article

Article業界特集ページ

mv

事業及び企業再生業界

1. 事業及び企業再生コンサルティング業界の概況

事業及び企業再生コンサルタントとは、内部及び外部、経営者自身の経営不振等により、資金繰りが悪化し、倒産の可能性がある企業や不採算の事業部門を保有している企業等に対し、その企業の事業、財務、業務等のDD(デューデリジェンス≒詳細調査)を行い、現状認識と改善の示唆を出すことを目的としております。

業務の依頼は、主に①金融機関、地方銀行及び信用金庫等の金融機関等の債権者、②各都道府県の中小企業再生支援協議会等の公的機関、③不採算部門を保有する事業会社及びその株主(PEファンドであることもあります)に分かれます。

事業及び企業再生のコンサルティングファーム(FAS:Financial Advisory Service)に応じて、どの依頼主から、どの業種業態、どの年商規模の再生案件を受けているかにより、各社毎の特徴が分かれます。

DDの場合、私的整理と言われる債権者と債務者の間だけのプライベートな再生案件が多く、事業再生のコンサルティングファームは、黒子としての役割を担い、信頼関係が棄損した、債権者と債務者の利害調整を行います。

DDの報告やその後の事業計画書の策定及び協議等を、バンクミーティング(通称BKMTG:債権者集会)の場で行います。

2. 業界のトレンド

我が国の事業及び企業再生業界のトレンドは、この20年でも変遷があり、伴い、ファームの役割、スコープ及び求められる人材要件にも変化があります。

2000年代初頭
ビジネスニーズ:不採算部門及び事業からの撤退を中心に、経営資源を採算部門にシフト、財務の再構築を支援。BSのリストラクチャリングが主たるスコープ
バブル経済からの残影も残り、リストラクチャリングを先送りしてきた資金繰り破綻目前の状況を緊急の外科手術を実施
人材採用ニーズ:弁護士・会計士・不動産鑑定士等の士業や金融機関出身者、監査法人出身者
2010年前後
ビジネスニーズ:コア事業自体の再構築が必要になり、ビジネスDDや事業戦略策定及びその経営改善施策の実行支援。PLの改善(コスト削減・トップラインの助長)が主たるスコープ
リーマンショック後の景気回復が本格化し、再度業績悪化とならないための予防型の危機管理やモニタリング支援や、過去に一命を取り留めた企業の再成長の支援等が増えた時期です。
FASの再生部門には、これまで会計士や金融機関出身者が多かったため、社内に無い人材の拡充が求められた一方で、事業再生の財務寄りのイメージと、トップラインを上げていく前向きなコンサルの仕事と相関がなく、戦略コンサルタントの採用には、どこのファームも苦戦されてていたと思います。
人材採用ニーズ:戦略コンサルティングファーム、総合商社等の事業会社出身者、大企業の経理、管理業務経験者
現在
ビジネスニーズ:課題がよりオペレーティングなもの且つ多様化している。コンサルティングとして、絵を描く(示唆をする)のみでなく一緒に牽引し、数値成果に結びつかせるコミットメント求められます。
過去には、産業再生機構が主導をした、ダイエー、カネボウ、JAL等の大型の再生案件も一部ありますが、昨今は大企業の再生案件から、中堅中小企業の再生案件にシフトをしております。
人材採用ニーズ:ハンズオンで支援出来る特定の領域に強いコンサルタント

3. 事業再生コンサルタントの業務スコープ

財務DD
主に債権者からの依頼に基づき、決算書、税務申告書、勘定科目明細、試算表、総勘定元帳等の財務会計の資料及び帳簿を精査し、実態債務超過額を算定します。
再生局面の企業のBSの簿価は、非稼働在庫、売上債権の滞留、有形固定資産の含み損等、所有資産について含み損を抱えていることが大宗である。
斯様な中、財務DDの手続きは、対象会社の全勘定科目を精査し、実態債務超過額を把握する手続きを行います。
事業DD
対象会社の内部環境、外部環境の分析を行い、PLの正常収益力(本業が稼ぐ力)を把握する分析を行います。再生局面の非上場の企業においては、クライアント自身が認識している、していないに限らず、不適切な仕訳を切られていたり、「異変」があることが往々にあります。
事業DDを通じて、本質を捉え、窮境要因と除去可能性を把握することが主たるスコープになります。
事業計画書(経営改善計画書)の策定
財務DDと事業DDをBKMTGでの報告後に、事業計画書を策定致します。事業計画所は、PL、BS、CF、資金繰りの財務4表をベースに、財務プロジェクションと呼ばれるモデルをベースに策定致します。クライアント(対象会社)の経営陣及びキーマンと、損益改善施策について、詳細議論を重ね、数値計画に織り込みます。
私的整理の再生案件では、往々に上記のフローで進むことが多い一方で、法的整理の場合は、弁護士等を交え、スポンサー型の再生も視野に入れ、あくまでも事業及び企業再生コンサルティングファームが黒子役として、進めて参ります。
金融機関との利害調整業務
BKMTG(バンクミーティング)を通じて、金融機関との当初約定返済の見直し(リスケジュール)や交渉、利害調整を実施致します。
対象会社にとって、実現可能性のない計画では、債権者からの同意を得ることは難航します。
特にメインバンクとは、BKMTG前も踏まえ、何度も協議を重ね、利害調整を図ります。
の立案から運用支援までトータル的にサポートすることが求められます。

4. 仕事のやりがい

以下のやりがいや能力が身に付く、最適な機会になるかと思います。

クライアントの経営改善や再生局面に直接的に寄与出来る
クライアントの経営者や経営陣と対等な立場で、経営について議論する機会やスキル
困っている企業、経営陣、従業員、株主を助ける役割を担えること
クライアントと共に苦悩を乗り越え、経営者とより密な信頼関係が築ける
製造業、卸売業、小売業等、様々な業種業態の事業や財務に携わることが出来る
常に真剣勝負の火事場が局面として継続するので、経営ノウハウ、交渉力、財務会計の能力等、多岐に亘ります。

5. 必要なスキル及び知識

事業及び企業再生コンサルタントに求められるレベルは非常に高く、通常は経営戦略や業務等のコンサルティングの経験がある人や、金融業界等で融資業務を実際に経験した人のアフターキャリアになります。
事業及び企業再生コンサルタントに必要なスキルは、財務会計ファイナンスの力、事業の理解力、分析(リサーチ)力、ロジカルシンキング、問題解決能力、高度なPCスキル、クライアントの経営陣との高度なコミュニケーション能力、経営現場を巻き込むリーダーシップ、金融機関の考え方やロジックの知識等は必須です。
また、ハンズオン支援型であれば、特に情熱、志、体力、そして精神力も求められます。
公認会計士、税理士、不動産鑑定士、中小企業診断士等の資格やMBAホルダーであればベターではありますが、チームワークを駆使して各再生案件に従事しますので、必ずしも求められません。

6. 事業再生コンサルタントの年収

各社に応じて差はありますが、大宗以下の報酬体系及びレンジ帯になります。

アソシエイト:600~800万円前後
マネージャー:800~1,200万円前後
ディレクター:1,000~1,500万円前後
パートナー:ディレクター以上

7. 事業及び企業再生コンサルタントのキャリア

事業再生コンサルタントのアフターキャリアとしては、バイアウト系を中心とするPEファンドや事業会社のCFOポジション等があります。
一方で、経営コンサルタントや事業及び企業再生コンサルティングファームを設立される御方も多数お見えになられます。それだけ実力や経営能力が磨かれる職種であると思います。

8. 推薦書籍

以下は、事前に事業及び企業再生の概要、職務内容、習得する能力、やりがいを知られるためのお勧めの書籍群になります。

道具としてのファイナンス:石野雄一
実践 企業・事業再生ハンドブック:知野雅彦(監修)KPMG FAS
民事再生QA500:須藤英章 (監修)企業再建弁護士グループ
バイオ企業・林原の真実:林原靖
財務3表一体理解法:國貞克則
巨象も踊る:ルイス・ガースナー
「戦略プロフェッショナル」「経営パワーの危機」「V字回復の経営」「ザ・会社改造」:三枝匡
「結果を出すリーダーはみな非情である」「カイシャ維新」「会社は頭から腐る」「挫折力」「IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ」「稼ぐ力を取り戻せ」「これがガバナンス経営だ!」:冨山和彦
「会社を立て直す仕事」:小森哲郎
「愚直論」「変人力」:樋口泰行
「企業再生プロフェショナル」:アリックスパートナーズ
「M&Aによる事業再生の実務」:佐武伸
「事業再生の実践第ⅰ~ⅲ巻」:産業再生機構