登壇いただき、企業やCOO室の紹介だけでなく、実際の業務について他社にはない魅力を思う存分語っていただきました。

同部署では一般的な経営企画業務と一線を画し、企業買収から買収企業の経営まで一任されます。PEファンドのごとくM&A先の選定から買収後の企業経営を連続的に行いますので、経営人材を目指される方にとって非常な成長環境といえるでしょう。

また、本業から生み出される潤沢なキャッシュフローを新規事業投資に充てられる、かつ未上場会社ならではの意思決定スピードの速さも魅力です。

他に類を見ない最高レベルの裁量感と、一気通貫の手触り感を重視されたい方は、ぜひご一読ください。

ダイジェスト動画(音声あり)

※後日公開

目次

合同会社DMM.com ご紹介

1998年の創業からこれまで、動画配信、GAME、証券、英会話、アニメ、プログラミングスクール、3Dプリント、エナジー、フットボール、オンラインサロンなど領域を問わず、50を超える事業を展開してまいりました。
今後も、コーポレートメッセージ「誰もが見たくなる未来。」とともに、変化と進化を繰り返しながら、新たな事業に挑戦してまいります。

登壇者

長南 佑輔氏
合同会社DMM.com COO室 投資企画グループ グループリーダー

2008年慶應義塾大学卒業。日本アジア投資入社後、ブラザー工業グループとのCVC、事業再生ファンド、DFJ-JAIC(現DNX VENTURES)等の運用に携わる。2013年カカクコム入社、経営企画室においてM&A戦略の策定および実行、ゼンリンとの資本業務提携等を主導。2015年Viibar入社、管理担当執行役員として、電通及び日本経済新聞社との資本業務提携を実現。2017年より現職。
M&A、DMM VENTURES、採用、子会社支援などに従事。

古波鮫 大己氏
合同会社DMM.com COO室 新規事業推進グループ グループリーダー

2005年、東京農工大学大学院 応用化学専攻卒。同年、トステム株式会社(現 株式会社LIXIL)入社後、R&D部門にて新素材開発やR&D戦略立案に携わる。2015年、新規事業開発室に異動し、社内事業のカーブアウト、アクセラレーター・プログラムの立ち上げ、ベンチャー投資などに従事。 2017年からはLIXILが運営する有料老人ホーム事業の事業再生を主導。経営企画室長として、業績改善および組織力強化を実現。 2020年4月より、合同会社DMM.comへ。社内新規事業立ち上げ支援、BizDev人材を発掘・育成するDMMSTARTUP STUDIOの運営等を担当。

イントロダクション、登壇者紹介

YHC

本日は「事業投資と事業経営を同時にできるキャリアとは!?」と題しまして、事業会社の経営企画のなかでもかなり面白い取り組みをされており、転職者の満足度が非常に高い合同会社DMM.comさんとヤマトヒューマンキャピタルによるキャリアウェビナーを開催させていただきます。

DMM.comさんのCOO室の長南祐輔さんと古波鮫大己さんです。私は本日モデレーターを務めさせていただきます、ヤマトヒューマンキャピタルの湊と申します。よろしくお願いします。

長南氏、古波鮫氏:よろしくお願いします。

会社説明、COO室の紹介

「誰もが見たくなる未来。」へ

YHC

はじめに、長南さんからDMMの企業紹介とCOO室についてご説明いただければと思います。

長南氏:まずは「DMMとはどのような会社か」というところについて、簡単にご紹介させていただきます。2020年にコーポレートメッセージとして「誰もが見たくなる未来。」という言葉をつくりましたが、当社はミッション・ビジョンを掲げておりません。文字通りどこにも向かってない会社といっていいと思います。とにかく生き残ること。そのために変化を受け入れ、成長を継続していくことを大切にしている会社です。

沿革を見ていただくのが一番わかりやすいかと思います。DMMといえばアダルトをイメージされる方が少なくないと思いますが、もともとは現会長の亀山が石川県に設立したレンタルビデオ店がルーツです。

そこから、ビデオの企画販売、製作に入っていき、90年代後半からはデジタルでの映像配信もスタートさせました。その後、東京の取引先が多かったこともあり、2002年に本社を東京に移転。競馬やAKB48さんなど一般コンテンツの配信も手掛けつつ、現在の主軸となるようなFX・証券事業やゲーム事業へと多角化を進めてきました。

DMMの強みとは

長南氏:次に、何が当社の競争優位性を生み出しているかという点ですが、3つの要素を挙げさせていただきたいと思います。
第1は「非上場のオーナー企業」であること。つまり、対外的な説明責任がほとんどないということですね。例えば、弊社は2020年に消防車を製造している会社を買収しましたが、なぜ本業とは関係のない会社を買収するのかということでM&Aに待ったを掛けられるということは全くありませんでした。

第2は「なんでもあり」の社風です。これは当社の代名詞のようになっていますが、後でお話しする「鉄の掟」に反しない限り、事業領域に関する制限は原則ありません。「勝てる市場」をきちんと、機動的に選択せよという意味で理解しています。

第3は「潤沢なキャッシュフロー」、端的にいえば、お金があるということですね。巨大企業には勝てませんが、新興企業には負けないレベルのキャッシュフローがある。この点は、社内で仕事をしていて、とても恩恵を感じる部分ですね。

もっとも、光があれば影もあります。上で述べた3つの要素は、弱みや課題と表裏一体です。つまり「非上場のオーナー企業」であるがゆえに、外圧が働かず、常に自助努力によって変化を生み出さなければなりません。また「なんでもあり」ということは、明確な事業戦略が存在しないということですので、個々人が意思を持って事業を創り上げていかなくてはなりません。そして「潤沢なキャッシュフロー」に関しては、財務レバレッジが利かず、手元資金で戦わなければいけないという側面もあります。こうした弱みや課題についてもしっかりと理解したうえで、戦い方を考えることが重要だと考えています。

DMMとはどのような会社か?「鉄の掟」と「5ESSENCE」

長南氏:続きまして、私たちがどのようなロジックで動いているかという点についてお話ししたいと思います。当社には、「金を盗むな、詐欺をするな」という「鉄の掟」があります。すべてはこの2つの掟に集約されているのですが、2020年にCOOの村中悠介、元CTOの松本勇気が中心となって「5ESSENCE」というアイデンティティを制定いたしました。すなわち、「本気の失敗を肯定する」「テクノロジーとともに」「誠実であれ」「ちゃんと稼ぐこと」「好奇心を忘れない」の5つです。まずは何よりも人として信頼できるかどうか、倫理観や誠実さ、信用を重視して仕事に取り組む。好奇心を忘れず新規事業の創出に取り組み、本気で取り組んだ結果が失敗に終わったとしても、それを肯定する。会社として利益を上げることを忘れない。時代の変化に合わせて、新たなテクノロジーを積極的に導入していく。これが当社のエッセンスです。

先ほどミッション・ビジョンはないと申し上げましたが、テックに関しては「DMM Tech Vision」を発表しており、「アジリティ(敏捷的)」「アトラクティブ(魅力的)」「サイエンティフィック(科学的)」「モチベーティブ(意欲的)」という4つのバリューを掲げています。「DMM Tech Vision」については公表しておりますので、興味のある方は是非ご覧ください。

そうはいっても「DMMってよくわからないよね」と思われている方は少なくないと思います。社内にいてもよくわからない部分があるというのが正直なところですが、主なグループ会社や会社の概要についても簡単にご紹介したいと思います。事業内容については、私たちの所属している「DMM.com」のほか、国内最大級のPCゲームプラットフォームを運営する「DMM GAMES」、物流サービスを展開する「DMM.com Base」、FX取引や証券事業を展開する「DMM.com証券」の4つに分けられます。全体の売上は約2,300億円、会員数は約3,400万人、従業員は約2,800人で平均年齢は34歳です。職種別で申し上げますと、エンジニアが最も多いという点は意外なところかもしれません。

過去3年の経営課題と、成長の継続に向けた取り組み

長南氏:次に、経営課題と成長の継続に向けた取り組みについてご紹介したいと思います。過去3年で申し上げますと、「成長の足かせ」を取り除くための取り組みとして、R18と一般コンテンツとの分離。DX(デジタル・トランスフォーメーション)をはじめとする環境変化への対応として、テクノロジーのさらなる推進。会社規模の変化への対応として、経営体制の変更等に取り組んできました。

とはいえ、次の成長の種はまだ見えておりませんし、急激な成長に対して社内の仕組みや体制づくりが追いついていない部分もあります。こうした課題を克服しながら、非連続的な成長を実現するためには、人材への投資にこれまで以上に力を入れなくてはなりません。そこで現在、当社ではCXOを含めた経営層の採用、私どもの所属するCOO室を中心としたミドル人材の強化に力を入れています。

人材輩出機関としてのCOO室

長南氏:続いて、私たちの所属するCOO室についてご紹介したいと思います。
COO室は“人材輩出機関”と定義されています。新規事業の創造・育成や既存事業の成長を支援しながら、経営人材を輩出する。これがCOO室の基本的なコンセプトです。ミドルオフィスとして「事業に向き合う」「当事者であれ」という価値観を大切にしています。もう少し具体的に申し上げますと、メンバーは全体で約20名。当社COOで室長を務める村中のもと、新規事業の立ち上げに関する部分を古波鮫、それ以外のM&Aやベンチャー出資、買収先支援、本部支援、事業部支援といった部分を私が担当しているという形になります。

先ほど申し上げたように、COO室は人材輩出機関として位置付けられておりますので、「卒業制度」が明確に定められています。メンバーには半年から1年くらいで、DMMグループ内で活躍の場を見つけ、旅立っていくことが求められています。実際、COO室を経て、コーポレート室長やAI部部長、.makeAKIBA事業部長、子会社のCOO、経営管理室のグループリーダーとなった社員がいます。社員が次のステージに進むために力強く支援することも私たちの重要な仕事の一つです。

DMMの投資の特徴と魅力

長南氏:今回は投資に関心をお持ちの視聴者の方も多いと伺っていますので、PE投資及びVC投資と当社の投資の違いについてお話ししたいと思います。
単純化していえば、PE投資の儲け方は、「レバレッジ」及び「コストカット」「EBITDAマルチプル」の掛け算で定式化できます。一方、VC投資は「エクイティストーリー」と「マクロ環境」の掛け算で、IPOによってホームランを目指すビジネスモデルといっていいでしょう。これに対して、当社の投資は出口がありません。買収後は事業支援によって売上をつくるしかないという意味では、非常にシンプルな投資モデルといっていいと思います。

具体的な業務について申し上げますと、エクセルを使い倒すといった場面はほとんどなく、ワードができれば十分といっても過言ではありません。したがって、当社での投資業務を通じて専門性の高いハードスキルを身につけるのは難しいのかもしれません。その一方で、若いうちから一気通貫でM&Aを経験できることや、多くの案件を手掛けられること、買収後も当事者として事業成長に関与できる点は、当社ならではの魅力だと思っています。

求められるのはマインドセット

長南氏:最後に、今回は採用イベントですので、求められる人材像についてもお話ししたいと思います。
先ほど申し上げたように、当社には事業戦略がありません。その分、社員にはかなり明確なマインドセットが求められます。「スタンスを取る」「目的志向」「相互支援」「当事者意識」「コトに向かう」「実行あるのみ」「アンラーンと継続的な学習」といったキーワードが挙げられますが、特に大切なのは「スタンスを取る」ことです。
亀山会長とミーティングをしていても「会長どう思いますか?」「お前はどうしたいんだ!」といったコミュニケーションが日常茶飯事です。また、私も古波鮫も、亀山が手掛けていた案件を「これはダメです。どうにもならないのでやめてください。」という具合に説得し、敗戦処理を担当した経験があります。つまり当社には、議論する社風、忖度することなく仕事をやり切る社風が根づいている。だからこそ「スタンスを取る」姿勢が求められるわけですね。

DMMで仕事をし始めて3年になりますが、当社のいちばんの魅力は、変化を受容できる会社だということにあると思っています。この3年間でも数々の変化を経験してきましたし、主体的に変化を起こすことができたという自負もあります。ビジネスの醍醐味を感じられる会社であることは間違いないと思います。

YHC

ありがとうございます。亀山さんと話をする機会は多いんですか。

長南氏:ええ。先ほども定例ミーティングをしていました。

YHC

実際の亀山さんは“あの絵”のままなんですか?

長南氏:“あの絵”のままですね。

YHC

恥ずかしいから顔を出さないとか。

長南氏:すごくシャイです。

トークセッション

DMMのM&A、PMIについて

YHC

ここからはもう少し具体的に、DMMさんのM&A、PMIについて伺いたいと思います。

これまでの投資実績からバリューアップの事例について聞かせてください。

長南氏:投資に関しては、ざっくり分けて2つの方針があります。一つは“M&Aの種まき”としてのマイノリティ出資で、DMM VENTURESと呼んでいます。もう一つは、過半数以上を取得するM&Aです。
M&Aに関しては年間3件程度のペースでコンスタントに実施しています。直近では2020年にパールマーケティングソリューションズ(PMS)さんというパチンコ関係のシステムを提供している会社の来店ポイントシステム事業等のほか、AIベンチャーのAlogoageを買収。2019年は中古農機の販売・買取を行うファーマリー、消防車両の企画・開発・設計等を手掛けるベルリングを買収いたしました。
買収した企業に関連性はあまりないですね。ちなみにベルリングは買収後、救急車の企画・開発・設計もスタートさせました。

YHC

PMIに関しては如何でしょうか。

長南氏:シナジーのある場合と、ない場合を分けて考えています。PMSさんの来店ポイントシステム事業の買収は、シナジーのあるケースの一例です。もともと当社はパチンコ系の事業を持っていましたので、来店ポイントシステム事業を当社の一事業部のようなかたちで取り込みました。
一方、ベルリングのようなシナジーのない会社を買収した場合は、統合すると事業を殺してしまう可能性もありますので、経営の自主性を担保しながら、個々の事業体に合わせたかたちで支援を行います。その際、最も力を入れるのは人的支援で、経営を経験したことのある人材を採用し、子会社に送り込みます。ちなみに、ベルリングのCOOは、タイミングが合い私の前職の役員にきていただきました。
その過程で特に意識するのは、子会社の経営陣のモチベーションをいかに維持するかということです。基本的に経営は任せ、私どもが助け過ぎないようにします。サポートし過ぎて大きな失敗を経験しないまま、経営がうまく回っていくようになると経営者が育ちません。M&Aを通した人材獲得という側面も重視しているので、経営がうまくいけばいいというものでもないんです。

YHC

これまでに手掛けてきた事例でうまくいったケースについて聞かせてください。

長南氏:COO室から最大4人のメンバーを子会社に送り込み、私も採用支援を行なったケースがあります。このときは社長やその脇を固める経営陣、そして現場レベルのマネージャーと、レイヤーを分けた上で、かなり細かくメンタリングを行いました。資本の論理に則って言うことを聞いてもらうのは最大の手段です。
主体的に行動してもらうためには、経営陣や中間層の動きをきめ細かに把握することが大切なんです。ちなみに、この子会社のCOOとは現在も月に一度のペースでメンタリングを行なっています。

YHC

子会社のPMIに関わる人材は、COO室に在籍したまま仕事をするのでしょうか。

古波鮫氏:そうですね。裁量に関しては、いくらでも取ることができます。ただし、先ほど長南からもお話させていただいたように、「スタンスを取る」ことを重視しますので、「この部分については裁量がほしい」ということをきちんと伝えなくてはなりません。

YHC

古波鮫さんも、手を挙げてということが何度もあったんですか。

古波鮫氏:いやぁ。私の場合は手を挙げるところまではなかなかいかないですね。新しい仕事が次々と生まれていますからね。

DMMは投資テーマをいかに決めているのか

YHC

続いて、御社の投資テーマの特徴についてお伺いできればと思います。チームラボのようなスタートアップから、沖縄のかりゆし水族館のような成熟産業まで、さまざまな投資を行われていらっしゃいます。投資テーマはどのような観点のもとで決めていらっしゃるのでしょうか。

長南氏:かりゆし水族館は会長の亀山が自ら見ている案件で、なぜ当社がやっているのかよくわからない部分もあるのですが(笑)、基本的に新しいことをやるときは執行役員以上の責任者をいかに巻き込むかが極めて重要です。
当社は役員と社員の距離が非常に近く、趣味や嗜好もある程度わかっていますので、興味を持ってくれそうな役員に「一緒にやりましょうよ」という具合にネゴシエーションをしていきます。一定の与信のある人間に担いでもらえるようになれば、どんどん進んでいきますね。

とはいえ、投資テーマはなんでもありというわけではありません。ニッチな領域、魅力的とは思えないような領域を意図的に選び、その領域で勝ち続けることができるかどうか、独占できるかどうかを徹底的に意識しています。敢えてレッドオーシャンに飛び込もうとか、かっこいいこと、新しいことをやろうといったことは、あまり考えていないですね。

YHC

ありがとうございます。案件のソーシングはどのように行われているのでしょうか。

長南氏:会社として“なんでもあり”という方針を打ち出しているので、相談をいただくケースが圧倒的に多いですね。年間200~300件は案件が入ってきているのではないでしょうか。新規事業もM&Aも「何か一緒にやりましょう」というお声掛けをいただいてスタートすることがほとんどです。

COO室での具体的な仕事内容

YHC

現在行っている業務について聞かせてください。
古波鮫さんは2020年4月に弊社経由で入社されましたが、当初はどのような業務をされていたのでしょうか。

古波鮫氏:入社当初は約1カ月間、簡易デューディリジェンスを行なって、その結果を長南に返す感じの仕事を2、3件手掛けました。その後は約2カ月間、亀山が手掛けていた案件の立て直しといいますか、敗戦処理を担当しました。

長南氏:念のためフォローをしておきますと、亀山は「ごめんね」と普通に言える人なんですね。「やっちゃった」という感じのことが2年に1回くらいあるわけですが、「ごめんね」といってくれるので断れないんですよね。

YHC

なるほど。現在はどのような仕事をされているんですか。

古波鮫氏:新規事業の立ち上げ支援に携わっています。事業のタネは常にありますので、私は組織体や経営体制の構築、事業管理など、足回りの整備に力を入れていますが、実際に関わっていく中で足りないものがどんどん見えてきます。事業部長の代わりができそうな人を探して採用したり、事業目標の再確認を促し、今やるべきことを明確したりと、直面する課題に合わせて実にさまざまな仕事を手掛けています。

YHC

ありがとうございます。長南さんは如何でしょうか。

長南氏:採用は一貫して手掛けていますが、M&Aは専門チームをつくったこともありタッチする機会は減ってきました。
最近増えているのは、CXOの強化を含めた来期の組織体制の構想や予算の策定、既存事業・新規事業に関する意思決定、バックオフィス部門の人材採用など、経営企画的な仕事です。課題だと思えばなんでも飛びついてしまいますので、何をやっているのかよくわからないというのも確かですね。

COO室で求められる人物像

YHC

求められる人物像について少し深掘りしてお伺いしたいと思います。どのような人と一緒に仕事がしたいか、逆に、DMMさんのカルチャーに合わないのはどのような人か。教えていただけますでしょうか。

長南氏:繰り返しになりますが、「スタンスを取る」ことのできる人、そして、マネジメントだけでなく、自分で手を動かして売上を立てることのできる人と仕事がしたいですね。逆に、他責志向の強い方が当社で仕事をするのは辛いと思います。

古波鮫氏:長南と同じく、一緒に仕事がしたいのは、常に自分の「スタンスを取る」ことのできる人ですね。“上司に言われたことを、言われた通りにやる”というのは、当社ではナンセンスです。
会社全体のことを考えたらA、部署のことを考えたらB、リソースのことを考慮するとC…というように、自分の頭でさまざまな角度から物事を考え、結論を出すことができない人にはキツイ会社だと思います。

長南氏:あとは、とにかく性格のいい人を採用する傾向がありますね。最近はあまり言わなくなりましたが、“ナイスガイ採用”という試みもやっていたんですよ。

古波鮫氏:確かに、いい人が多いですね。個人として自立しているからこその優しさというか。

YHC

DMMさんというと、我の強い人たちの集団というイメージをお持ちの方も少なくないと思いますが、そうでもないんですね。

古波鮫氏:ええ。我の強い人も確かに多いかもしれませんが、相手の懐に入って、自分の思いや考えを通していく力、コミュニケーション能力はかなり高いですよ。

YHC

COO室のメンバーの出身業界については如何でしょうか。

長南氏:直近でいえば事業会社、特にベンチャー出身者が多いですね。多い方からベンチャー、大企業、金融、コンサルの順になると思います。

YHC

もともとオーナーベンチャー企業で仕事をしていた方が、御社に転職した途端に大きく飛躍するという話を聞くことが少なくありません。それはなぜでしょうか。

長南氏:あくまで私の個人的な経験からお話しいたしますが、一代で大きな会社を築き上げるオーナー経営者は“強烈な”キャラクターの持ち主であることが少なくないと思います。
それに比べると、亀山はかなりマイルドな人間です。オーナーベンチャー企業の“強烈な”環境に慣れた人にとってみると、当社は“天国”のように思えるのではないでしょうか。伸び伸びと、思う存分に仕事ができるのだと思います。

今後やりたいこと

YHC

今後、DMMさんでやりたいこと、目標について聞かせてください。

長南氏:この会社を成長させるために、できることは何でもやっていきたいと思っています。会社の成長に貢献できたという実感が得られたら、COO室を卒業し、経営者として事業を創り上げていきたいという思いはありますし、実際、COOの村中に相談しているのですが、まずは会社の成長に必要なことをやり切ることが優先です。

YHC

ちなみにCOO室のメンバーはどれくらいのタイムスパンで卒業されていくのでしょうか。

長南氏:メンバーのほとんどは1年以内に卒業します。2年以上残っているのは私だけですね。

古波鮫氏:私は2020年4月にCOO室に入りましたが、在籍期間は真ん中より上になってきましたからね。

YHC

すごく早いテンポですね。古波鮫さんも早く卒業したいとお考えですか。

古波鮫氏:その点に関しては本当にどちらでもよくて、卒業してもいいし、COO室にしばらくいるのも全然ありだと思っているんです。
COO室に在籍にしながら、ほとんど“中の人”として新規事業の立ち上げに携わることもあるので、卒業しても、しなくても、そこまで変わらないのではないかと。仮に卒業するとしたら、どこかの事業部をみてみたいという思いはありますが、当社で仕事をしているとキャリアを描きづらい部分があるんですよね。

長南氏:いわゆる昇進という概念がありませんもんね。

古波鮫氏:そう、ないんですよ。だから、そういった部分について考えるのはやめて、できるだけフラットでいようと思っているんです。ただ、自分の考えがないと思われるのも嫌なので、フラットな姿勢を保ちながらも、「これだ!」と感じで、ピンときたときに一気呵成に突き進むための準備はしています。
そういう気持ちを持っていないと、どうしても自分に矢印が向いてしまう。これは会社にとっても、事業にとっても、そして自分にとってもいいことではないと思うんです。

Q&A

COO室でメンバーをどの領域にアサインするか

YHC

ここからはQ&Aに移りたいと思います。
一つ目は「DMMの新たな成長の柱をつくるために、COO室として新規事業のグロースと、M&Aによるシェア獲得はどのようなバランスで行っていますか」というご質問です。

長南氏:新規事業のなかでも優先順位や注力領域にしっかりとメリハリをつけて、メンバーをアサインするようにはしていますが、新規事業やM&Aをそこまで計画的に行なっているわけではありません。双方のバランスについて述べられるほどコントロールできているわけでもないというのが正直なところです。M&Aはある種の“出会い”といいますか、偶然的な要素も小さくないので、コントロールしづらい部分があるんですね。

ただ、間違いなくいえるのは、ボトルネックになるのは常に人だということです。COO室でどんなに採用に力を入れても、採れるのはせいぜい10人です。限りある人材をどの領域に張り付けるのか、ここを徹底的に意識していなければ、人が足りないという状況からいつまで経っても抜け出すことができません。実際、モノやカネよりも、ヒトのアサインの話をしている時間の方が圧倒的に多いですしね。

YHC

ちなみに2019年はどのようなバランスだったのでしょうか。

長南氏:2019年は新規事業よりもM&Aの方が多かったですが、人事部や経営管理部などのバックオフィス側にもかなりのメンバーを張り付けていました。ボトルネックになっている部分にアサインしていきますので、タイミング次第でバランスは変わりますね。

YHC

採用に関しては長南さんが一括で担当されているのでしょうか?

長南氏:いえ、人事部でも採用を行なっています。ただ、私が動いた方が効果的なケースも少なくないので、エージェントへの営業や具体的なやり取りは、私と人事部で連携しながら行なっています。
逆質問で恐縮ですが、湊さんからみると人事部って少し遠い存在ではないですか?

YHC

私はずっと長南さんが人事担当かと。すごくたくさんの役職を兼任されているんだなと思っていたんです。

長南氏:アッハッハ。一人で全部やるのは会社としてよくないと思いますので、うまく棲み分けをしてやっているんですよ。

DMM子会社のマネジメント

YHC

次は、「子会社との関係では、自立型マネジメントを重視されているというお話がありました。子会社が自ら考え、意思決定できるように教育されていると思うのですが、具体的にはどういった教育をしているか、どのような点をチェックしているのでしょうか」というご質問です。

長南氏:基本は失敗を許容することです。子会社の中には数億円単位の赤字を出していて、また転んでしまうだろうなという会社もあるわけですが、それでも失敗を許容し、実際に転んでもらうことが大切だと思っています。親会社から「そんなことをやっていたら失敗するから、こうしてください」という話をされたら、フラストレーションが溜まりますし、モチベーションも下がる一方でしょうからね。
その代わり、転んだ瞬間に手を差し伸べて、次なる失敗をしないようにするために徹底的にサポートします。それから子会社の経営陣には、「経営者の仕事とは何か」ということを常に考え、惰性に陥ることなく、きちんとした意思決定をしてほしいという話をしていますね。

DMMにおける人材育成の考え方

YHC

人材を育てるという点に関して、前職とDMMとの違いがあるとすれば何でしょうか。

長南氏:そこは今、すごく悩んでいるところです。というのは、COO室に入ってくる社員の平均年齢は35歳前後で、ある意味ででき上がった人を採っているんですね。今後は人を育てる方向に変えていこうと思っているのですが、なかなか大変なことですし、私の得意分野でもないので、この部分は古波鮫さんに振っていこうと思っています(笑)。
古波鮫さん、他社の人材育成との違いについてどのように考えていますか。

古波鮫氏:LIXILはGEから役員を招き、人材育成に全社的に大きな力を入れていました。それに比べると、当社の人材育成は弱いといわざるをえないでしょうね。ただ、当社の役員陣や事業部長クラスは“商売人”のイメージなんですよね。人材育成の仕組みを整えることによって“商売人”を育てられるのかといえば、おそらく難しいでしょう。“商売人”と一緒に仕事をしながら、事業を伸ばす経験を積んでもらうしかないと思います。
COO室では当社で活躍するために必要なスキルやマインドセットを設定していますが、なかなか難しいところですね。

形式的なガバナンス強化策に意味はない

YHC

続いては、「新規事業の立ち上げに関する決済を、どのようなプロセスで通していくのでしょうか」というご質問です。

長南氏:やりたいことがあるときは役員に持っていって感触を聞き、後押ししてもらえるようであれば、戦略会議という意思決定機関でプレゼンをすることが多いですね。
当社の規模はそれなりに大きくなりましたが、会議体規程や職務分掌規程といった規程類がほとんどありません。新規事業に関しても決まったフローがあるわけではないんですよね。

YHC

規程に関連する部分で、ガバナンス強化に向けた施策、取り組みに関するご質問もいただいています。

古波鮫氏:問題が発生するたびに規程を整備することはありますが、単に形式的なガバナンスの仕組みを整えればよいというものでもないと思います。ガバナンスの優等生として知られながらも、不正や不祥事を防ぐことができない会社は少なくありません。
また、前職でガバナンス・コードへの対応、社外取締役の導入に関わったことがありますが、これによってガバナンスに関する課題を本質的に解決できたという実感はまったくありませんでした。

制度や仕組みとは別のかたちでガバナンスを強化する必要があるということだと思いますが、当社の場合は「金を盗むな、詐欺をするな」という「鉄の掟」が、ガバナンス強化の要になるのではないでしょうか。投資や事業の失敗は許容しますが、信頼関係を損ねた人は絶対に許さないという文化が浸透していますからね。

10年先の成長戦略を考えても意味がない

YHC

「成長にフォーカスするというお話がありましたが、成長の具体的なイメージについて聞かせてください。例えば、10年後にどうなっていたいか等についてお伺いしたいです」というご意見をいただいています。

長南氏:来年の体制はある程度見えていますが、2年後はどうかなという感じです。10年先のことは全くわかりません。

古波鮫氏:10年先の姿を描かなければいけないという理由もないと思うんですよね。コロナ禍みたいなことがあれば、ビジネスのトレンドも大きく変わりますからね。
10年先を見据えてコツコツやる仕事もゼロではありませんが、多少の遊びをつくり、トレンドの変化に合わせてリソースの張り方を変えていく方が、会社としても合理的だと思います。

YHC

お二人の柔軟かつ臨機応変な回答が、まさに、DMMさんのカルチャーを体現しているようですね。ありがとうございます。

古波鮫氏:前職では成長戦略の策定に携わることもあったのですが、正直なところ、あまり意味がないと思ったんですよね。例えば、東日本大震災が起きたときには、約10年後にコロナ禍が起きるなんて誰にも予想できなかったはずです。
その一方で、あれほどの災害を経験し、皆さんそれなりの対策を行なっていたはずですが、今回のコロナ禍であたふたしている人があまりにも多いことを考えると、何をやっているのかという気になります。
時間軸はわからないけれども、震災やコロナ禍のような大きな変化がいつか必ず起きる。このことを真摯に捉えて、物事を考えておくことが大切ではないでしょうか。

YHC

長南さん、古波鮫さん、視聴者の皆様、本日はありがとうございました。

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