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投資ファンド業界

①投資ファンド業界の今

そもそも「投資ファンド」とは何でしょうか?
一般的に、金融における「投資」とは、いま自分が持っているお金で株や不動産、債券などを購入し、その値上がり益や金利を得ることにより、自己資金を増やすこと言います。「ファンド」とは、日本語では基金と言いますが、これは特定の目的のために準備された元手の資金のことをさします。すなわち、金融の側面で語られる「投資ファンド」とは、「集めた元手となる資金を増やすという目的のための基金」となります。そして、この投資ファンドのお金を、「どのように集めるのか?」と、「どのように増やすのか?」によって、投資ファンドの種類が決まります。(②項参照)

近年は主に先進国による金融緩和の元、世界でお金がジャブジャブに余っている状況にあります。これは同時に、世界的な低金利状態とも言えますので、魅力的な運用先を求めて多くの資金が動く状況にあります。その運用先の一つとして「投資ファンド」は非常に注目を集めており、その運用額も年々増加する傾向にあります。それに伴い、集めたお金を運用する「ファンドマネージャー」の仕事も人気のある職種となり、その遣り甲斐と報酬水準から、世界トップレベルの頭脳を持ったビジネスマン達がこの職種で活躍をしています。日本においても、近年は投資ファンドというビジネスの認知度が高まり、特に中小企業の事業承継や再生ニーズの高まりから、中小企業のバイアウトを目的とするファンドが多く組成され、存在感を増してきています。

②投資ファンドの種類

投資ファンドには様々な種類があります。

  • 投資信託
  • 不動産投資信託(REIT)
  • ヘッジファンド
  • バイアウトファンド
  • ベンチャーキャピタル
  • 企業再生ファンド
  • 不動産投資ファンド

投資ファンドの種類は、その資金の「集め方」と「投資方針」によって分類ができます。

集め方には「公募」と「私募」があります。公募とは、広く一般に投資家を募ることを言います。銀行の窓口 や証券会社で購入できる投資信託などがこれにあたり、誰でも少額で投資ができます。これに対し私募と は、狭く特定の投資家を募ることを言います。専門性のある機関投資家や金融機関、プロの投資家が対象と なり、情報もあまり表に出てきません。

投資方針には無数のバリエーションが存在しますが、例えば不動産に投資する方針であれば不動産ファンド となりますし、企業の株式であれば証券投資ファンドとなります。また、特に事業会社の株式を取得し、経 営に大きく関与することにより企業価値を高めた後に売却することで、多くのキャピタルゲインを得ること を目的とするファンドをプライベート・エクイティ・ファンドと言います。この中には、成熟し安定したキ ャッシュフローを生み出す企業の過半数以上(マジョリティ)の出資を主とするバイアウトファンドや、ハ イリスクではあるものの高い成長性が見込めるアーリーステージの企業への少数(マイノリティ)の出資を 主とするベンチャーキャピタルが含まれます。

以降では、日本において金融業界やコンサルティング業界に勤めるビジネスマンの転職先として人気の「バ イアウトファンド」を対象に考察を深めて行きます。

③ バイアウトファンドの業務内容

バイアウトファンドの業務の流れは以下のようになります。
ソーシング(案件発掘)  → 案件検討  → エグゼキューション(案件の組成)  → ハンズオン支援(投資後関与)  → エグジット(投資先売却)

ソーシング(案件発掘)
兎にも角にも、投資する案件が無ければ何も始まりません。バイアウトファンドにとっての投資案件とは要するに「売りに出ている企業」です。このフェーズでは、投資ファンドの担当者が「売りに出ている企業」の情報を持っている、金融機関やFA(ファイナンシャルアドバイザリー)、M&A仲介、士業等(これらの先をまとめて、ソーシングルート、案件発掘先等と呼びます。)に連絡を取り、「売り案件ありませんか?あれば是非ご紹介ください!」と、営業をして行くことになります。ここでは、いかにソーシングルートとの関係を作れるかか大事になりますので、足繁く通いこまめに情報交換を行ったり、会食をしたりして関係を深めて行きます。
案件検討
ソーシングができたら、その案件が投資するに値するかどうかの検討が必要になります。近年はオーナーが会社や事業を売却することは一般的になってきましたので案件自体は多いのですが、その分様々な案件が舞い込んできます。それぞれのバイアウトファンドは自社の投資基準を鑑みて、この案件が投資に値するかどうか様々な角度から分析し、次のプロセスに進めるかどうかを検討します。バイアウトファンドによって違いますので一概には言えないですが、このフェーズから次に進む案件は10件中、1-2件程度と思われます。よって、8割前後の案件はこの段階でお見送りとなり、紹介してくれた方に対して「検討の結果、弊ファンドの投資基準に満たないためお見送りとさせて頂きます。」と、断りを入れることになります。(念のためですが、実務ではもっと丁寧に断ります。またその方から別の案件を紹介してもらいたいですので。)
エグゼキューション(案件の組成)
検討の結果、案件を前に進めて行くことファンドとして決めた場合、エグゼキューションとなります。このフェーズの中身は非常に膨大であるため、さらに以下のように分けられます。競争入札→DD→ドキュメンテーション→条件交渉→クロージング。多くの案件では、その案件に投資しようとするライバルがいます。バイアウトファンドは基本的にはマジョリティ出資が原則であり、多くの場合は100%の株式譲受となります。よって、その案件に投資できる者(その会社を買える者)は基本的には1人となりますので、まずは競争入札に勝たなければいけません。ライバルは、同じようなバイアウトファンドのこともあれば、その案件の同業他社などの事業会社も名乗りを挙げている場合もあります。ライバルに勝ち、単独で交渉を進めていけるようになると、更に詳細な検討をするために、公認会計士や弁護士などの外部専門家を雇いDD(デュー・ディリジェンス)を行います。DDの結果、特に大きな問題がなければそのままの条件で進めて行きますが、何か問題があればそれを元に価格の減額交渉を行ったり、破談になる場合もあります。その後、ドキュメンテーションで契約書を作成し、譲渡代金の支払いを持ってクロージングとなります
ハンズオン支援(投資後関与)
多くのバイアウトファンドでは、投資実行後に投資先の経営に積極的に関与し、企業価値の向上にコミットをします。バイアウトファンドは当然、投資をしただけでは利益にならず、企業価値を向上させたのちに株式を売却することによりキャピタルゲインを得ます。ハンズオン支援を行うことにより、自らの投資を自ら正当化させることができます。このため主要な投資ファンドのメンバーには、有名な経営コンサルティングファーム出身者が含まれる場合が多く、このハンズオン支援による企業の発展のために株式をファンドへ売却するオーナーもいるくらい、この部分はバイアウトファンドにとって重要な差別化のポイントとなります。
エグジット(投資先売却)
その案件の最終フェーズとなります。ファンドとして描いた投資シナリオの終わりに近づくと、売却の検討を進めます。売却には第三者譲渡、IPO、MBOなどがありますが、バイアウトファンドが手がける案件の場合、多くは第三者譲渡になります、ここでは、投資先の経営陣とも密にコミュニケーションをとりながら、次のオーナー候補先を探して行きます。ファンドとしては投資利益の最大化が重要ですので、最も良い条件をつける先に譲渡をしたいところですが、経営陣の希望が違う場合もありますので、その場合は意識の擦り合わせを行って行きます。また、交渉の表に立つのは基本的にはバイアウトファンドのメンバーになりますので、投資先の事業の魅力や成長期待をしっかり理解し、候補先に魅力的なプレゼンテーションをすることが求められます。

④ その他の投資会社について(商社、CVC..)

プライベート・エクイティ・ファンド以外にも投資業務を行う会社があります。例えば、日本の総合商社の売り上げはほとんどが投資活動によって生み出されています。石油の部門であれば、もちろん石油のトレーディング業務も大事な仕事ではありますが、それよりも、油田の権益自体への投資や、その油田を運営する企業への出資、油田のインフラを作る会社への出資や、そのプロジェクトを行う企業を合弁設立することなどが、大事な収益源となります。総合商社の社員は、その投資プロジェクトのモデリングや分析検討、社内りん議の作成に明け暮れ、晴れて投資実行となった場合はその投資先への現地駐在による運営管理、本社への報告業務を担います。

 また、近年非常に増えて来ているのはCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)です。これは事業会社が投資部隊を持ち、主に自らの本業と関連のある他社に対して出資を行い、キャピタルゲインを狙うと共に、自社の本業への相乗効果も狙うものになります。現状ではIT系企業がそのメインプレーヤーとなります。
(参照:日本ベンチャーキャピタル協会 CVC会員 https://jvca.jp/members/cvc-members

⑤ 投資ファンドビジネスの未来

バイアウトファンドに限らず、投資ファンドというビジネスは今後も伸びて行く可能性が高いと考えます。理由としては、1、世界的な金融緩和の継続、2、高い専門性、3、運用の重要性の高まり等があります。

金融緩和に関しては、縮小が検討されつつも、今後も継続される可能性が高いと思います。ITバブルの崩壊やリーマンショック、欧州危機や新興国危機など、世界経済は定期的に何らかの危機に晒され、その度に各国政府・中央銀行による資金支援が繰り返されます。
先進国の成長は相対的に鈍化していますので、急速な金融縮小を行うフェーズが基本的には来ません。今後も緩やかに、金融の面においてはお金が回りやすい環境が継続される公算が高く、そうなると運用先の選定が重要になって来ますので、投資ファンドにも一定の資金が流れ続けます。また、運用成績を残すために、投資ファンドには高い専門性が求められると共に、バイアウトファンド等は人対人のセンシティブな部分も含まれるため、AIに置き換わる可能性も低い分野であり、今後も運用成績の良いファンドが選別され拡大して行きます。また、先進国は少子高齢化であるため、富を生み出す能力は人口の減少と共に減少します。そのため、より富を生み出す先で資金運用をする必要が出て来ますので、ここでも投資ファンドが活躍します。

日本においては、事業承継や事業再生のニーズが近年急速に高まり、そうした背景から事業承継ファンドや事業再生ファンドも多く組成されて来ています。
今後も投資ファンドに求められる役割は多く、ファンドを運用するファンドマネージャーの育成が急務であると言えます。

⑥ 投資ファンド(バイアウトファンド)転職者インタビュー

Kさん(30代前半、男性)国内大手証券会社→外資系金融会社→国内バイアウトファンド

現在はどんな仕事を担当していますか?
バイアウトファンド業務のすべてのフェーズに関わっています。案件の発掘では主要なソーシングルートに対する営業を行っていますし、発掘した案件は検討・分析を行います。案件が進んだ場合はDDのアレンジや、投資条件の交渉、契約書のドキュメンテーション、LBOローンの調整やクロージング手続きまで行います。ハンズオン支援においては、投資先の財務管理や営業戦略策定、KPI管理や事業計画の策定なども行います。
投資ファンド業界に転職しみて感じる率直な感想を教えてください
思っていた以上に大変ですが、それを上回るやりがいがありますね。私はこれまで金融機関で運用や資金調達の提案に従事してきましたが、企業経営における一部分にしか関われない物足りなさがありました。正直、自分がその提案をしなくても、どこか別の金融機関が同じような提案をしてくれます。

バイアウトファンドは、基本的にはその企業の100%オーナーになるため、経営へのコミットが違います。それこそ、「どこの銀行から資金調達しようか?」という意思決定をする側に回れます。投資のフェーズにおいても様々な案件が来るため、それを分析することや、投資シナリオを作って行くことは非常に面白いです。投資委員会であっさりダメ出しをされた時は凹みますが。笑
ファンド業界に転職した理由は?
私の場合は、企業経営に対して本当にコミットしたいという想いと、金融の専門性も追求したいという想いが合致した結果になります。投資銀行やコンサルティングファームは人気の勤務先だとは思いますが、サービスを提供するクライアントに対して、どうしても「他人」であり続けます。結局は、そのクライアントが様々な意思決定をして、資金を動かして行きます。そのため、私の中では起業という選択肢もありましたが、起業をするとその自分のビジネスのみにコミットして行くことになります。バイアウトファンドであれば、同時に様々な企業の経営に携わることができ、若手の私にとってはこちらの方がより勉強になる環境では無いかと考え、最終的にはバイアウトファンドを選びました。
ファンド業務のやりがい
今はアソシエイトという立場なので、ソーシングルートを開拓できたときや、良い案件を発掘できたとき、投資委員会で自分の分析や投資シナリオが認められたとき、投資先の社員の方々と人間関係が深まるときにやりがいを感じます。特に中小規模のバイアウトファンドでは、業務の明確な役割分担は行われず、全フェーズに関わることができますので、いくらでもやりがいを見いだせると思います。その分、大変なことは多いですが、自分の成長に繋がっているという確信は持てますので、そういう意味での辛さは無いですね。
今後のキャリアビジョン
今後は、短期的には、バイアウトファンドに勤める者として、分析のスキルや投資先への経営関与を学び、能力を高めて行きたいです。中長期的には、自分のファンドを立ち上げたいです。今のファンドでトラックレコードをつくると共に、人脈形成をして行きます。私は地方の出身者なので、地銀等と連携し、私の地元エリアの企業を中心とした投資方針で運用成績を挙げられるファンドを作ることが今後の目標になります。
ファンド業界を目指す方へのメッセージ
バイアウトファンドに限らず、投資ファンドの業務は過酷です。投資家の大切な資金を預かり、二桁のリターンを出さなければ生きていけない業界です。また、ほとんどのファンドが少数精鋭で運営を行っており、メンバー一人一人が業績に与える影響も大きくなります。それはアソシエイトのポジションでも例外では無く、アソシエイトの分析結果や投資シナリオがベースとなり多額の資金が動きます。

投資した後も、投資先の経営に主体的に関わり、現場の方々とのコミュニケーションや財務分析、金融機関との交渉など、やる事は無限大にあります。その分、大企業では味わえない遣り甲斐がありますし、報酬といった金銭的見返りもあります。そして何より大きいのは、他の業界ではなかなか得難い経験ができるという事だと思います。金融と経営を様々な企業に対して実践し、学ぶことが出来ます。採用ハードルの高い業界ではありますが、いまは大小様々なファンドが組成されて存在感を増してきていますので、意欲さえあればチャレンジできる業界だと思います。是非、一緒にファンド業界を盛り上げていきましょう!

⑦投資ファンド主要プレイヤー

外資系バイアウトファンド



国内バイアウトファンド