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M&A仲介・FAS(財務アドバイザリー)業界

① M&A業界の今

M&A業界は近年、活況を呈しています。先進国を中心とした景気の回復、グローバル化の進展による企業間競争の激化、インターネットによる情報取得の簡易化、国内においては高齢な経営者の増加や少子化による市場の縮小などを背景に、企業のM&Aのニーズは年々増加しています。そもそもM&Aとは、Merger(合併) and Acquisition(買収)の略称であり、一般的には企業による他企業の株式(および事業)の買収のことを指します。近年はM&Aという用語を新聞で見ない日は無いくらい一般的なものになってきたため、全く聞いたことがないというビジネスパーソンはおそらく皆無でしょう。しかし、では具体的にどのようなことが行われているのか、どのようなプレイヤーがM&A業界にいるのか、そこまで答えられる方は少ないと思います。

M&Aと一口に言っても、日経新聞の1面を飾るような大型の買収劇もあれば、国内の中小企業同士の合併・後継者不在の事業承継など様々なケースがあり、それぞれによって関わる企業も、M&Aのプレイヤーも変わってきます。ここで言うM&Aのプレイヤーとは、実際にM&Aを行う企業に対してアドバイザリーを提供し、そのアドバイザリーfeeを稼ぐ企業のことを指します。

海外も含めた超大型案件(株式価値で数千億円〜兆円規模)であれば、外資系の投資銀行や日系の証券会社などが、そのアドバイスを担うプレイヤーとなります。国内の中〜大型案件(株式価値で百億〜千億規模)は、同じく日系の証券会社や、メガバンク、外資系の会計ファームや独立系の大手ファームなどがプレイヤーとなります。その他、主に国内の中小企業の事業承継案件にアドバイザリーを提供するのが、独立系のM&Aブティックと呼ばれる存在であり、近年は事業承継ニーズの高まりから、このゾーンのプレイヤーが最も活況を呈しています。本項では、国内の中小企業の事業承継M&A〜中型(株式価値で百億規模程度)の案件までのプレイヤーを中心に考察していきます。

② M&A業界の業務内容

中小企業の事業承継に関わるM&Aや、中型(株式価値で百億規模程度)の案件に関わるプレイヤーには、独立系のブティックファームや、会計系(FAS系)のファームや、銀行のM&A部隊などがあります。ただ、業務内容としては特段の違いは無いです。これらのファームが企業より受け取るfeeの形態が若干異なります。

独立系のブティックファームは、主に「仲介」の形態を取ります。これは、売り手にも買い手にも双方にアドバイザリーを提供し、双方からfeeを受け取る形態です。当然、売り手は高く売りたいですし、買い手は安く買いたいですが、仲介の場合は案件の成立を最優先し、双方の妥協点を探る形となります。一見、利益相反のようにも思われますが、M&Aでは「案件が成立する」ということが最大のメリットになります。M&Aは、お互い相当な時間と労力を掛けて検討し、巻き込むステークホルダーも多く、資金も掛かる取引です。ようやく双方が合意しても、最後の最後にブレイクしてしまうこともよくあります。このため、売り手と買い手双方に寄り添い、案件の成立を目指す仲介にはその付加価値があります。

仲介以外の形態は、買い手と売り手それぞれに付く「アドバイザリー」となります。こちらの場合は、買い手には買い手の、売り手には売り手のアドバイザリーがつきますので、それぞれの利益の最大化のために交渉に臨みます。仲介と違い、それぞれの利益が最大化できる可能性は増しますが、案件の成立確度やスピードという点では劣るかもしれません。

M&Aアドバイザリー業務は、基本的に以下の流れで進みます。
*売り案件発掘(ソーシング)  → 案件化  → 提案資料作成  → 買い手探索  → 交渉サポート  → クロージング

売り案件発掘(ソーシング)
売りの案件を見つけることが第一段階になります。このプロセスでは、ファームにより様々な手法でソーシングを行います。手法として、事業承継のセミナーを開きインバウンドを狙うことや、銀行や士業と提携し案件を紹介してもらうこと、帝国データバンクなどのデータベースを使い直接コールドコールを掛ける、等があります。
案件化
譲渡を考えている企業に出会えたら、案件化を進めます。まず、無料で株価算定を行い、オーナーに株式価値を理解してもらうことが多いです。これにより「それくらいで売れるなら前向きに考えようか」ということになり、一定期間は専任でアドバイザリーを行うアドバイザリー契約を結びます。(専任とは、他のファームにアドバイザリーを依頼してはいけないということです。)これで、そのファームの案件になったと言えます。優良企業であればあるほど、様々なファームが群がってきています。ここで専任契約を取れると、他ファームを一定期間ではありますが排除できたことになります。このプロセスでは、オーナーに人として気に入ってもらうなど、営業的要素も非常に重要になってきます。
提案書作成
売り手と協力し、買い手に向けた提案書の作成を行います。これはインフォメーション・メモランダム(Information Memorundom)、略してIMと呼ばれるもので、売り手の企業概要や事業内容、財務数値などを詳細に記載した資料になります。買い手は初期検討ではこのIMを非常に参考にしますので、M&Aアドバイザリーの腕の見せ所になります。一般的には、ファームの若手クラスが作成を担当します。ファームにより、このIMは非常に特徴が出るところで、「あのファームのIMはわかりやすい」、「情報が網羅されてよくできている」など、買い手から評価が高いファームも存在します。(その逆も然りです。)
買い手探索
提案書などが整ったら、いよいよ買い手の探索に入ります。一般的には、まずアドバイザーが候補先をリスト化します。第一段階では、可能性の買い手候補をできるだけ多くリスト化します。これをロングリストと呼びます。そして、ロングリストを売り手に提示し、接触をして良いかどうか確認をします。これをネームクリアと言います。なぜこのステップがあるかと言うと、オーナーによっては、例えば「同業他社のライバルには売りたく無い」や、「取引先は避けてほしい」などの希望があるからです。ネームクリアを経て、その中からさらに有望な買い手候補に絞ったリストをショートリストと呼びます。まずはこのショートリストの書い手候補に提案をしていきます。実際に提案をしていくと、「思ったより反応が悪い」や、「この業界からは評価が低い」など様々なことがわかってきますので、その都度、売り手とコミュニケーションをとり柔軟な対応を行って行きます。買い手探索が不調だと、オーナーの気持ちも冷めて行きますので、小まめな対応が肝心です。
交渉サポート
買収に手を挙げる買い手候補が見つかると、その交渉のサポートを行います。買い手側の希望条件を提出させる意向表明書の取りまとめや、売り手企業の詳細な調査を行う買収監査(デュー・ディリジェンス、DD)のサポート、最終の契約書である株式譲渡契約書の作成のサポートなど、このプロセスではかなりの業務量が求められます。また、仲介となると、買い手の立場にもなりながら売り手のケアもし続けなければなりません。ただ、このプロセスまでくればゴールが見えてきていますので、アドバイザーとしても前向きなハードワークと捉え尽力される方がほとんどです。
クロージング
晴れてM&Aの交渉がまとまると、売り手と買い手の双方が納得した条件にて作成された株式譲渡契約書に調印を行い、買い手は譲渡代金の支払い、売り手は株式の譲渡を行い、本件のクロージングとなります。
一般的には、上記のプロセスを半年〜1年程度で進めて行きます。ファームや案件規模により異なりますが、1人当たり年間3件〜5件程度の案件に同時並行で関わり、2件〜3件のクロージングを行っているイメージになります。

③ M&A業界の未来

国内の少子高齢化による事業承継ニーズの高まり、国内マーケットの成長の鈍化、緩和的な金融政策による金余りなどを背景に、今後もM&A市場は活況を呈する見込みです。加えて、M&A仲介・M&Aアドバイザリーの業界は最近ようやくメジャーな産業になって来たため、相対的にプレイヤーが少なく、まだまだ成長の見込みがあります。M&A業界で勤務をする方々も若手が中心で、特にM&A仲介会社では20代のメンバーが活躍をしています。

今後はM&A業界全体でノウハウの蓄積が進むとともに、マーケットが拡大し、産業がメジャーになっていくことにより、業界で働く人口も増えていくことが予想されます。また、企業(事業)の売買という性質から、そこに関わる人々の感情の機微が常に反映される取引であるため、AIやネット取引に代替されづらい業界であると言えます。創業オーナーが自ら起業し育てて来た会社を、AIやネットのマッチングで譲渡するかどうかと考えると、イメージができるかと思います。引き続き、業界で勤めるコンサルタントの力量が重要になってくる仕事だと言えます。

④ M&A業界転職者インタビュー

Mさん(20代後半、男性)国内大手証券会社→国内M&A仲介

現在どんな仕事をしているか
事業承継のニーズがある企業オーナーへの営業が中心です。いかに他のM&A仲介会社と差別化を計って私に任せてもらえるか。オーナーとの信頼関係の構築が重要になってきます。この点では、証券会社での営業経験が非常に役に立っています。また、私が所属するM&A仲介会社では案件の発掘(ソーシング)から最終のクロージングまでの一連の業務を任せてもらえますので、株化算定や提案資料(IM)の作成、買い手の探索、交渉、契約書の作成など、全ての業務を担当します。ビジネスパーソンとして総合力が求められます。もちろん、まだ入社して1年ほどですので、社内の先輩に教えてもらうことも多いです。経験豊富なメンバーが多いですので非常に頼りになります。また、特に専門的な内容は公認会計士や弁護士の先生方に確認しながら進めて行きます。
M&A業界に転職して感じる率直な感想を教えて下さい
私は証券会社のリテール営業からの転職でしたが、事業承継のM&Aは非常にやりがいのある仕事だと感じています。M&Aの仲介は、オーナーがこれまで育ててきた会社を手放すという意思決定に関わることになります。また、買い手としては、その企業を買うことにより一層の成長を企図し、戦略的に検討をして行きます。売り手と買い手、どちらにとっても非常に重要な意思決定になりますし、企業には従業員も取引先もあります。証券リテール営業とは全く規模の違うビジネスサイドの仕事になりますので、やりがいを感じられないということはないと思います。何より、仲介は売り手と買い手の双方からとても感謝される仕事ですので、何とか役に立てるよう頑張りたいというモチベーションが自然に湧いてきます。また、報酬に関しても、インセンティブは青天井に設計されていますので、そういった点の魅力もあります。
M&A業界に転職した理由
証券リテール営業だとどうしてもやれることが限られてしまいますし、ともすれば自らのノルマや支店の数値のために、顧客のためにならないような取引をしてしまう場合もありました。専門性に関しても、金融のプロというよりは個人営業のプロといったイメージで、このまま証券リテール営業を続けてもビジネス能力はつかず、営業しかできないビジネスパーソンになってしまうと思いました。また、日本的な大企業なので、やってもやらなくても報酬はそこまで変わりません。

M&A仲介は、オーナーが大切に育ててきた企業の未来に関わりますので、非常に付加価値が高く、顧客のためになる仕事に集中できます。また、案件の発掘では証券リテールの営業力という点も評価され、その後のM&A実行(エグゼキューション)のフェーズでは広範なビジネス能力が求められます。営業+アルファで成長ができる環境ですし、報酬は自分の成績次第になります。

顧客のためになること、証券リテールでの営業力も活かせる親和性、今後の自らの成長、報酬という観点で転職を決意しました。
M&A業務のやりがい
上記でも少し触れましたが、オーナーや買い手の重要な意思決定に携われること、非常に大きな「ありがとう」をいただけること、M&Aの専門知識がつくこと、裁量が大きいこと、報酬が高いこと等でしょうか。
今後のキャリアビジョン
まずは1社でも多く、事業承継に悩むオーナー様の支援をして、日本の中小企業の課題である後継者不在に対して貢献をして行きたいと思います。その過程で様々な事業の企業様と出会いビジネスモデルを学び、M&Aの専門知識はもちろん、ビジネスパーソンとしての総合力を磨いて行きたいと思います。また、やはり弊社内でのトップセールスは目指したいと思います。
M&A業界を目指す方へのメッセージ
M&Aは、顧客への貢献度や、ビジネスパーソンとしての成長、報酬など、どの側面を見ても非常にやりがいのある仕事になります。その分、ハードな面もありますし、ワークライフバランスという言葉通りの意味で言えば、ワークがほとんどになるような業界ではあります。しかし、本当にやりがいがある仕事であればその点は気にならないと思います。やりたくもない面白くない仕事をやらされる方が辛いと思います。M&A仲介の業界では、周りの人たちを見ても、あまりネガティブな理由でやめている人は見たことがないです。それぐらい、面白く、貢献度高く、やりがいのある仕事だということです。また、いまは事業承継のニーズが非常に高く、案件も豊富なマーケット環境ですので、成果も出しやすい状況にあります。是非、この素晴らしい仕事に一緒に取り組みましょう!